第31話 陰キャな僕は、陽キャな父に嫉妬してしまう?

 優雅でいて波乱だった別荘暮らしが終わり、僕は久しぶりに我が家に帰って来た。


 さて、くつろごうと思ったけど……


「まーく~ん。クーラーの温度、もっと下げてよ~」


「えぇ、あまり寒すぎると、お肌に悪いからこれくらいで良いわ」


「夏場はむしろ、冷房のせいで低体温症になりやすいですからね」


 夏休みになっても、相変わらずというか、この3人は僕の家を溜まり場にしていた。


 もちろん、彼女たちのことは決して嫌いじゃなく、むしろ好きだけど。


 それでも、別荘暮らしであんなに色々とあって、エッチもたくさんしたから。


 夏休みのひと時くらいは、僕に1人の時間をくれて欲しかった。


「まーくん、ボケッとしてないで、ジュースちょうだいよ~」


「私は常温水ね」


「わたしはアイスティーで」


 相変わらず、コキ使ってくれちゃって」


「はいはい、分かりましたよ……」


 投げやりと言うか、あきらめと言うか。


 僕は肩を落としながら、言われた飲み物を取りに行こうとした。


 その時、ガチャリ、と。


 玄関ドアが開く音がした。


「えっ?」


 僕は驚いてそちらの方に顔を向ける。


「――おーい、真尋ぉ~! 帰ったぞぉ~!」


 その声は、ちゃんと聞き覚えのある声だった。


「と、父さん!?」


「「「えっ?」」」


 僕の声に、彼女たちも目を丸くする。


 慌てて廊下に出て、玄関先へと向かう。


 そこには、僕の両親が立っていた。


「ど、どうして……?」


「いやぁ~、夏休みをもらったからさ。一時帰国をしたんだよ」


 父さんは言う。


「そ、それなら、一言くらい連絡をしてくれても……」


「ワッハッハ、悪い、悪い。けど、お前も久しぶりに俺たちに会えて、嬉しいだろ?」


「真尋、元気にしていた?」


「あ、うん。父さんも、母さんも、元気そうで何よりだよ」


 僕は苦笑しながら言う。


「ていうか、靴が多いけど。誰か来てんのか?」


「あ、えっと……」


 まさか、親が居ぬ間にハーレムを作ってましたなんて、ぶっ飛ばされるかもしれない。


 大人しい陰キャな僕と違って、父さんは活発な陽キャさんだから。


「じ、実は……」


 バタン!


 勢い良く、リビングの扉が開いた。


「えっ?」


 僕がギョッとして振り向くと。


「「「こんにちはぁ~!」」」


 3人娘が、タッタと駆け寄って来た。


「初めまして、まーくんの彼女の前島まえしまゆかりちゃんで~す☆」


「初めまして、私こそが真尋の正式な彼女、市野沢麗美いちのさわれいみです」


「初めまして、いつも真尋くんにはお世話になっています……色々と」


 なぜか堂々と、僕の両親にあいさつをしていた。


 何か、いつも以上に目を輝かせて、愛想よく。


 さっきまでのグダりっぷりが嘘のように。


 もしかして、みんな……アピールしてらっしゃる?


「え~、マジかよ~? 真尋、お前……いつまでも大人しい童貞野郎で心配だったけど、やるじゃんか。まさか、親が居ぬまにハーレムを作っちまうなんてよ~」


 父さんがニヤつきながら、肘で僕の小脇を突いてくる。


「いや、その……成り行きでというか……」


「ていうか、もうこの子たちとはエッチしたのか?」


「えっと、その……」


「はいは~い! もう、バンバンにヤリまくりで~す!」


「ゆかりちゃん!?」


「うわ、このこパイオツでけぇな~。もう、この子で良くね?」


「本当ですか~? あたし、超うれぴ~♪」


「いやいや、父さん。何を言って……」


「お父さま。肩に糸くずがついていらっしゃいます」


「んっ? おお、ありがとう……君、めっちゃ美人だね」


「はい。一応、モデルをしていますので」


「へぇ~。じゃあ、この子で良いじゃん」


「ありがとうございます♪」


「だから、父さん……」


「お父さん。真尋くんの将来は、わたしにお任せください。わたしと一緒に、必ずT大に行ってもらうので」


「T大ってマジで!? じゃあ、この子に決定だな~」


「父さん、いい加減にしてくれ!」


「アッハハ、そう怒るなって」


 愉快そうに笑う父さん。


 僕は辟易へきえきとしつつ、彼女たちが気を悪くしていないか不安になって、顔色を伺う。


 すると、なぜか3人とも、目線を下げて同じ一点を見つめていた。


「えっ、みんなどうしたの……ハッ!?」


 何と、みんなの視線の先にあったのは……


 デデーン!……と。


 具体的には言えない、というか言いたくもないんだけど。


 父さんのアレが……なぜかとても元気になっていた。


「す、すごっ……まーくんのデカ◯◯ポって、パパからの遺伝だったんだ……」


「い、いけない、真尋以外のモノを見つめるなんて……」


「将来的には、真尋くんはさらにあそこまで成長を……」


 3人のいたいけなJKの目線を釘付けにした罰だろうか、


「アイテテテテテ!?」


「あなた、いい加減にして下さい」


 母さんが笑顔を浮かべながらもこめかみのピキらせて、父さんのほっぺを思い切り引っ張っていた。


「じゃあ、このいきり立ったコイツを、沈めてくれよ」


「だから、もう……はぁ~、仕方ないわね」


「んじゃ、真尋。ちょっと荷物を頼むわ」


「えっ?」


「いくら俺が無神経でも、さすがに息子の彼女たちが居る所で、ギシアン出来ねえからよ。ちょっくら、ワイフとホテルにしけこんで来るわ」


「ワイフって……外国かぶれしちゃって」


「つーか、お前らもこれからセッ◯◯するんだろ? 遠慮はいらんぞ~」


「父さん、いい加減にしてくれ!」


「ワハハ! では諸君、また会おう」


 父さんはご機嫌に笑いながら、母さんと一緒にまた出掛けて行った。


 バタン、とドアが閉じる。


「……はぁ~~~~」


 僕は一週間分くらいのため息を吐いた。


 何が悲しくて、親と一緒に猥談わいだんじみたことをしないといけないんだ。


「まーくんのパパ、すごかったね……おチ◯◯コとか」


「ええ、本当に。真尋も立派だけど、やっぱり大人な分、一枚上手な感じ」


「麗美ぃ、それ何かエロマンガのNTRヒロインみたいなセリフだぞ~?」


「わ、私は真尋一筋だから」


「ふふ、やっぱりお2人はビッチですね。わたしこそが、真尋くんだけしか知らない、汚れなき乙女なのです」


「ったく、いつまで処女アピールしてんだよ、このメガネっ子は」


「そうよ、和沙こそ、さっき真尋のお父さまのご立派様に見惚れていたじゃない」


「そ、それは……ちょっと、驚いただけです」


 何だか、僕をよそに勝手に女子たちが盛り上がっている。


 確かに、父さんは僕なんかよりも大人で魅力的な人間だけど……


 珍しく、少し嫉妬の感情が芽生える。


「「「……あっ」」」


 今度は、3人の視線を僕が集めた。


「うわ、すっご。やっぱり、親子だね~♪」


「もう、真尋の負けず嫌いさん♡」


「何だかんだ、男の子ですね」


 その後、結局は……


「やっぱり、まーくん最高ぉ~!」


「素敵よ、真尋ぉ~!」


「もう、真尋くんだけです……!」


 みんな仲良くする形となりました。




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