第28話 太陽同士

 テーブルの上に並ぶのは、カレーとサラダ、それにパンも用意されている。


 他にも数品、おかずが食卓を彩ってくれる。


「いっただきまーす!」


 4人いる中で、元気にそう言うのはゆかりちゃんだけだ。


 他の3人は大人しいと言うか……とりあえず、僕は先ほど枯れるまでしこたま抜かれて元気がない訳だけど。


 麗美ちゃんと和沙ちゃんが疲れているのは、夕飯の支度で忙しかったせいだろうか?


 心なしか頬が上気して、ソワソワモジモジと落ち着かない感じだ。


 そんな僕たちをよそに……


「あーん……」


 パクッと、ゆかりちゃんはカレーを頬張る。


「……う~ん、おいし~い!」


 正にほっぺがとろけると言った具合か。


 手を添えながら、満面の笑みを浮かべている。


「って、あれ? みんなどったの? せっかくの夕飯タイムなのに、何かテンション低くな~い?」


 ゆかりちゃんは何も悪気ないように言うけど……


「……良いわよね、あなたは。さっきまで、真尋と思う存分シていたおかげで、1人だけそんな風にお肌がツヤッツヤで。実に良いご身分だこと」


「はぁ~? 何よ、その嫌味な言い方は。麗美が夕飯前にあたしがまーくんとパ◯りまくって良いって言ったんでしょうが」


「そうだけど、そうだけども……あ~、ムカつく~!」


「何よ、いきなりそんな風に言われて、こっちの方がムカつくよ! せっかく、気分良く夕飯を食べていたのに!」


 ゆかりちゃんと麗美ちゃんが睨み合う。


 いつものように、他愛もないケンカではないことが、僕には肌で分かった。


 賢い和沙ちゃんも、当然このまずい空気を察知しているようで……


「2人とも、落ち着いて下さい。無意味なケンカはやめましょう」


「無意味ってことはないわよ、和沙。今この機会に、このワガママ女の性根を叩き直してやろうじゃないの」


「いやいや、ワガママなのはそっちの方でしょうが。この裸の女王様め!」


「誰が裸の女王様よ! このホルスタイン! 無駄乳!」


「無駄じゃないも~ん! この乳で、まーくんのお◯◯ぽこを何度も気持ち良くしてあげているも~ん! ねぇ~、まーくん?」


 って、ここで僕に振るのか!?


「どうなの、真尋? このホルスタインの脂肪ごときで、気持ち良くなっちゃっているの?」


 麗美ちゃんが、正に女王様みたいに僕をアゴで見下しながら、問いかけて来る。


「まーくん、ハッキリ言ってやりなよ。あたしのパ◯◯リは死ぬほど気持ちが良いってさ~!」


 な、何だこの恐怖のサンドイッチ状態はぁ!


 僕はしずかに、ゆっくりと夕食を味わいたかったのに……カレー美味しそうだし。


「ふん、だ! もう良いよ! 腐った女王様の顔なんて見たくないです~!」


「こっちこそ、腐ったミルク垂れ流しているホルスタインに用はないわ!」


「ふ、2人とも、本当に落ち着いて……」


 僕が尚も仲裁しようとすると、和沙ちゃんが手を掴んで制した。


 振り向くと、小さく首を横に振る。


「やはり、ゆかりさんと麗美さんは同じ太陽同士、どうしてもぶつかってしまうみたいです」


「えっ?」


「真尋くん、ここはしばらく黙って、2人の様子を見守っておきましょう」


 和沙ちゃんに助言されて、僕は改めて2人の顔を見た。


 両者ともに、互いを見ようとせず、そっぽを向いている。


「「ふん!」」


 2人の怒りはヒートアップする一方で、場の空気は冷えて行く。


 そして、テーブルの上のカレーもすっかり冷めていた。







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