第34話 嫁力選手権③

「ねえ、父さん」


「何だ、息子よ?」


「もう、こんなバカげた選手権とか、やめない?」


「え~、俺すっごく楽しいのに」


「いや、知らないし。そもそも、父さんが変にもったいぶって、こんなおかしな企画を始めるから僕は……」


「でも、楽しいだろ? いつもハーレムでわちゃわちゃするよりも、たまにはマンツーマンでとか」


「まあ、マンツーマンなら、割とよくやっているけど」


「うわ、お前……よくぞ俺の血を受け継ぐヤリ◯ンに育ったな」


「全くもって嬉しくないよ」


 僕はため息を漏らす。



 ピンポーン。



「おっ、噂をすれば、今日の嫁さんだぜ」


「父さん、頼むからあまりハシャがないでよ」


「何だよ、イケてる俺に嫁さんを取られるのが怖いのか?」


「はぁ~、僕は母さん似で良かったよ」


「チ◯コは俺似だけどな」


「口が減らない……」


 僕はまたため息を吐きながら、玄関へと向かう。


「……あっ」


 優雅な立ち姿の美少女がそこにいた。


 日除けのお嬢様帽子がまたよく似合っている。


「来ちゃった」


 小さく舌を出して言う。


「麗美ちゃん、いらっしゃい」


 僕は彼女を招き入れる。


「おっ、やっぱりべっぴん度合は麗美ちゃんが1番だね~」


 玄関先までノコノコとやって来た父さんが言う。


「おじさま、こんにちは」


「あはは、お父さまって呼んでくれても良いんだよ?」


「うふふ、そうですね。じゃあ、今日だけはそう呼びます……お父さま♪」


「おほほ」


「麗美ちゃん、父さんをあまり調子に乗せないで」


「あら、真尋。もしかして、嫉妬?」


「いや、そう言う訳じゃ……ほら、父親のみっともない姿とか見ていられないからさ」


「それもそうね」


 麗美ちゃんはくすりと笑う。


「じゃあ、お掃除から始めましょうか」


「あ、うん。掃除機はこっちだよ」


「ありがとう」




      ◇




 昨日のゆかりちゃんは豪快に掃除をしていたけど。


「ふんふふ~ん♪」


 麗美ちゃんは優雅な所作で掃除を進めて行く。


 僕はついつい、そんな彼女に見惚れてしまう。


「良いね~、あの脚。惚れ惚れしちまう」


 そして、エロオヤジさんもまた然り。


「父さん、あまり麗美ちゃんにセクハラ行為をしないで」


「何だよ、やっぱ嫉妬か?」



「それは否定しないけど……麗美ちゃん、ああ見えて怒らせると怖いから」


「どんなふうに?」


「女王様みたいになる」


「へぇ~、最高じゃん。じゃあ、お尻タッチして怒らせてみるか」


「だから、やめろって」


 僕と父さんが言い合いをしていると、


「ちょっと、そこ。親子2人で固まっていると邪魔よ」


 麗美ちゃんが軽く頬を膨らまして言う。


「あ、ごめん」


「バカ、真尋。ここで亭主関白っぷりを発揮して、麗美ちゃんを挑発しろよ」


「いや、無理だから」


「さっきから、2人で何をコソコソ話しているの?」


 麗美ちゃんが怪訝けげんそうに目を細めて言う。


「な、何でもないよ? ねえ、父さん?」


 僕が同意を求めるけど、父さんは返事をしてくれない。


「……ダメだ、もうムラムラが止まらねえ」


「はっ?」


 次の瞬間、


「俺、行っきまーす!」


 父さんは勢い良くピョーン!と飛んだ。


 麗美ちゃんのきれいな脚に目がけて。


「わっ、バカ!」


 僕は父さんの脚に飛びついて、必死に止めた。


「「うわぁ!?」」


 親子そろって派手にダイビングしてしまう。


 テーブルとソファーをぶっ飛ばしてしまった。


「アイテテ……」


 僕は呻きながら体を起こした。


「全く、父さんのせいで……」


 その時、


「……真尋、何をしているの?」


 ヒヤリとするような声に、僕はギクリとする。


 恐る恐る目を向けると、麗美ちゃんが笑顔で半ギレしていた。


 いや、もう既にマジギレ、激おこかも。


「ち、違うんだ。父さんが麗美ちゃんにセクハラしようとしたから止めて……」


「子の不始末は親が責任を取るもの。ならば、逆もまたしかりよね?」


「へっ? いやいや、そんなこと言われても……」


 ダンッ!


 麗美ちゃんは倒れたソファーに足を置く。


 確かに、間近で見るとますますきれいだ、麗美ちゃんの脚は……じゃなくて。


「真尋」


「あ、はい」


「久しぶりに……お仕置きしてあげる」


 ニコリと微笑んで言う麗美ちゃんを前に、僕は言葉を失った。




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