第13話 エルフ領2

エルフ領 アルフヘルム〈深緑の里〉


響達は深遠の森を進む。道は日本のように舗装されていないが、土の道は歩きにくい程ではない。そして、十分開けた道幅があり、周りの木も空が見えない程鬱蒼としていない。

響達は周りの様子を楽しげに見ながら歩いていた。

しばらく歩くと湖がある開けた場所に出た。

そこには様々な大きさのロッジハウスが多数建ち並ぶ街があった。


「ここが私の故郷である〈深緑の里〉です」

エレナが響達に振り向いて言った。


「何か、里と言うより街みたいだけど・・・」

将が呟く。

「そうですね。想像していたより近代的というか、温泉街みたいな感じですね」

響が言うと、

「響様達のイメージだと、多分もっと森の木の上に家があるみたいなのを想像していたでしょう?」

エレナが聞いてきて響達が頷く。

「確かに、今でもそういう里はありますが、ここはエルフ族の中心地ですからね。外部から来る人族や異種族の方々の為にも、なるべく過ごしやすい街造りにしてあります」


「なるほど。確かに僕達にはありがたいですね」

将が答え響と茜も頷く。


「ご納得頂けて何よりです。では響様達の泊まるお屋敷に御案内します」

「では、私達が御案内いたします」

エレナが答え、ミアナが案内を申し出た。


「よろしくお願いします」

「エレナさんは一緒に来ないのですか?」

将が了承して響がエレナに尋ねた。

「私は族長に到着の報告をしてきます。すぐに合流しますよ。ルシア、カイル、響様達を頼みます」

「任せて」

「承知した」

ルシアとカイルが答える。


「さぁ、参りましょう」

ミアナが呼びかけ響達は宿に向かった。


〈エルフ族族長邸宅〉


「ただいま戻りました、父上。響様、将様、茜様、皆様無事到着しております」

エレナが族長 カシム レスティークに挨拶と報告をしていた。

外見は青年にしか見えないが、醸し出す雰囲気が威厳にあふれ族長たる事を現していた。

「うむ、ご苦労。久しぶりだな、エレナ。元気そうで安心した」

報告をまず受けて、後は父としての顔を覗かしていた。

「はい。お陰さまであちらで変わらず遣えています。その節は、我が儘を聞いて頂きありがとうございました」

「いや、お前がに心酔しているのは知っていたし、あの時は致し方ないと思っている」


 、西蓮寺 凛の旧名である。


「すでに聞いてはいるが、響様の病は本当に完治されたのか?」

「はい。既に、。間違いございません」

「そうか、分かった。今夜はゆっくり休め。後で響様方にお会いする」

「はい。夕食時にご紹介いたします」


〈響達の宿泊屋敷〉


響が今までにない困惑した様子で、エレナを見ていた。

エレナが族長邸から戻り、汗を流し疲れをとる為、風呂にも茜と一緒に3人で入った。そこまでは良い。西蓮寺家でも日常生活の一つだ。

そして茜は異世界こちらに来てから、流石にはしゃぎすぎて疲れたのか、今は隣の寝室で休んでいる。

問題はエレナの着替えた衣類だ。


(・・・何故、・・・・・)

聞くしかない。響は決意した。


「エレナさん、聞いても良いですか?」

「はい、何でしょう?」

「何故、私の学校の制服を着ているの?それは持っていたんですか?」

困惑した表情で尋ねる響に実に良い笑顔で答えるエレナ。

「はい、私物です。今回こちらで着る為に持って来ました。似合っていますか?」

期待に満ちた表情で聞いて来るエレナ。

「ええ、とても似合っています。可愛いです」

実際かなり似合っていた。まるで最初からエレナのために誂えた制服のようだった。

「ありがとうございます!」

嬉しそうに微笑むエレナ。

(違う、そうじゃなくて)

響は自分にツッコミを入れ、改めて尋ねた。

「何故エレナさんが、その制服を着ているのかを聞いているのですが・・・」

すると、エレナの表情が一変しニヤリと笑う。

(あ、聞いたらダメな事でした)

響は後悔したが遅かった。


「それはですね、せっかく元の姿に戻しましたから、外見にあった服を着たかったのです。憧れていた服でしたし、それに...」

頬が赤く染まり言葉が止まった。

「それに?何ですか?」

以外と響が思っていたよりはまとも?な理由だった。

だが、次の言葉で響の様子が一変する。


「将様が見たら喜んで頂けるかなぁーって...ウフッ」

満面の笑みで言いきるエレナ。


「・・・はい?」

室内の温度が急速に下がった。まだ魔力操作を制御仕切れていない為なのか、響の魔力が身体から洩れ出てきた。


(えっ..まさか響様の魔力が洩れていますか?...ヤバっ!)

流石にエレナも驚き表情が一変した。


扉近くに控えていたミアナとサリアが、響の殺気と魔力を感じ顔を青ざめさせ壁際ギリギリまで退いた。


響が無言で愛刀(漣華れんか あかつき)を手に取り鯉口を切りエレナに向かい構える。

(やっぱり、殺しますか・・・)


「ちょっ、冗談、冗談ですから!本気にならないで下さい。響様!」

エレナの必死の説得に、一先ず鯉口収め構えを解き尋ねる響。

「で、本当の理由は何です?」

いまだに冷たい眼差しで聞いて来る響。

「学生の制服はこちらでも正装になりますし、日本の制服はこちらの服より丈夫ですから、今回の任務では色々と便利なんですよ!」

「はぁ..成る程?」

響の殺気も和らぎ、室内に充満しつつあった魔力の冷気も消えた。

エレナが説明を付け加える。

「明後日に響様達が王宮に行かれる時は制服を着用しますし、同じ格好をしていた方が響様達の緊張も多少は解れるかと思いまして」

そこまで聞いて響も納得したのか、刀を下げて椅子に座った。

「ハァ、最初からそう言って下さいね。全くもう...」

「ハハ、すみませんでした....」

若干ひきつり気味に笑いながら謝罪するエレナだったが、内心かなり動揺していた。


(響様の魔力量が予想よりかなり多いですね。それに無意識に制御している?)


エレナは、予定より早めに響達の魔力量測定と魔法属性鑑定、魔力制御の修行が最重要だと認識し、更にある覚悟を決める。


(全く、に末恐ろしいですね・・・・)


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