第44話 まさかの襲撃者

 修学旅行、当日。


「わ~い、新幹線の椅子、ふかふか~♪」


「こら、ゆかり。あまりハシャがないの」


「良いじゃん。どうせ、周りもみんな学校の生徒なんだし」


「そうですね。今日くらいは、大目に見てあげましょう」


「お~、さすが、和沙たん。乳は小さいけど、器はデカい♪」


「……そうですね。私、どうやったら、巨乳になれるのか研究したいので。サンプルとして、ゆかりさんの乳房を切り落としても良いですか?」


「やだやだやだ~! 和沙たんの鬼畜サイエンティスト~!」


「あー、もう、うるさい」


 相変わらず、この3人は賑やかだ。


 そして、僕はそんな彼女たちと同じ班だから、すぐそばの座席に座っている。


「「「良いな~、綿貫のやつ」」」


 と、男子たちから羨ましげな目で見られるけど、僕としてはひたすらに心労がたまるばかりである。


「ねえねえ、何か棒状のお菓子ない?」


「何よ、いきなり?」


「いや、まーくんのチ◯ポしゃぶれないから、その代わりに」


「ゆかりちゃん? 発言には気を付けようね?」


「仕方ないじゃない。ここは、真尋のお家じゃないんだから……いっそのこと、思い切り溜めて、修学旅行明けに爆発させるのはどうかしら?」


「あれ? ドSの麗美さんらしからぬ提案ですな~?」


「誰がドSよ。私がドSになるのは、真尋に対してだけだから」


「やめてもらって良いですか?」


「んっ? 和沙たん、さっきからスマホばかり見て、まさかお勉強?」


「ええ、そうです」


 イヤホンをしながら、和沙ちゃんは頷く。


「真尋くんとのエッチの動画を見て、勉強しています」


「はい!?」


「え~! 和沙たん、抜け目なさすぎ~! てか、ハ◯撮りしてたの?」


「しまった、私もしておけば良かった……真尋の苦しげな顔をスマホに収めておけば、いつでもスッキリ出来るもの……いえ、返ってムラムラしちゃうかしら?」


 僕は席を立ち上がった。


「真尋くん、どうしました?」


「ちょっと、トイレに……」


 そう言って、僕は3人から逃げるようにしてその場を後にした。


 実際問題、逃げたのだけど。


「……はぁ~。先が思いやられる」


 あの3人は、ただでさえ注目されているのだから、あまり目立つような言動は控えて欲しい……


 そう内心で愚痴をこぼしながら、僕は個室トイレに入る。


 そんなお腹がピンチって訳じゃないけど、ひと息つきたいし。


 けど、他にも誰か利用するかもしれないから、そんなにのんびり出来ないかな……


「――失礼しまーす」


 ふいに声がして、えっと思ったら……個室に女子が入って来た。


 彼女は後ろ手に、カギを閉める。


「はっ? えっ?」


 当然、僕は困惑する。


 同じ学校の制服を着ているけど……面識がない女子だ。


「やっと、会えたね」


 ニコッとされる。


 可愛らしい子だけど、さすがにこの状況だと、恐怖を感じてしまう。


「あ、あの……」


「A組の綿貫真尋くん……だよね?」


「そ、そうだけど……」


「あたし、B組の桜田小春さくらだこはる! よろしくね」


「はぁ……いやいや、ていうか、何で……」


「ごめんね~、前から君のこと、ちょっと狙ってたから」


「へっ?」


「一見すると、大人しくて冴えない、3大美女と一緒にいるのも下僕だから……けど、本当は違うでしょ?」


 ドクン、と心臓が跳ねた。


 もちろん、可愛い女子と、個室トイレで2人きりになって、胸がトキめいている訳ではない。


「綿貫くん、背はちっちゃいけど……アレはおっきいよね?」


「な、何を言って……」


「分かるよ、だって……コハル、デカ◯ンハンターだから♪」


「何それ!?」


「てな訳で……3大美女も愛した、冴えない陰キャくんのデカ◯ン、いただきます♪」


 僕はムンクのような顔になった。




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