第47話 ホテル内の罰ゲーム?

 修学旅行初日、大阪。


 たこ焼きでパーっと盛り上がった後は、大阪の街を観光して。


 その日の内に、京都へと移動して、そこのホテルに宿泊する運びとなった。


「ようこそ、お越しくださいました」


 京都弁ではないけれども、しっかりとその風味は感じられる。


 はんなり、上品な口調と佇まいだ。


「おほほ、あたしもお上品になっちゃいそうだわ」


 ゆかりちゃんが言う。


「じゃあ、このホテルにいる間は、下ネタ禁止よ?」


 麗美ちゃんが言う。


「それは良い提案ですね」


 和沙ちゃんも言う。


「オッケー、任せてよ」


 意外にも、ゆかりちゃんは素直に受け入れた。


「ちなみに、もし言ったらどうします?」


「そうね……じゃあ、次の班行動の時、真尋とイチャつけないってことで」


「えー、そんなのやだぁ!」


「でも、ちょうど良いんじゃないですか? どちらにせよ、クラスの男子たちに監視されて、真尋くんと思い切りイチャつけない訳ですし」


「うぅ~、そうだけど……ていうか、あたしばかり罰ゲームあるとかズルい。2人も何か禁止事項つくろうぜ~!」


「はぁ~、分かったわよ」


「じゃあ、麗美は女王様みたいな発言、禁止ね」


「うっ……ま、まあ、良いわよ」


「で、和沙たんはお勉強禁止ね」


「けど、修学旅行は、本来遊びではなく、勉強が目的で……」


「そっちの勉強じゃなくて……イケないスタディ♡」


 ゆかりちゃんはニヤつく。


「暇さえあれば、スマホでまーくんとのハ◯撮り見てるっしょ?」


「うっ……わ、分かりましたよ」


「じゃあ、今からスタートねぇ。あたしは下ネタ禁止、麗美は女王様モード禁止、和沙たんはエッチなお勉強禁止ね」


「分かったわ。まあ、ちょっとしゃくだけど、修学旅行だから、それくらい盛り上がらないとね」


「そうですね。これも楽しいイベントだと思いましょう」


 3人は頷き合っている。


「てか、まーくんはどうする?」


「えっ? 僕も?」


「当たり前でしょ~? まーくん、あたし達の……おっと、これはみんなには内緒だもんね」


 ゆかりちゃんは口を押える。


「どうしましょうね……そうだわ、浮気禁止とか、どうかしら?」


「えっ?」


「ああ、良いですね。ホテル内では、基本的に男女別れて行動するから、その心配はないでしょうけど」


「良かったね、まーくん。イージーなルールで」


「そ、そうだね……」


 ぎこちなく笑いつつ、僕は内心で冷や汗をかいていた。


 新幹線のトイレで襲撃された、桜田さんの顔を思い出してしまう。


 まあ、さっきも言った通り、ホテル内では基本的に食事とか以外は男女別の行動だから、大丈夫だとは思うけど……


「……んっ?」


 ふと、多くの生徒がゾロゾロ移動している中で、僕はとある女子と目が合った。


 僕を襲撃した桜田小春、その人だ。


 僕を見つけるなり、ニヤリと笑う。


 何か、人差し指と中指の間から、親指を出しているんだけど……あれ、モザイク案件かな?


「まーくん」


「えっ?」


 ゆかりちゃんに呼ばれて、ドキドキしたまま、ハッと振り向く。


「今晩、こっちの部屋に遊びに来る?」


「いや、それは……やめておくよ」


「もう、マジメなんだから~。じゃあ、明日の班行動まで、お別れだね」


「そ、そうだね」


「寂しさのあまり、あたしでオ◯るなよ♡」


「ぶぶー、はい、ゆかりマイナス1ポイント」


「げっ」


「これはもう、楽勝ですね」


「ぐぬぬ……あ、麗美さん。今日、疲れたでしょ?」


「えっ? まあ、そうね。慣れない移動が続いたから」


「じゃあ、あたしがマッサージしてあげようか?」


「あら、そう? どういう風の吹き回しか知らないけど……いつも私をバカにしてくれる分、たっぷりとコキ使ってあげるからね」


「はい、ぶぶーっ!」


「ハッ」


「麗美さん……」


「ぷぷぷ、いつも大人でかしこぶっているくせに、実はおつむ弱いのかな~?」


「ううぅ~、悔しい!」


「これはもう、わたしの1人勝ちですね。明日の班行動では、わたしが真尋くんを独占します」


「そうだ、和沙たん。これ、前に取ったまーくんの寝顔なんだけど……」


「えっ?」


 ゆかりちゃんがスマホを取り出すと、和沙ちゃんが食い入るように画面を見た。


「ま、真尋くん、可愛いです……あっ、唇、こんな風なんだ……」


「はい、アウト~♪」


「えぇっ? 何でですか?」


 珍しく、和沙ちゃんが慌てた声を出す。


「ハ◯撮りじゃなくとも、まーくんでエッチなスタディは禁止です♪」


「……なんて卑怯な」


「ちなみに、あたしのスマホに、まだまーくんの秘蔵コレクションがあるよ~? たぶん、和沙たんも知らない奴が、たくさん」


「わ、わたしの知らない、真尋くん……はぁ、はぁ」


「ま、まさか、1番問題ないと思っていた和沙が、1番ドベかもしれないわね」


 麗美ちゃんに指摘されて、和沙ちゃんは首を横に振って我に返る。


「わ、わたし、負けませんから」


「私だって、負けないから」


「あたしだって、負けないもん」


 3人はバチバチと睨み合う。


 良かった、ホテル内では別行動で……」


「ていうか、まーくんの罰ゲームはどうする?」


「えっ?」


「でも、真尋が浮気だなんて……あり得ないと思うわ」


「そうですよ。真尋くんは、そんなことしません」


「まあ、そうだね。じゃあ、万が一、浮気しちゃったら……チ◯ポちょん切るってことで良い?」


「そ、それは……」


「ああ、それは良いわね。この私に屈辱を与えるのだから、それくらいの罰は与えないと」


「れ、麗美ちゃん?」


「もしそうなったら、悲しいですけど……あっ、ちょん切ったあとの真尋くんのおチ◯ポ、わたしにくれますか?」


「和沙ちゃん!?」


「ていうか、今の流れで、あたしらみんなマイナス1ポイントずつだわ」


「「あっ」」


 3人はお互いに見合って、笑い合う。


「まっ、まーくんは浮気しないっしょ♪」


「ええ、そうね♪」


「問題なしです♪」


 3人が一緒になって笑っている。


 微笑ましい光景のはずなのに……


「んっ? まーくん、どったの?」


「あ、いや、その……修学旅行って、楽しいね」


「あら、真尋がそんなこと言うなんて、珍しいわね」


「ハシャぐ真尋くん、可愛いです」


「もう、まーくんったら。そんなこと言われると、勢い余っておチ……何でもナッシング!」


「…………」


 僕はふと、自分のムスコに視線を落とす。


 もしかしたら、この修学旅行で、お別れかもしれない。



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