深夜ティーブレイク
ヒロと高間は一緒に戻ってきた。高間はおはぎの載ったお盆を持ち、ヒロは茶の入ったポットと湯呑を持っている。
「どうぞ」
高間はおはぎとフォークを机の上に置いた。ヒロが茶を注ぎ、全員の前に出す。
「フォークも持ってきました」
高間はおはぎを食べながらお茶を飲んだ。枚舞はおはぎを食べながら、明日の朝食のことを考えていた。
「夜更かしはいいものだな。天窓から見る星空も最高だ」
「夜更かしして食べる食事もまた格別ですよね」
「そうだな」
「この天窓、分厚そうですね」
「厚さ50センチのアクリルだからな」
「すごいですね」
夜の休憩室では、4人とビアの話がかなり弾んだ。そして話題は高間が「高間大尉」と呼ばれているのはなぜかという素朴な疑問に移った。
「カーバ所長はなんで高間さんのことを高間大尉って呼ぶんですか?高間さんって軍人なんですか?」
「軍人ではありません」
「カーバ所長、どうしてですか?」
「高間大尉は自衛官だからな」
「大尉ってことは結構給料もすごいんじゃないですか?どうしてここでパイロットしてても何も言われないんですか?」
「僕は一応一等陸尉ですが、今もまだ平和維持活動の各地を転々としてることになってるんです」
「ほええ……ということは……」
「たぶんその推測は外れてますね。僕がかつていた国の名を知っていますか?日本から派遣された国です」
「知らない」
「南スーダンです。そして最初に派遣された平和維持活動のさなか、僕は命令を受けて日本に帰りました。しかし、そこで転勤を命じられたんです。家族を連れてモロッコへ行け、研究所でのパイロットに採用されたから……と言われました。モロッコに着くと、モロッコの政府がチャーターした小型機でサハラ砂漠に下ろされて、オドマンコマに回収されました。そういうわけで、今はヘリのパイロットをやってます」
「OH-2は高間大尉のために来たと言ってもいいからね」
「オドマンコマのヘリ4機のうちチヌークはアメリカから直輸入、OH-2は日本からの輸入、他の2機はオドマンコマの前身施設が作った実証実験機。格納庫スペースが無駄に広いもんだから、チヌークがもう1機は入りそうですよ」
「大丈夫、近々新型輸送機を導入する予定だ」
「なんですか、それって」
「本国で最近完成した新型ティルトジェット。速いよ」
「また訓練に時間を取りそうなものを……」
「大丈夫だ、専属パイロットが2人、本国から来る」
「そうですか……早くお目にかかりたいものです」
「そうか。来月には来るらしいから待っててくれ」
「そろそろ寝ますね」
高間大尉が休憩室を出ると、他の全員が示し合わせたように休憩室を出て各自の部屋に向かった。全員が寝付いたのは10分後のことだった。夜の砂漠に、オドマンコマはひっそりとたたずんでいた。
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