波風 目黒
「ほら!早く逃げましょう!」
と僕は路地裏から崩壊していた街を呆然としながら眺めていたら、おそらくあの爆発から助けてくれたであろう少女が僕の手を引かれて僕と少女は走り出した。
あれから20分くらいは走ったのでおそらく2キロくらいは走った事になるだろう。僕たちは居酒屋に来ていた。なぜ居酒屋なのだろうか?と思っていたら目鼻立ちが整っている、そして鮮やかな青髪の少女がこちらを少しジト目で見つめてきた。
「あなたはばか何ですか?なんでベビから逃げなかったんですか?あなたもヴァンパイアなら分かるでしょうに」
???どういう事なのだろうか?ヴァンパイア?そんな訳がない。僕は人間として生まれてきて人間として育ってきた。
意味が分からずに立ちすくんでいると190cmあるのではないかと言うくらいにはでかく筋肉もありガッチちりとしている男がこちらに近づいてきた。
「お前なつめをしっているか?」
なつめ?誰なのだろうか?
「えっ?すみません誰ですか?と言うかどうなっているんですか?」
と僕が問うと男は
「なつめはヴァンパイアだ。どうやらお前はなつめが死滅する為の能力の寄生先として選ばれたようだ。」
「どういう意味ですか?」
「つまりお前はヴァンパイアになったってことだ。」
ヴァンパイア?僕がそんな訳がない。僕は人間だ。
「お前...飯を食って激痛に襲われなかったか?それに死に直面した時に生の固執したり体が軽くなる。つまりは身体能力があがらなかったか?これらはヴァンパイアの性質だ。まあ、よっぽど死にたかったら効かないのだが。」
確かにあった。あったが。あったのだが僕は人間だ。人間なのだ。
「そ、そうだったんですか...」
と少女が哀れみからかこちらを心配げな表情で見つめてくる。少女は心配げな表情を浮かべているだけでも美しいのでやはり美人なのだろう。
「血だ。とりあえず人殺しになりたくなければ2日に1回は飲め。」
「こ、困ったらいつでも来てくださいね...」
と僕は医療用のパックいっぱいに入った血をいやいや受け取り家へと帰るのだった。
「あら、帰ってたのね」
と家に帰ると僕以外の家族3人でご飯を食べていた。
「お兄ちゃん生臭いだけどー」
おそらくパックから血の匂いが漏れてしまったのだろう。
「人でも殺したのー?」
「もー!りさこの人本当にやりそうだからやめてよー」
相変わらず僕をネタにこの人達は楽しんでいるようだが今はそれどころではなかった。
「ご、こめんなさい」
とだけ言い僕は自室へと向かうのだった。
あれから僕は何も考えたくなかった為すぐに眠りについたのだった。
昨日新宿にいたヴァンパイアは政府は運営している組織「Extermination」によって駆除されたようなので僕はまた昨日と同じと道を歩く事にした。少し活気が戻ってきた新宿の街でぶらぶらと歩いていると聞き覚えのある声が背後から聞こえてきた。
「なんでここにいるんですか?」
と背後を向けば昨日助けてくれた少女が居た。
「まあ、駆除されたらしいしねーってか流石にただでさえ高校休みがちだから留年が怖いってのもあるな」
「なら私と一緒に登校しませんか?」
「は?」
「だって高校一緒ですよね?」
と言われたので彼女の服装をみると確かにうちの高校の制服だった。
「ほんどだ」
「逆になんですけど気づかなかったんですか」
「まあ、常に下を向いて歩いてるからな」
「なんか、すみません」
と僕のこの自虐的な発言に少女は意地悪げな表情を浮かべニマニマと微笑みながら呟いた。
「ってか名前なに?」
「確かにお互い自己紹介がまだでしたね」
と少女ははにかみながら呟いた。
「私の名前は目黒です!」
「上の苗字は?」
「秘密です」
と目黒は微笑みながら呟く。
「まあ、いいや。僕は柊 瑞季だ。よろしく」
「なんか、名前負けしてますね」
「うっせーほっとけ」
「冗談です。かっこいいと思いますよ」
と言い目黒は上目遣いでとことこと近づいてきて小さな手でぽんぽんとしてきた。正直むちゃくちゃ可愛いかったがこういう男があらぬ勘違いをするような事をするのはやめていただきたい。
「んじゃいくぞ」
と言い僕たちは軽く雑談をしながら学校へと向かうのだった。
「柊さん今日うちに来れますか?」
と午前中の授業が終わり昼休みになりなるなり1年生の教室からとことこと歩いてきた目黒がそんな事を言い出した。やはりと言うか必然的なのだが目黒と関わり始めた僕ですら分かるくらいには性格が良くおまけにむちゃくちゃ可愛いので僕は今クラスの男子ほぼ全員からから殺意が含まれる視線を浴びていた。
「なんで?」
面倒くさいことになりそうなので僕がそう素っ気なく返すと
「なんか、柊さんの匂いに覚えがあるって言ってる人がいるんですよ」
「えっなんか気持ち悪」
「なんか勘違いをしてませんか...つまり柊さんにヴァンパイアの力を押し付けた女性の知り合いって事ですよ」
なるほど。あの屋上であったおかしな女の知り合いか。その時点でだいぶやばいやつな気がしてきたが僕は甘んじて受け入れる事にするのだった。
学園ヴァンパイア 天草 仙 @kamuidyo
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