第5話 西蓮寺 響の日常2 生徒会長の姉は如何ですか?

「えっ?会長、夏休みは弟さん達と御旅行なんですか?」

夕方の生徒会室。

響の話に驚く奏。その正面の席でパソコンで生徒会の業務をしていた薫も驚いた顔をあげた。


「ええ、母の実家に行くだけですが、海外ですから。多分夏休みはほとんどそちらになりますね」

「そうですか。お母様のご実家に、、、。確か以前、随分遠い所にお住まいとお聞きしましたが」

「避暑地にお住まいなのですか?お国はどちらに?」

奏が以前、響きから聞いていた話を思い出しながら話しかけ、薫がさらに貴重な「響お姉さま」のプライバシーを聞き出そうとする。

「さぁ、どうでしょう?私も詳しくは知らないです。お手紙は数回あちらから送ってくれましたが、いつも母が返事を書いて送っていますから」

「なるほど、そうですか・・・って、会長?まさか、行き先をご両親から聞いてないのですか?」

一瞬、響の回答に納得しかけたが、一番大切な事を当事者の響が知らない事に、薫が驚きの声をあげた。


「おそらく、これも修練の一つでしょうし。それに両親を信じていますから大丈夫かと」

冷静に答える響。


「「はぁ」」

二人揃って曖昧な声をだし、

いつも通りの落ち着いた態度の響に奏、薫の二人は、これまた申し合わせたかのように、心の中で

((流石、響お姉さま、全く動じてない))

と思っていた。


「ですから、夏休みの前に出来るだけ文化祭の準備を進めておきたいのです。申し訳ありませんが、手伝ってもらえますか?」


響が珍しく二人に低姿勢でお願いした。


本来なら、7月いっぱいは夏休み中を含め生徒会役員と文化祭実行委員に遊ぶ暇はない。しかし、響自身、今の段階ではいつ頃帰国できるかわからない。

であるなら、する事はひとつ。生徒会の仕事を前倒しでするしかない。

流石の響も低姿勢になろうというもの。


しかし、二人の反応は、


「お任せください!会長が安心感してご旅行に行けるよう、お手伝いさせて頂きます」

「奏副会長の言う通りです。お任せを会長」


いつもの3倍は張り切る二人に、心から感謝し嬉しく思う響。


「ありがとうございます。では始めましょうか」


「「はい!」」


ちなみに、生徒会役員は他にも数名いるのだが、部活動があるために2人のように、ほぼ毎日生徒会で響と一緒には生徒会活動は出来ない。と、言うのは建前で響を独占したいが為に2人が他の役員を生徒会室に近づけない様に牽制威嚇しているというのは、響以外の生徒会役員全員が承知していた。


学校から家路に急ぐ響は思う。


響自身もまだ全てを聞いたわけではない。

ただ2年前のある出来事の後両親から教えられた事を推察しただけ。


あの時、自分が起こした現象の事とその時の両親の反応と母、凛の対応。その後の両親の話。

その話しによれば、母は海外の出身ではなく異世界出身の人間という事。


それも、ただの異世界人ではない。この世界ではあり得ない、特殊な能力の持ち主。

日常生活に垣間見える、高貴な佇まい。


(多分ですが、お母様はどこかの王族か、それに準ずる貴族?・・・そして、私の本当の・・・)


今夜聞かされるであろう、両親の「大切な話」が今の響には逃れようのない、これからの自分達の試練、運命と感じていた。

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