第43話 修学旅行がやって来る♪

 文化祭が無事に終わり、少しだけ寂しい雰囲気が漂いつつも……


「次は修学旅行だぜー!」


 次なるビッグイベントが迫っており、教室内は活気に満ちていた。


「てか、大事な自由行動の班決めだけど……」


 そう、4人で1組を作ることになっている。


 その班を決めるのは、とても楽しい時間だ。


 ちゃんと友達がいれば。


 つまり、僕みたいな冴えない陰キャにとっては、ひたすらに気まずい時間だ。


 まあ、適当にあまり者のグループで良いんだけどね……


「あ~、三大美女と同じ班になりたいわ~」


「いや、無理だろ。あの子たち、みんな彼氏持ちでガード堅いし」


「けど、この修学旅行でワンチャン……」


 とか囁き声が聞こえて来ると、僕としてはだいぶ気まずい。


 チラッと、相変わらず注目されている、彼女たちの方を見た。


「じゃあ、この3人は同じ班で決定ね~」


「ええ、そうね」


「あと1人は、どうしましょうか?」


 すると、男子たちの目がギラつく。


 もし、そのあと1枠に入れたら、みんな憧れの3大美女を一人占めできる。


「やっぱり、女だけだと不安だから、男手が欲しいわよね」


「うん、欲しい、欲しい~」


「確かに、そうですね」


 ぴくぴくっ、と男子たとの耳が反応する。


「実は、わたしはもう決めている人がいます」


「あら、奇遇ね、私もよ」


「はいはーい! あたしもだよ~!」


 ゴクリ、と男子たちの緊張感が一気に高まる。


 僕も別の意味で高まっていた。


 なぜなら……


「まーくん!」


「真尋」


「真尋くん」


 僕の名前が呼ばれると、男子たちの顔が一斉にぐりんと向けられた。


 冷や汗が止まらない。


「おい、また綿貫のやつ、3大美女からご指名だぜ」


「ズルくねーか?」


「まさか、やっぱり、あいつって……」


 ま、まずい。


 男子たちの眼光が鋭さを増し、僕の冷や汗がマックス状態になった時。


「まーくんは、あたし達にとって……」


「ええ」


「はい」


 ゴクリ。


「「「下僕だから」」」


 すると、


「「「「「「ですよね~!」」」」」」


 男子たちは、急にほっこりした顔になる。


 僕も深く安堵の息を漏らした。


「という訳で、まーくん! 一緒に自由行動しようね♪」


「荷物持ち、よろしくね」


「お世話になります」


「あ、はい……」


 僕は苦笑する。


「おい、綿貫」


「えっ?」


 男子たちがそばにやって来た。


「下僕とはいえ、お前がうらやましいよ」


「そうだよ。俺たちも、あの3大美女にコキ使われてーよ」


「踏みつけられたいぜ……はぁはぁ」


「いや、まあ……そんなに誇れるものでもないけど」


「でも、修学旅行は他校の男子もいるからな。絶対、彼女たちならナンパされるぞ」


「綿貫で守れるかなぁ?」


「いや、無理だろ」


 男子たちは、ひそひそと話し合っている。


「……よし、俺たちの3大美女は、絶対に守るぞ」


「この命にかけても」


「でも、普通に観光を楽しみたいぜ」


「まあ、そうだな~……じゃあ、交代制にするか」


「そうしよう」


 そんな風に言い合う彼らに、


「あの、もしかして……監視するの?」


「おい、綿貫。その言い方は、あまり良くないな」


「そうだよ。まるでストーカーみたいだろ?」


「じゃあ、なんて言えば……」


「ただ、温かく見守る……それだけのことだ」


「はぁ……」


 正直、ツッコミどころがありまくりだけど……まあ、黙っておこう。


 ていうか、彼らに監視されているとなると、いつもみたいにあの3人と変なこと出来ないな。


 まあ、僕としては一向に構わないんだけど、あの3人には伝えておかないと。


 僕は3人の下に向かう。


「よっ、まーくん♪ 一緒にどこに行くか決めよ♪」


「あの、その前に……クラスの男子たちが、3人がナンパされてひどい目に遭わないように、監視するとか言っているよ? だから、いつもみたいなノリで、僕と変なことは……」


「えっ、じゃあ、自由行動の時にまーくんのチ◯ポしゃぶれないの?」


「ちょっ、声がデカいよ!」


「えっ、おっぱいがデカい? ぼよよ~ん♪」


 ゆかりちゃんがご自慢の巨乳でアタックして来た。


「まあ、クラスの男子に監視されているのは面倒だけど……それはそれで、面白いじゃない」


「えっ?」


「そうですね。マンネリ化を避けるためにも、たまには新しい刺激を受け入れましょう」


「と、言うと?」


「私たちの関係を悟られないように、かつイチャつく」


「それって難しくない?」


「大丈夫よ。とりあえず、地べたに這う真尋を私が踏みつけておけば」


「それのどこがイチャつきなの!?」


「えっ、真尋ってドMだから、ご褒美でしょ?」


「出たよ、これだから鬼畜な女王様は」


「何よ、乳だけの下ネタ女は黙っていなさい」


 いつもみたいに、ゆかりちゃんと麗美ちゃんが睨み合う。


「あ、そうだ」


「和沙ちゃん、どうしたの?」


「わたしたちに《ピーーーー!》を仕込んで、《ピーーーー!》して《ピーーーー!》すれば、バレずにイチャつけますよ」


「和沙ちゃん、僕らは高校生だから、やめておこうね」


「……そうですね。親名義のクレジットで、大人のアレを買う訳にも行きませんしね」


「え~、あたし、リモコンプレイしてみたかったな~……ブルブルブルって♪」


「私、操作されるんじゃなくて、する側が良いのだけど」


「あの、だから、それはボツ案だって言ったよね?」


 こうして、僕の修学旅行の難易度が勝手に上がった。




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