第62話 クリスマス編④

「――ああああああぁん! まーくん、しゅきいいいいいいぃん!」


 本当に、ゆかりちゃんは背は小さいのに、胸と声は大きい。


「ゆ、ゆかりちゃん、ちょっと声を押さえて」


 僕は慌てて言う。


「ていうか、このマイクとまーくんのチ◯ポ、どっちが太いかなぁ?」


「いくら防音でも、あられもない発言はやめて!」


 僕がまた必死で叫ぶと、


「ちぇ~、分かったよ」


 ゆかりちゃんは、口の先を尖らせる。


「じゃあ、今度は2人でラブデュエットしよ♡」


 笑顔で僕の腕に抱き付いて来る。


 また、その巨乳にホールディングされてしまう。


「でもまあ、ちょっとホッとしているよ。最初、カロリー消費しよなんて言うから、何をするのかと思ったけど……」


「おや? まーくん、本当は別のことを想像していた? やっぱり、体を動かしたい?」


「いや、それは結構です」


「むっ。言っておくけど、普通はクリスマスってめっちゃパ◯りまくる日なんだからね」


「そうかもしれないけど……僕らは普段から、たくさんしているから。むしろ、こういう時くらい、普通のデートがしたいよ」


「あら、まーくん。そんなにあたしと、ラブラブなデートがしたいの?」


「ラブラブっていうか……まあ、まったりとしたいかなって」


「何よ、エッチの時は、何だかんだ絶倫で、いつもあたしらをクタクタにさせるのに」


「だって、疲れるから、早く終わらせたいし」


「うわ~、何その発言。まーくん、他の2人も言っていたけど、一丁前にハーレム王の風格を出し過ぎでしょ~」


「そ、そんなことはないと思うけど……」


「まあ、良いや」


 そう言って、ゆかりちゃんは、なぜかマイクを胸の谷間にずぼっと差し込む。


「ちょっと、何をしているの?」


「これで歌っても良い?」


「ダメだよ」


「でも、何か挟んでいないと、あたしのおっぱいが寂しいから……じゃあ、やっぱり本物を……」


「絶対にダメだから!」


「もう、けちぃ~!」


 その後、駄々をこねるゆかりちゃんをなだめつつ、数曲を歌った。


「まーくん、恥ずかしがっている割に、けっこう歌っているじゃん」


「まあ、2人きりだし。ゆかりちゃんばかりに歌わせても、可哀想だなって思うから」


「何それ、超やらしいんだけど~!」


「や、やらしい?」


「あ、ごめん。優しいの間違えだった♪」


「やらしいのは、ゆかりちゃんでしょ」


「おっ? 最近のまーくんは、本当にちょっと反抗的だねぇ」


「別に反抗しているつもりはないけど……」


「まっ、まーくんのチ◯ポはずっと反抗期だもんね♡」


「全くもって不名誉な言われ方だよ」


「てか、ちょっとお腹すかない?」


「えっ? いや、さっき麗美ちゃんと、ランチを食べたばかりだし」


「あたしはロクに食べていないの~。良いじゃん、おやつ感覚で」


「じゃあ、スイーツ系なら……」


「あ、チャーハン美味しそう。ポチッとな♪」


「全然おやつじゃないし!?」


「だいじょーぶ、だいじょーぶ。あたしが食べるから」


「まあ、それなら良いけど……」


 その後、2人で適当に注文を済ませた。


 しばらく歌っていると、注文の品が届く。


「うわ~、ほかほかチャーハン、美味しそう~!」


「ていうか、クリスマス感がゼロだね。せめて、チキンライスなら良かったけど」


「良いの、いっぱい歌って、がっつり系が食べたかったから」


 そう言って、ゆかりちゃんはスプーンで大きな一口分をすくって、パクッと食べる。


「う~ん、おいちい♪」


「良かったね」


「はい、まーくん」


 すると、僕にスプーンを渡して来た。


「えっ? いや、だから、僕はそんな食べられなくて……」


「じゃなくて、あーんしてよ。ラブラブデート中なんだし♡」


「あ、そういうことか……」


 僕は少し戸惑いつつも、スプーンでチャーハンをすくった。


「あーん♡」


 ゆかりちゃんが、甘えるように言うので、


「あ、あーん」


