第39話 良き提案

 前回は、揉めるだけで終わった文化祭のクラス出し物の話し合い。


 けど、今回は明確に進展があった。


 と言うのも……


「演劇なんてどうかしら?」


 麗美ちゃんが提案してくれたからである。


「メイド喫茶だと、どうしてもお触りが気になっちゃうでしょ? でも、演劇ならその心配もないし」


 微笑み麗美ちゃんを見て、


「「「おぉ~!」」」


 みんな感心したように声を漏らす。


「じゃあ、我がクラスが誇る三大美女さまの力を、存分に発揮できるということだな!」


「上がるぜ~!」


「てか、なんの劇やんの~?」


 クラス内が一気に活気づく。


「原作ありでも良いけど、オリジナルが出来たら楽しいわよね」


「オリジナル……はいはーい! あたし、良いストーリー考えちゃった!」


 ゆかりちゃんが元気良く手を上げる。


「物語は中世ヨーロッパ風のファンタジー世界で、あたしが貧しい平民の娘。そして、そんなあたしを日々虐げる悪役令嬢が、麗美さんです」


「ちょっと、待ちなさい、ゴミ脚本家さん」


 麗美ちゃんが笑顔のままこめかみに青筋を浮かべて言う。


「誰がゴミだ! ゴミなのは、お前の人間性だ~!」


 ゆかりちゃんはいつものノリではっちゃけて言うけど、麗美ちゃんの怒りのオーラが凄まじいから勘弁して欲しい。


「ていうか、ヒロインがいれば主人公がいるだろ? 誰がやるんだ?」


「俺やりて~! ゆかりちゃんとイチャラブしつつ、麗美さまにこき下ろされて~!」


「あ、和沙ちゃんは何の役やるの~?」


 また一層、教室内が騒がしくなる。


「みなさん、お静かに!」


 実行委員の女子が注意するけど、男子たちがやかましいまま。


「いや、あたし彼氏いるから、男が相手の演劇とか無理だし」


「私も同じく」


「わたしも、遠慮したいです」


 3人が口々に言うと、


「「「「「「ガーン!」」」」」」


 男子たちは一斉にノックアウトされた。


 ちなみに、また3人が僕に意味ありげな視線を送って来るけど、必死に目を背けた。


「仕方ないわね。こうなったらいっそのこと、この3人の中で主人公とヒロイン、それから悪役を決めちゃう?」


「おー、それ良いね! じゃあ、あたしがヒロインで、和沙たんが主人公で、麗美さんが悪役ね~!」


「勝手に決めないでちょうだい!」


 また2人がケンカして騒がしくなろうとする。


「あ、だったら、わたしが悪役をやりますよ」


「えっ? 和沙たんマジ?」


「良いの、和沙?」


「はい。傍から見ていて、お2人はケンカップルでお似合いなので」


「いやいや、本当に仲が悪いだけだから」


「あ~ら、あなたに言われる筋合いはないわよ」


「ほら、息がピッタリ」


「「うっ」」


「自分で言うのもなんですが、わたしずっとマジメな優等生だったので。たまには、悪い子になってみたいんです」


「え~、和沙たん、ベッドの上ではちゃんと悪い子……」


「あ、手が滑ってゆかりさんにコンパスを投げてしまいました~!」


 ヒュッ!


「ひえっ!? こ、この野郎ぉ~!」


「和沙、本番の劇でもその調子でこのクソビッチ……ヒロインさんを狙ってちょうだい」


「了解しました」


「いや、守れよ! 麗美、主人公やるなら、あたしを守れよ~! この腹黒女が!」


 何だか、また騒がしくなって来たなぁ……


「はいはい、お静かに! じゃあ、その方向で行きましょう。反対意見がある方、いますか?」


「「「「「「異議なーし!」」」」」」


 クラスメイトみんなが声を揃えて言う。


「うふふ、文化祭が楽しみだわ」


「あはは、あたしも楽しみだよ」


「わたしも今から腕が鳴ります……ひひひ」


「うわ、今の魔女っぽい。和沙たん、もう役作り? だったら、あたしも……うっふ~ん、まーく……むぐぐ!?」


「おほほ、声も乳もデカい、困ったちゃんですね~」


 麗美ちゃんに口を押えられたまま、ゆかりちゃんはジタバタとする。


 その際、指摘された大きな胸がブルンブルンと揺れて、男子たちが一気にボルテージを上げていた。


「……よし、もし次にムカついたら、あの巨大な乳房を切り落としましょう」


 和沙ちゃん、そのあくどいセリフは本心ではなく、役作りだと信じても良いですか?




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