第78話 覚醒のおっぱい

 小春はこの試合、余裕で勝てると思っていた。


 相手は乳とプライドが邪魔して動けない2人。


 だから、確実に勝利して、真尋の貞操をしっちゃかめっちゃかに出来ると思ったのに……


「うおおおおおおおおおおおっぱい!」


 ゆかりがヤバい。


 巨乳で加速し覚醒している。


 歓喜する男子たちのエロ目線など気にすることなく(まあ、元からそんな恥ずかしがったり拒否るようなタイプじゃないけど)、小春チームの陣地に攻め込んで来る。


「止めて!」


 しっかりと調教……いや、教育済みのメンバーに指示を出す。


 しかし――


「おっぱいフェイントぉ!」


 縦横無尽に動くあの乳が、こちらのペースを乱す。


「くっ……」


 悔しい歯噛みをするこちらのメンバー。


「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおぉ!」」」」」


 一方、サル男子たちは大いに盛り上がる。


「まずいな……」


 正直、舐めていた。


 彼女がリーダーである『ビッチーム』のまほろに比べると小さいよって、いつもイジっていたけど……


(……大きさはうちのまほろんの方が上……けど、おっぱいの運動能力は、ゆかりんの方が上だ)


 動けないマッチョに価値はない。


 それと同じく、デカいだけの乳にも価値はない。


 だから、ゆかりの乳は……


「……ゴールデン級だねぇ」


 小春はほくそ笑む。


「ますます、引きちぎりたくなっちゃった♪」


 床を強く蹴って駆け出す。


「みんな、ゆかりんのマークはコハルがやるから!」


 指示を飛ばす。


 小春はゆかりと対峙する。


 ダム、ダム、というボールのはずみ。


 それと同じくして、揺れるおっぱい。


 この魅惑の幻惑に、みんな騙されて来た。


(ボールにだけ集中していれば、問題ないよ)


 小春は誰にも邪魔されない自分の部屋にて、最高のオ◯◯ーをする時のように。


 集中力をマックスまで引き上げる。


 バスケボールと同じく弾んで、惑わすおっぱいに用はなし――


「……そこだ!」


 小春は見事、ゆかりの巨乳に惑わされず、ボールに触れた。


 そのまま、カット成功……


 ぼよべちん!


「ふげっ!?」


「あっ……」


 ゆかりもまた、手強い小春を抜くために、他のメンバーを相手にした時以上に、乳を揺らしていた。


 そして、その乳の暴力が……小春に振り下ろされた。


 これは……


「……ま、前島さん、退場です!」


「うそおおおおおおおおおおぉん!?」


 何ともあっけないというか、意外な幕切れだった。




      ◇




「イテテ……」


 保健室のベッド上にて、桜田さんは頭をさする。


「ねえ、綿貫きゅん、タンコブ出来ていない?」


「いや、さすがにそれは……」


「はぁ、試合には勝ったけど……なんか勝負には負けた感じ」


 いつも飄々ひょうひょうと明るい桜田さんが、珍しく落ち込んだ様子だ。


「だ、大丈夫?」


 僕は気遣うように言う。


「慰めてくれるの?」


「ま、まあ……」


 ぎこちなく頷く僕に、桜田さんはニコッと微笑みかける。


「じゃあ、ここでエッチしようか」


「いやいや、それは無理でしょ」


「大丈夫、綿貫きゅんのデカ◯ンとコハルの敏感性ならマッハだよ」


「そんなこと言われても……」


「そんな風に恥じらう綿貫きゅうが萌えるんじゃ~!」


「わっ!?」


 僕はベッドに押し倒される。


「ハァ、ハァ、綿貫きゅん……コハル、試合後で、アドレナリンが出ているみたい」


「さ、桜田さん、落ち着いて!」


「じゃあ、今度は綿貫きゅんのそのメガバットでコハルを失神させて♡」


「何てことを言うんだ、君は……」


「もう、四の五の言わずに、エッチしようよ♡」


 カチャカチャ♪


「や、やめてくれー!」


「ウシシシシシシ!」


 ぼよべちん!


「ぐへっ!?」


 桜田さんの声がひっくり返る。


「あ、ごめん。またやっちゃった」


「ちょっと、また気絶させたら、大問題よ。しかも故意に」


「でもでも~、こはるんが~」


「……ゆかりん、またその暴れん坊おっぱいで、コハルのことを殴ったね?」


「それはごめんだけど……学校でハレンチなことするなー!」


「でも、保健室と言えば、隠れてエッチなことするでしょ?」


「まあ、否定はしないけど」


「いや、否定しなさいよ」


「ふふ、まあちょっと納得は行かないところがあるけど……賭けはコハルの勝ちだから」


「うぅ……」


「これから1週間、2人は綿貫きゅんに接触禁止ね♪ コハルだけが、独占できちゃうの♪」


「むきぃ~! ただでさえ、まーくんと別クラスになってフラスト溜まってんのに~!」


「アハッ♡ コハルは同じクラスだし、もう四六時中、綿貫きゅんと一緒だから♪」


「ねえ、麗美さん。やっぱりこはるんのこと、おっぱいで撲◯しても良い?」


「それは色々とヤバい発言だからやめておきなさい」


 麗美ちゃんはため息交じりに言う。


「分かった、分かった。ここではエッチなことしないし」


 ベッドからぴょんと下りた桜田さんは、僕の腕を引っ張る。


「綿貫きゅん、2人で教室に戻ろ♪」


「あっ……うん」


 頷きつつ、僕はゆかりちゃんと麗美ちゃんを見る。


 ゆかりちゃんは悔しそうに歯を食いしばって。


 麗美ちゃんは何か無言の圧力が怖い……


「さーてと、この1週間、どんなドエロいことしちゃおっかな~?」


「あ、あの、桜田さん……ほどほどにしてね?」


「大丈夫だって。ちゃんと休憩時間を取ってあげるから。とりあえず、8時間労働の1時間休憩で良いよね? ちゃんと労働基準法は守るよ~♪」


「いや、そんな時間、いつ取るの?」


「もちろん、学校終わりに」


「ぜんぜん、労働基準法を守ってないじゃんか……僕らの本業は学生でしょ?」


「あ、そうだ。綿貫きゅんのお家って、大人のオモチャはある?」


「えっ? いや、そんなの無いけど……」


「ふぅ~ん? お子ちゃまだね~?」


 桜田さんは僕ではなく、他の2人を挑発するように言う。


 案の定、2人は悔しそうに歯噛みをしていた。


「じゃあ、負け犬のお2人、バイバーイ♪」


 桜田さんは僕と腕組みをして、ランランとこの場を去って行く。


「ちくしょう! どうしてこうなったあああああああああああああぁ!?」


 背後でゆかりちゃんの絶叫が響き渡る。


 麗美ちゃんは変わらず無言のまま。


 桜田さんは、全く気にした素振りなく、ニッコニコだし。


 そろそろ、僕の胃袋が限界です。




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