 僕はその口にチャーハンを差し上げる。


 パクッと。


「……う~ん、おいちい♡」


「じゃあ、後は自分で……」


「ねえ、もっと、ちょうだい♡」


「えぇ? まあ、良いけど……」


 僕は仕方なく、2口目、3口目と、ゆかりちゃんに食べさせてあげる。


「それにしても、ゆかりちゃん、よく食べるね?」


「こら、まーくん。女の子に、そんなこと言ったら失礼だぞ?」


「ご、ごめん。でも、そんなに太らないよね」


「おっぱい以外はね」


「ことあるごとに、アピールして来るなぁ」


「だって、あたしの唯一のセールスポイントだから。この胸が無かったら、まーくんは愛してくれないでしょ?」


「いや、そんなことは……ゆかりちゃんは、巨乳だけじゃなくて、明るい性格とか、魅力的だと思うよ」


「ほ、本当に? いつも、ウザがっているのかと思っていた」


「まあ、それは若干あるけど……」


「あるんかい!」


 ベシッ!」


「いてっ……でも、ゆかりちゃんと一緒にいて、僕は楽しいよ」


「まーくん……」


 ゆかりちゃんが、ジッと僕を見つめて来る。


「しゅき、らいしゅき……」


「えっ、急にどうしたの? てか、赤ちゃん言葉?」


「ねえ、監視カメラあるけど、上手いこと死角をみっけて……パ◯ろ?」


「ゆ、ゆかりちゃん!? そんなの、ダメだよ……」


「とりゃっ!」


 不意打ちでソファーに押し倒される。


「って、ここモロ監視カメラの範囲内だけど!?」


「大丈夫、このブランケットで隠して……ごにょごにょ、と♪」


「やめてよ! せっかくのクリスマスに、2人して補導されたくないよ!」


「あたし、まーくんとなら、ブタ箱に行っても平気だよ♡」


「そんなのダメだああああああああああああああああぁ!」


 ガチャリ、


「お客さま、店内でそのような行為は、おやめ下さい」


「ひぃ! ご、ごめんなさい、ごめんなさい……」


 と、慌てて必死に謝るけど……


「……って、麗美ちゃんと和沙ちゃん」


「ギリギリセーフってところね」


「全く、油断も隙もないビッチですね、ゆかりさん」


「ちっ、こそこそ監視しやがって」


 3人はバチバチと火花を散らせる。


「あーあ、あたしだけ、抜け駆けエッチしようと思ったのにな~」


「そうは問屋が卸さないわよ」


「そうですよ」


「てかさ~、思ったんだけど。今日はこれで終わりとか、何か寂しくない?」


「えっ?」


 僕は目をパチクリとさせる。


「確かに、それもそうね。1度解散して、また明日ってのも……何だか、物足りない感じがするわね」


「じゃあ、いっそのこと、今日はこのまま、真尋くんのお家に泊まりますか?」


「へっ?」


 僕は冷や汗が垂れ始める。


「良いね~! じゃあ、みんなして徹夜で、明日のパーティーのために飾り付けをしちゃおっか~!」


「ね、ねえ、本当に飾り付けだけで終わるの?」


 僕が尋ねると、3人はジッと見つめて来て、ニコリと笑う。


「「「もちろん」」」


 うわ、これ絶対に信用できない笑顔だ。


「じゃあ、帰りに色々と買って帰ろうか。とりあえず、ゴムは10箱くらいあれば良いよね~?」


「そうね。もし無くなったら、ジャンケンで負けた人が追加で買いに行きましょう」


「ということは、その間は残った人が、そのままつけないで出来るチャンスですか?」


「おいおい、和沙たん。あんた、やっぱりこの中で1番、クレイジーな思想の持ち主だよ」


「まあ、もし子供が出来たら、きっちりと責任は取ってもらうけど。ていうか、先に子供が出来たら、今度こそ私が真尋の正妻ってことで」


「いいえ、わたしが1番に真尋くんの子供を身ごもります」


「なにお~! あたしが最初にまーくんの赤ちゃんを産むんだ~!」


「みんな、ちょっと落ち着いてよ!?」


 結局、僕のクリスマスは、まったりからほど遠い。




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