2話

         ★


 僕には家が隣で両親も仲が良く、生まれた時から一緒にいる幼馴染の女の子がいた。その女の子は小さい頃、大病を患っており、ろくに幼稚園、小学校へは全く行けず、中学校も途中まで行けなかった。しかし、病気を克服し周りよりも精一杯頑張り、高校は、僕と同じ進学校へと入学することが出来た。


 そして入学式の日、満開の桜の下でこう告白された。


「私の彼氏になって、キミの思う青春を教えてよ!」


 僕は笑顔で承諾した。


「二人で沢山思い出を創ろう」


二人なら最高に青春を謳歌出来る。青春の思い出をたくさん創ることが出来る━━━あの日まではそう思っていた。



 それは、二人にとって特別な日だった。僕は彼女のために何をしようかと、待ち合わせ場所でソワソワしていた。考え始めてからどのくらいたっただろうか。僕の名前を呼ぶ声が正面から聞こえる。僕はそれに答えようとしたが、━━━━それは叶わなかった。


 信号が青になり、彼女が手を振りながら前へ踏み出る。それに答えようとしたその時、赤信号であったにも関わらず、猛スピードでトラックが突っ込んできた。そして、



 彼女は轢かれた。



 倒れた彼女を目の前に、僕は必死で彼女を蘇生しようと試みた。しかし、傷はあまりにも深く、流血は止まらない。程なくして救急車は来たが、病院に着いて間も無く、死亡が確認された。



 この日は大事な二人が付き合い始めた記念一年目だったのに、彼女の命日となってしまった。



 そこで僕は思った。青春とは誰か大切な人といることなんじゃないかと。俺は彼女にその答え聞きたかったが、聞くことはできなかった。


 この交通事故以来、僕は閉じこもり、僕の青春は幕を閉じた。哀しい気持ちや、やるせ無さ1番だったが、彼女に悪いと言う気持ちもあり、女性と付き合うこともしてなかった。


 しかし、大学入学までには立ち直り、名門大学へ入学、そこで、


「私、━━にもっと笑って欲しい」


 先程別れた彼女と出会った。


         ★


 僕は涙が溢れ出しそうになるのを抑えて、女性に問いかける。


「貴女の思う青春は……僕が初めに思っていたものと同じだったんだね」


「うん。勿論、ちゃんとした答えは無いけどね。だけど、私はキミが私のことを吹っ切って、新しい人と青春を創っていってほしいなと思って意味が一番かな」


 小雨だった雨が少し強くなる。それと同時に太陽が出始め、この虹色の世界を照らし始める。


「そうか……俺はお前の━━━━はるのことを吹っ切れていなかったんだな」


「そうだよ。私はあくまでも彼女だった人。もう居ないの。だから、せめて私の分も━━━━はるには幸せになって欲しいな。まだ間に合う。別れてしまったけど、彼女を幸せにしてあげて」


 その言葉を聞き、僕の目から滝のように涙が流れる。すると、俺の後ろから眩いくらいに太陽の光が強くなる。もう我慢できない。僕は後ろを振り向いた。そこには、


 僕と同じくらい泣いているにも関わらず、懐かしの笑顔を浮かべている陽がいた。


 それに応えるように俺も笑顔を返す。やっと昔の返事が出来た。


 「「これで終わりにしよう。陽と晴の物語は」」


**************


 光を感じ取り、僕は目を覚ます。そこは朝日の光の筋がカーテンの隙間から覗いているだけの、いつも通りの自宅であった。先程見たのは夢だったのか現実だったのか、それは分からない。ただ、涙の跡があったので泣いていたことは確かだ。やる事もたった一つ。


「もう一度、やり直さないか?」


 僕は新たな"青春"を再び創ろうとしている。

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貴女の青春を僕に教えてよ ハンくん @Hankun_Ikirido

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