第53話 ハーレム王の貫禄!?

 小学生、中学生の頃にも、修学旅行は行ったけど、あまり楽しい思い出はなかった。


 昔から陰キャな僕は、ロクに友達がいなくて。


 ましてや、女の子とイチャイチャ楽しく、修学旅行を楽しむなんてこと、あり得なかったから……


「ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ……♡」


 いきなりで申し訳ないけど、僕は熱烈にキスをされていた。


「まーくん、修学旅行の時、本当にカッコ良かったよ。大好き、愛しているよ……んー、ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ♡」


 何かもう、食べられちゃいそうな勢いなんですけど……」


「こら、ゆかり。やり過ぎだし、もう時間よ」


 麗美ちゃんがそう言って、ゆかりちゃんをぐいと引っ張って、僕から引き離す。


「やだ~! もっともっと、まーくんとベロチューするの~!」


「お黙りなさい!」


「全く、ゆかりさんは普段の言動もキスもお下品ですね」


 和沙ちゃんも不満げな様子で言う。


 ちなみに、今は僕の家にいる。


 修学旅行を終えて、みんなそのまま僕の家に来たのだ。


 明日は学校が休みってこともあるけど……


「ね、ねえ、みんな。修学旅行でお疲れなんだし、今日くらいは自分の家でゆっくり休んだ方が良いんじゃないの?」


「良いのよ、真尋。今回は、修学旅行で私たちを楽しませてくれたお礼に……いっぱい、ご奉仕してあげるから」


「いや、僕はそんな大したことは……むぐっ!?」


「ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ」


 ゆかりちゃんよりは大人しいというか、大人びたキスをされる。


 麗美ちゃんは、キスをしながら、両手で僕の頬を押さえた。


「あはっ……真尋、好き……ずっとキスしていたい」


「れ、麗美ちゃん……」


 麗美ちゃんの温かい吐息が鼻先をくすぐって来る。


「ねえ、もっと……あんッ」


 今度は、麗美ちゃんが背後にぐっと引っ張られる。


「わたしの番です」


「ちょっと、和沙。もう少しくらい良いじゃない」


「すみません、わたしもう我慢できなくて」


 和沙ちゃんは、僕に寄り添って来た。


「真尋くん……キスしますね」


「か、和沙ちゃん……」


「ちゅっ」


 最初は遠慮がちに、けど……


「《ピーーーーーーーーーー!》」


 後からは、他の2人よりもエグかったので、規制が必要だ。


「ちょっと、和沙たん! さっき、あたしのこと下品とか言っておいて、自分の方がよっぽど下品じゃんかぁ!」


「そうよ、和沙! いつの間にそんなキステクを覚えたのよ!?」


「ふふふ、だから言ったでしょ? わたし、しっかりと勉強していますから」


「「ぐぬぬ……」」


 他の2人が悔しそうに唸る一方で、


「真尋くん、どうでしたか? 気持ち良かったですか?」


「いや、その……凄すぎて、ちょっとよく分からなくて……」


「じゃあ、もう1回……」


「「させるかぁ!」」


 ゆかりちゃんと麗美ちゃんが飛びかかって来た。


 そのせいで、4人でくんずほぐれつ状態になってしまう。


「この、この! そもそも、修学旅行でまーくんが『僕のだ!』って叫んだのは、あたしだけなんだからね!」


「それはたまたま、あなたがナンパされて助けたから、勢いで言っただけでしょうが!」


「そうですよ、自惚れないで下さい!」


「何だとおおおおおおおおおおぉ!?」


「ちょ、ちょっと、みんな! 落ち着いて……いてっ!?」


 ヒートアップする3人に、僕の声は届かない。


「「「むきゃああああああああああああぁ!!!」」」


 3人が生み出す、強烈な嵐からは、何とか脱出できたけど……


 このまま騒ぎ続けられると、ご近所さんに迷惑がかかってしまう。


 何とかして、僕が止めるしかない。


 あの荒れ狂う、3人を……


「……みんな、静かにして」


 当然、そんな弱っちい声では、届かない。


 ならば、仕方ない……僕は大きく息を吸った。


 そして――


「――おい、みんな静かにしろ!」


 いきなりの僕の大声に、3人はビクッと反応した。


 みんなして、おそるおそる、僕の方を見た。


 そんな彼女たちを、僕は睨み付けつつ……カチャカチャ、とベルトを外す。


「「「えっ?」」」


 戸惑う彼女たちの目の前で、ズボンを脱ぎ、さらには――パンツも脱ぎ捨てた。


「「「あっ……」」」


 当然ながら、露わになった僕のアレを見て、3人は目を丸くした。


「あまり悪い子でいると……これ、2度とあげないよ」


 自分で言っておきながら、すごく恥ずかしかった。


 けど、これもあの3人を止めるため。


 とは言え、ちゃんと効果があるのかな?


 所詮、僕は冴えない陰キャであることに、変わりはないのだから……


「「「……ご、ごめんなさい」」」


「えっ?」


 しかし、意外にも、3人は素直に謝って来た。


「あ~ん、まーくんさまぁ! ちゃんと良い子にするから、そのデカ◯◯コさま、ゆかりちゃんに下さい!」


「わ、私も……真尋……さま。もう、偉そうにしないから……その立派なの……下さい」


「真尋くん……許して下さい。もっといっぱい、真尋くんのために、勉強しますから……下さい」


 3人とも、僕の方にすり寄って来て、すがるように、懇願するように、そう言った。


「いや、えっと……」


 予想以上の従順さに驚きつつ、僕は……


「……じゃあ、みんな静かにね」


「「「はい♡」」」


 僕としては、全くそんなつもりは無いのに……気付けば、ハーレム王としての階段を着実に上っていた。





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