第70話 決着

 ゆかりは意識が遠のきかけていた。


 こんな感覚、日常生活ではなかなか味わうことはない。


 けど、ゆかりは割と頻繁に体験していた。


『はぁ、はぁ……まーくん、相変わらず、すっご……』


 愛しの彼とのエッチは何度もしているはずなのに……


 一向に飽きる気配がない。


 何度ヤッても、絶頂へと導かれてしまう。


 だから……


「……へへ」


「えっ、持ち堪えた?」


 勝利を確信していたまほろを始め、同じビッチームの面々は動揺の色を見せた。


「もしかしたら、あんたらの方が、スペック的にはあたしらの上位互換なのかもしれないよ……」


 ポタポタと、汗をしたたらせながら、ゆかりは言う。


「自慢のおっぱいだって、上には上がいると言うか、年下のあんたの方がデカいしさ」


 ゆかりは、ニッと笑う。


「でも、これだけは言える……おっぱいの大きさで負けても、まーくんに対する愛の大きさでは絶対に負けない」


 ゆかりが放つ言葉には、確かな芯が詰まっていた。


「まーくんはオモチャじゃないんだ。だから、絶対にあんたらには渡さないよ」


「なっ……」


 間近でゆかりの気迫を受けたまほろは、動揺してしまう。


 それによって、血圧が上昇し、優位に立っていたからこそ、感情が大いに乱され、崩れ落ちて……


「……も、もうダメ~!」


 サウナ室から飛び出した。


「……勝負あり」


 小春が一瞬、悔しそうに唇を噛みつつも、直後に肩をすくめた。


「ゆかり、よくやったわ!」


「ゆかりさん!」


 麗美と和沙は、サウナ室の中に飛び込み、ダウンしているゆかりを引っ張り出して来た。


「へへへ、どうだ、参ったか?」


 麗美と和沙に両脇を支えられて、ゆかりはニヤリと相手に笑って見せる。


 ビッチームの面々は悔しそうに顔をしかめつつも、余計な口は叩かなかった。


 その様子を見て、ゆかりは気を失った。




      ◇




 最初は嫌々だったけど、何だかんだ広いお風呂に浸かれて、今日は良い気分だ。


 そういえば、夕ごはんがまだだったから、お腹が空いたな。


 メシ屋が中にあるから、そこでみんなして食べようか……


「……あれっ?」


 畳にテーブルが置かれた飲食&休憩スペースにやって来ると、先に3人が上がっていた。


 てっきり、男の僕の方が、早く上がって待つことになると思っていたのに……


「あ、真尋くん」


 和沙ちゃんが、こちらに気が付く。


「みんな、早かったね。どうしたの……って、ゆかりちゃん?」


「うぅ~」


 座布団を枕がわりにして、横になっているゆかりちゃんがいた。


「の、のぼせたの?」


「のぼせたというか……ちょっと、色々あってね」


 麗美ちゃんが苦笑する。


「ほら、ゆかり。真尋が来たわよ」


「んぅ~、まーくん?」


 冷やしタオルを額にのっけたまま、ゆかりちゃんは僕の方を見た。


「だ、大丈夫?」


「えへへ、大丈夫だよ。これから、まーくんと100回はパ◯れるし」


「いやいや、どう考えても無理でしょう、その調子じゃ」


「そうよ、ゆかり。代わりに、私と和沙で真尋の相手をしておくから」


「な、なんだと~、ゆるせ……ふにゃあ~」


 起き上がりかけたところで、ゆかりちゃんはまたバタッと倒れ込む。


「なんて、冗談だよ。私たちも、ちょっと疲れちゃったし」


「ですね」


「あの、本当に何があったの?」


「まあ、何ていうか……女の戦い?」


「ですね」


「そ、そっか」


 これ以上は、あまり深掘りしない方が良さそうだ。


「……ソフトクリーム食べたい」


 ゆかりちゃんが言う。


「でも、そんな調子じゃ無理でしょ?」


「まーくんに食べさせてもらう」


「えっ? まあ、良いけど……」


「やったぁ~。じゃあ、ソフトクリームをまーくんのデカ◯ンに塗りたくって、ペロペロしちゃう♡」


「なっ……!?」


「ちょっと、ゆかり」


 麗美ちゃんが眉根を寄せる。


 注意してくれるのだろうか?


「味はどうするのよ?」


「はっ?」


「王道はバニラでしょ、見た目的にも」


「まあ、そうね」


「いや、あの……」


「もう、みなさん。こんな人前で、そんなハレンチな行為できる訳ないでしょう?」


 和沙ちゃんが場を制してくれる。


「うん、そうだよね。だから、大人しく普通に食べて……」


「ちょっと、ソフトクリームをテイクアウトできるか、聞いてみますね」


「何でぇ~!?」


 結局、僕のリラックスタイムも束の間のことだった。




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