第48話 修学旅行で恒例の……だけど?

 ホテルの夕食はとても美味しかった。


 お風呂も広くて立派でずっと浸かっていたい。


 けど、大人数で時間制限があるから、そんなにのんびりも出来ない。


「うわ、お前チ◯コ、ちっちゃ!」


「うるせーよ! お前だって、大したことねーだろうが!」


「俺はどうよ?」


「くっ、意外とすげえな……」


 男子恒例の儀式が行われていた。


 修学旅行って感じだなぁ……


「なあ、綿貫のやつはどれくらいあるんだろうな?」


 えっ?


「あんな感じでも、意外とデカかったりして」


 ドキドキ……


「いやいや、無いだろ。陰キャのチビだし」


 ガーン!


「まあ、そっか」


 クラスの男子たちがワイワイ騒ぐのを、僕は湯船に浸かりながら黙って聞いている。


 まあ、良いんだけどね。


 もし、僕のアレの大きさに気付かれたら、あの3人との関係性も疑われちゃうかもしれないし。


 そうなったら、色々と面倒だ。


 所詮、僕みたいな陰キャは、バカにされているくらいがちょうど良い。


 そう自分に言い聞かせて、温かいお湯に浸かっていた。




      ◇




 修学旅行、恒例のイベント。


「おい、女子の部屋に行こうぜ」


「先生に見回りは?」


「大丈夫、チェック済みだ。行くぞ」


 同じ部屋の男子たちはみんな、勢い良く出て行く。


 もちろん、僕は誘われない。陰キャだし、どんくさいと思われたのだろう。


 まあ、良いけど……どの道、あの3人との約束で、浮気はしないってルールだし。


 たぶん、他の女子とちょっと絡んだだけで、浮気認定されちゃうだろうから。


 あの3人はたぶん、今ごろはお互いに相手を蹴落とし合う、熾烈しれつな戦いを繰り広げているだろうから。


 僕は1人で静かに、眠っていよう。


 ベッドに潜り込む、目を閉じようとした。


 その時、部屋のドアが開く。


 もしかして、先生に見つかりそうになって、戻って来たのかな?


 ちょっと、気まずいなぁ、と思っていたら……


「……お邪魔しまーす♡」


 顔を覗かせたのは、可愛い女子だった。


 可愛いは可愛いでも、ビッチの……


「……さ、桜田さん!?」


「やっほ~、綿貫きゅん。コハルちゃんだよ~♪」


 驚愕して起き上がる僕の下に、笑顔の桜田さんが近寄って来た。


「あれあれ~? 楽しい修学旅行の夜なのに、もう寝ちゃうの~?」


「いや、あの、どうして、ここに……?」


「今の時間なら、男子がみんな、女子の部屋に行っているだろうから。その隙を狙って、来たの。おかげで、綿貫くんと、2人きりになれたよ♡」


 僕は冷や汗がダラダラと垂れてしまう。


『浮気したら、おチ◯ポちょん切るから』


 サッと血の気が引く。


 自然と、股間を押さえてしまった。


「さ、桜田さん。今日はちょっと疲れたから、もう休みたくて……お願いだから、大人しく帰ってくれたりとか……」


「それは無理な相談だね♪ せっかく、ここまで来たのに」


 ですよね~……ヤバい。


「コハル~、こう見えて~、ビッチちゃんだから~」


 いや、見たままだよ!?


「今まで、いろんなチ◯コを見て来たけど……やっぱり、君のが1番すごそうだなって」


 桜田さんは、舌なめずりをする。


「だから、今度こそ……ちゃんと見せてよ? その大きな大きな、おチ◯ポを♡」


「お、落ち着こう、桜田さん。とりあえず、話し合おうよ。ねっ?」


「ムリムリ。あたし、こう見えてシャイだから。体でしかコミュニケーション出来ないの♡」


「絶対に嘘だ!」


 叫ぶ僕に対して、桜田さんは怪しい笑みを浮かべる。


「ぶっちゃけ、1人で3人の女の相手をするの、大変っしょ?」


「えっ?」


「きっと、コハルのおマ◯コの方が、あの3人よりもすごいから……これからは、あたしだけにゾッコンになろうよ♡」


 自信たっぷりな笑みを浮かべられる。


 僕はただ、迫り来るビッチを前に、震えるしかなかった。




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