デート?編

デートをしたら付き合ってほしいといわれました

 日曜日。


 爽やかな朝に目覚めは良好。そして今日の予定は同級生の美少女とのデート(本人には否定されたけど)なんて最高すぎる。


 いい朝だ。


「お兄さん、今日のこの恰好どう思いますか?」


「めっちゃ似合っとると思うで」


「なんでいるんだよお前ら・・・」


 こいつらさえいなければ。


 待ち合わせ場所まで一緒についてくると言い張ってきたが、契約のせいで抵抗できずそのままついてきた。水瀬といるときには離れてみているとのことだが、正直言ってすごいじゃまだ。


 買い出しだけだからいいが、もしも本当にデートだった場合こいつらついてくるのだろうか。


「お待たせ。わざわざ飼い主たちと一緒にくるなんて律儀なものね。正直にいって神崎兄妹って目立つから勘弁してほしいんだけど」


「すみません、少しおじゃまさせていただきたいんです」


「・・・どうしてそこまでするの?首輪とかつけたり高いお金払って買い取ったんでしょ」


 おお、ナイス。


 他の奴らも俺に対してそういう風に聞いてくる人もちらほらといたものの、神崎兄妹に直接聞く事はなかった。猫かんは実力のせいで遠ざけられていて、成人先輩にはマイナスの感情をとられにくいからだ。


 しかし水瀬は堂々と聞いてくれた。


「私たちにも、事情があるんです。あまり踏み込まないでほしいです」


 そう、きっぱりと言い放つ猫かん。あまり気の強いほうではないと思っていたがここまで主張するなんて。


 まあ内容はくそだけどな!


「少しくらい配慮してあげなよ」


 まじで水瀬さん神過ぎる。


 神崎兄妹は、特に何かを言い返すこともないがうつむいたまま俺たちから離れた状態でついてきていた。やはりうすうす感じていたがそれでも俺に固執しなくてはならないほどの事情があるのだろう。


 


 


 買い出しは順調に進んでいった。完全に荷物持ち要員だと思っていたが意外にも押し付けられることもなく、俺が代わりに持とうとしたら断られた。いいやつなのに口調が悪いせいで友達が少ないのがもったいない。


 もしかして彼女にみられるのではないかと思っていたが、口調は完全に下僕のようだ。


 いわれるがままに買い出しが終わってからカフェに入る。


「今日は買い出しに付き合ってくれてありがとう。助かった」


「何もしてないんだけどな」


「慣れたから何も考えていなかったけど、あんたも首輪のせいで目立つってこと忘れてたけどね」


 ジト目で言われた。そんなこと言われても外したら爆発するとまで言われたら嘘だとは思うが少し怖くなる。だってそんなわけないだろうと外すキャラって確実に死ぬ運命にあるだろ。


 カフェラテをぐるぐるとかき混ぜながら、伏目がちになっている姿も目立つんだけどな。目立つ目立つとは言っているものの本人そのものが人目を惹く。


「思っていたよりも神崎兄妹が人目を集めてくれたから助かったから複雑ね」


 そういって目線を外した先には神崎兄妹が少し離れた席でコーヒーを頼んでいるところだった。猫かんはフードをかぶっているため、猫耳は隠れているものの成人先輩は特に顔を隠すこともなく特に女性からの視線をわがものにしている。


 まぁ成人先輩は目の前の妹のことしか見ていないんだが。


 あのシスコンさえなければ完璧なのだが、あれで神様は世界の均衡を保っているのではないか。


「なんでそんなに目立つことを避けているんだ?」


 朝から「目立つ」ことに敏感になっていることを感じていた。生徒会室にいるときは割と気の強いキャラでやっているが普段から生徒会として公に活動しているときもあまり目立たずにじっとしていることが多い。


 気になる噂もある。


「ももって可愛いじゃない?だからモテてモテて困っちゃうのよね」


「水瀬らしいな」



 水瀬が一拍置いた。



「あんたって付き合っている人とかいるの?」



 ほぉ?


 気持ち悪い反応だとはわかっているものの、美少女から少し言いにくそうにもじもじといわれればさすがにこの反応になるだろう。顔には出さないように表情筋を鍛えておけばよかった。


 そうやって、逡巡していると。



 

 柔らかな手が、俺の手を包んだ。



「いるの?」


「い、いない、です」



「なら、付き合ってくれない?」


「え」


 

 ド直球な告白に胸が大きく鼓動している。


 水瀬は性格こそ割とさばさばしている子ではあるが、何度も言う通りかなりかわいい。ツインテールなんてこの年になってくるとする子は少ないがぶりっこという印象はなく非常に似合っている。


 友人は少ないが男子からかなり人気がある。


 そんな子から告白なんて。



「もちろん見せかけの関係ね」



 ですよね。



「事情があるのか?」



「実は、ストーカーのことで困ってて」


「ああ、付き合っているふりをしてそのストーカーを追い払う作戦ってことな」


 それなら漫画とかで見たことあるぞ。


 困っている友人を助けるのは当たり前だからその案には乗る。周りからしたら美少女に付きまとっている男にしか見えないだろうが。





「ううん、私がストーカーなの」




「はい?」


「少しでも仲良くなったらうれしくて付きまとっちゃうの。だから一定の相手を仮にでも作っておけば治るかなって思って」


 新しいですね。


 ストーカーパターンですか。


 誰だこの子が常識人って言ったのは。


「仲良くなったらってことは俺もストーカーされる可能性があるってこと?」





「あ、あんたは全くタイプじゃないしむしろ神崎兄のほうが好きだから」





 泣いていいですか?

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