第30話 ドアの隙間から……本格的に覗いちゃう?

「じゃあ……もっとアピールしても良いですか?」


 そう言いつつ、和沙ちゃんはパジャマのボタンに指をかけた。


 ぷち、ぷち、と外して行く。


「ちょ、ちょっと待って」


「どうしましたか? まさか、この期に及んで怖気づきましたか? 今まで散々、わたしのことをそのご立派さまでイジめて来たくせに」


「いや、イジめたっていうか……あのさ、やっぱり他の2人に聞かせるようにやるのは、恥ずかしいと言うか……」


「それこそ、今さらじゃないですか。今まで散々、あの2人ともエッチをして来たくせに……」


 和沙ちゃんが少し怒ったような口調で言うので、僕はたじろぐ。


「そ、それは……仕方がないことって言うか……」


「まあ、そうですもんね。真尋くんは、ハーレム王ですもんね」


「そ、その呼ばれ方は、恥ずかしいんだけども……」


「けど、決して悪い気分ではないでしょう? 美少女ばかりはべらして」


「そ、それは……」


「あ、ごめんなさい。わたしは所詮、他の2人には及びませんけど」


 和沙ちゃんは本気で自信なさげに、顔をうつむけて言う。


「いや、何を言っているのさ。和沙ちゃんは、決してあの2人に引けを取らないよ」


「本当ですか?」


「うん。ほら、その、エッチだって、段々と上手になって来て……」


「ふふ、真尋くんはエッチさんですね」


「あ、ごめん……でも、本当のことだから」


 僕はつい照れ笑いをしてしまう。


 和沙ちゃんも、同様に笑ってくれた。


 自然と、お互いに顔が近くなっていた。


 口づけを交わす。


 口の中に甘さが広がると同時に、照れる気持ちは不思議と溶けて無くなって行った。




      ◇




 最初は冷やかしというか、野次馬というか、何ならとっちめてやろうというつもりで覗いていたけど。


 今ではすっかり、見入ってしまっていた。


 彼氏と親友のエッチに……


(か、和沙ってば、いつの間にか、あんなにキスが上手になって……)


 真尋は真尋で、どんどん経験値を積んで行くし。


 それは自分にとっても喜ばしいことなんだけど、何だかムカついてしまう。


(あー、もう。私だって、真尋とキスしたいのに……)


 目の前で見せつけられて、悶々としていた時。


 ピロン♪


 スマホが音を立てた。


「んっ?」


 麗美は届いたメッセを確認すると……


「……あっ」



『何か、メッチャ見せつけられて、ムラムラして来ない?』



 ゆかりからのメッセだった。


 あまりにもいつも通りだったので、麗美はうっかり自分たちがケンカしていることを忘れてしまう。


『ええ、とてもムラムラして来るわね』


『だったらさ……突撃しちゃう?』


『……しちゃいましょう』


 麗美は口元でほくそ笑むと、数秒後にドアを開け放つ。


 目の前には、まだ本格的にくんずほぐれつる前の真尋と和沙。


 そして、隣に目を向けると、ゆかりがニカッと笑っていた。


「こら~! まーくん! 和沙たん! あたしらも混ぜろよ~!」


 ゆかりは一切ためらうことなく、2人に対して突撃して行く。


「わ、分かったから、落ち着いて」


「……ちっ」


「あー! 和沙たんが舌打ちしたぁ!」


 騒ぎ立てる彼女を見て、


「ゆかり。いくら周りに他のお家が無いからって、夜はもう少しだけ静かにしなさい」


「はいはい」







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