第65話 満喫タイム

 クリスマスは、あの3人にたっぷり、こってり搾り取られた僕だったけど……


 年末年始は、みんな家族と過ごすらしいので。


 僕は久しぶりに、あの3人から解放された……なんて言い方はちょっとひどいけど。


 とりあえず、束の間の休息の時を得ていた。


「ふぅ……」


 自分で言うのもなんだけど、僕は真面目だしそんなダラけた人間ではない。


 1人暮らしをしているから、同じ歳の子たちよりも自立していると思うし。


 ただ、日頃の疲れが溜まっていたせいか、この年末年始はゴロゴロと過ごしていた。


「何か、あの3人と出会う前に戻ったみたいだな……」


 ぼっちで冴えない日々だけど、それでも僕にとっては、居心地が良かった。


 まあ、あの3人と出会って、仲良くなって、お突き合い……いや、お付き合いをするようになってから、それはそれで刺激的な日々だったけど……


「……まあ、今の内にゆっくりと休んでおこう。


 僕はこたつにもぐって、またゴロゴロとし始めた。




      ◇




「ゆかりー、久しぶりに会ったら、何かメッチャおっぱいデカくなってね?」


「こら、呼び捨てにするな、お姉ちゃんと言いなさい」


「なあ、ちょっと揉ませてくれよ~」


「クソガキ、小学生のくせに調子に乗ってんじゃないよ」


 あたしは生意気ないとこをシッシと手で追い払う。


 彼は「ちぇー」と言いながら、他の子どもたちとの遊びに交じって行った。


「まあ、久しぶりに親戚と会うのは悪くないけど……」


 でもやっぱり……どうしても、疼いてしまう。


 愛するまーくんを求めて、この大きなおっぱいが……




      ◇




「麗美ちゃんは、いつ見てもきれいねぇ~」


「ありがとうございます、おばさま」


「麗美ちゃん、ちょっとお酌してくれるかな?」


「何なら、一緒に飲むかい?」


「いやですわ、おじさま。私は未成年です」


 微笑んで、久しぶりの親戚との交流をしつつも、私はずっと考えていた。


 愛する真尋のことを……今ごろ、どうしているのかしら?


 私がいなくて、寂しいと思ってくれているかしら?


 ああ、イケない。大切な所がちょっと……キュンキュンと疼いて止まらない。




      ◇




「和沙ちゃん、これお年玉。もうすぐ3年生で受験だろ? 参考書でも買いなさい」


「ありがとうございます、おじさん。受験生って、意外とお金がかかるので、助かります」


「なに、こんなの安い投資だよ。将来は、超エリートコースだろうからな、和沙ちゃんは」


「うわ、嫌らしいおじさんだよ、こいつは」


 ワッハッハ、と親戚一同の場は盛り上がる。


 その中心にいたわたしだけど、ちょっと断りを入れて、その場を後にした。


「……はぁ」


 元から、ゆかりさんや麗美さんみたいに、社交的じゃないから。


 こういう集まりが、しんどかったりする。


 それに何より……大好きな……ううん、愛する真尋くんに会いたい。


 年末年始くらい、離れていてもどうってことは無いと思ったけど……ちょっと無理みたいだ。


 この前は、わたしが彼の体に刻むと言ったけど……どうやら、とっくにわたしの方が刻まれてしまっていたらしい。


 彼という存在を。




      ◇




 どうやら、また惰眠だみんむさぼっていたらしい。


 スマホの音で目を覚ました。


「んっ?」


 僕は目をこすりながら、スマホを手に取った。


「……えっ」


 何かメッセの数がとんでもないことになっていた。


 その送り主は……


『まーくん、おっぱいいっぱい揉んで♡』


『真尋、今すぐ私の足を舐めなさい』


『真尋くん……もう限界です』


 3人それぞれから、鬼のような連投が届いていた。


 僕は何だか、どっと冷や汗が噴き出てしまう。


 いや、彼女たちのことは、ちゃんと大切に想っているし、好きだけど……


「……ごめん」


 僕はスマホの電源を切った。


 罪悪感を覚えつつも。


「……あとが怖いけど……お正月くらい、久しぶりの1人きりを満喫したいんだ」


 自分と言うよりも、目の前にいない彼女たちに言い聞かせるような感じだった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る