第35話 嫁力選手権④

「真尋、久しぶりにお仕置きしてあげる」


 麗美ちゃんが女王様モードに入ってしまいました。


 僕は冷や汗を流しつつ、父さんの様子を伺います。


「……って、あれ? いない?」


 この事態を生み出した張本人が消えていました。


 さすがの僕も殺意が湧いて来るな。


「真尋」


 両手でグイ、と顔を向けられる。


「あ、はい……」


「お仕置きタイムよ」


 マジか……一体、僕はこれからどんな目に遭わされるんだろうか……


 この調子だと、足を舐めろとか言われてもおかしくないぞ。


「じゃあ、足を……」


「な、舐めればよろしいですか?」


「は? そんなことさせないわよ」


「へっ?」


 麗美ちゃんはソファーに腰を下ろして、足を差し出す。


「揉んで♡」


「あっ……マ、マッサージですか?」


「そう。ここ最近、真尋に揉んでもらっていなかったから」


「そ、それで許してくれるの?」


「主婦はいつも疲れているから、これでも大助かりよ……って、まだ主婦じゃないけど」


 麗美ちゃんはちろっと舌を出して言う。


「あ、靴下は履いたままにしておく?」


「え、生足が良いの?」


「い、いえ、麗美さまの仰せのままに」


「ちょっと、やめてよ。今の私とあなたは、夫婦関係よ?」


「そ、そうだね」


 麗美ちゃんがかもし出す何とも言えない良い女オーラに当てられて、うっかり気を失ってしまいそうだ。


 けど、そんなことになったら、今度こそキツいお仕置きを受けてしまうかもしれない。


 だから、僕はしっかりと意識を保ちながら、麗美ちゃんの足を揉む。


「んっ、あっ……気持ち良いわ、真尋」


「そ、そう? とりあえず、足の裏を揉めば良いかな?」


「ええ。足つぼマッサージでも良いわよ?」


「いや、そんな技能は無いので……ていうか、後で復讐が怖いし」


「んっ?」


「いえ、何でも」


 とりあえず僕は、とても気を遣いながら、麗美ちゃんの足をマッサージして行く。


「あぁ~、そこそこ。グッと押してみて」


「こ、こう?」


「あぁ~、気持ち良いわ~」


 麗美ちゃんは言う。


「でも、アレだよね」


「んっ?」


「こんなこと言ったら、怒られるかもしれないけど……麗美ちゃんって、本当に脚がきれいだよね」


「ありがとう。でも、真尋はゆかりの巨乳の方が好きなんでしょ?」


「いや、何と言いますか……どっちとも、甲乙つけがたい魅力があると言いますか……」


「まあ、真尋はハーレムの主だものね。どっちも好きにすれば?」


「そ、そんな図々しいことは……」


「ていうか、あなたとお父さまって本当に性格が真逆ね」


「うん。僕は母さん似だから」


「でも、アソコだけはお父さま似なんでしょ?」


「うぅ~、恥ずかしい」


「でも、そのギャップが良いんじゃない。小柄で可愛らしいのに、アソコだけ立派だなんて……ロリ巨乳みたいなギャップ萌えかしら。ゆかりみたいに」


「あはは、そんな可愛いものかな……」


「う~ん、そう考えると、何だか真尋とゆかりの方がお似合いに思えて来たわね。和沙に関しては、真尋に処女を捧げているし……私も、何かアドバンテージが欲しいわ」


「あ、アドバンテージと言うか……」


「んっ?」


「僕が童貞を卒業したのは、麗美ちゃんだから」


「あっ……そういえば、そうだったわね。真尋はすっかりヤリ◯ンくんになってしまったから。うっかり、この間まで童貞くんだったこと、忘れていたわ」


「ま、まあ、麗美ちゃんが導いてくれたと言うか……」


「何よ、真尋がエッチしまくり君になったのは、私のせいだって言いたいの?」


「そ、そんなことは言わないけど……」


「罰として、ふくらはぎとかふとももとか、脚全体を揉みなさい」


「あ、はい」


 言われた通り、僕は麗美ちゃんのふくらはぎに触れる。


 白くほっそりしているけど、内側にしなやかな筋肉がしっかりとある。


「あっ、そこ……グッと押して」


「こうかな?」


「んあッ、きくッ……そのまま、グリグリして」


「グ、グリグリですか?」


「親指を中心に……」


「え、えいっ」


「ああああああああああああぁん!」


「れ、麗美ちゃん、声が大きいよ」


「だって、真尋が上手だから……それに久しぶりだったし♡」


「ご近所さんに聞かれたら、誤解されちゃうから」


「ていうか、それは今さらでしょ。もうこの家で、散々みんなとエッチしまくりじゃない」


「うぅ、確かに……近所のおばさんにも『お父さん、帰って来たの?』って言われていたし。まさか、僕みたいな冴えない奴がこんな可愛い子たちとエッチしまくりだなんて、想像もできないみたいで」


「あら、好都合じゃない。そうやって、真尋のギャップ萌えは生まれて行くのよ」


「はぁ……麗美ちゃんは、ギャップ萌えとかある?」


「真尋はどう思う?」


「え~、そうだなぁ……でも、麗美ちゃんはいつも大人っぽいから、たまには甘える姿とか見たいかも」


「真尋ぉ~、麗美のことナデナデちて~?」


「一気に甘えん坊になったね」


「何よ、悪いの?」


「いや、やっぱり……麗美ちゃんはいつも通りが良いなって」


「じゃあ、いつもみたいにたっぷりといじめてあげようかしら?」


「ほ、ほどほどにお願いします」


「ふふ、可愛い真尋ね」


 その後、僕はもう少しだけ、麗美ちゃんにマッサージをしていた。




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