第27話 夜まで待てない

 海で散々いっぱい遊んだ僕たちは、ここに来る前よりも日焼けした状態で別荘に戻った。


「やだ、ちょっと焼け過ぎちゃったわ」


「良いじゃん、健康的で」


「あなたはギャルだから良いけど、私は清楚モデルだから」


「はぁ? 清楚ぉ? いつも、まーくんのお◯◯ぽこのことしか考えてないくせに~!」


「はい、ゆかりは今日の晩ご飯抜きね」


「やだ~! まーくんを抜くのは好きだけど~!」


「はんッ、このクソビッチが」


「わたしに言わせれば、お2人ともクソビッチですよ。それに比べて、わたしは……」


「和沙たん、いい加減その『処女を捧げました』一点張りじゃキツいよ?」


「うっ……」


「もっとさ~、和沙たんならではのウリを見出していかないと~」


「全く、偉そうに。あなたなんて、所詮は乳がデカいだけじゃない」


「麗美はもっとがんばりな~?」


「ちっ」


 麗美ちゃんは、黒々とした顔で自分の乳を揉みながら、ゆかりちゃんを睨む。


「……18・2」


「んっ? どしたの、和沙たん急に?」


 ゆかりちゃんが聞き返す。


「12・5、15・6、18.2……20.8」


「だから、何の暗号だよ~!」


 ゆかりちゃんが喚く一方で、麗美ちゃんは口元に指先を添えて思案顔になる。


 そして、ハッとした顔になった。


「ま、まさか、それって……」


 気づいた様子の麗美ちゃんを見て、和沙ちゃんはニヤリとする。


「平常時、半パワー、フルパワー、フルパワー(絶好調時)……です」


 キメ顔で言う和沙ちゃんを見て、ゆかりちゃんは「んん?」と首をかしげていたけど、遅れることしばし……


「……まーくんのお◯◯ぽこのサイズかぁ!」


「正解です。わたし、気になっていたので。ちゃんと計らせてもらったんです」


「和沙たん、何て緻密な……ガリ勉エロスとでも呼ぼうか」


「ガリ勉エロス……ふっ、悪くないですね」


 和沙ちゃんは、レンズが光るメガネをくいと押し上げる。


 最初は他の2人よりも大人しかった分、何だか覚醒具合がすごいなぁ、和沙ちゃんは……


「あ~、やば。エロトークしていたら、何だか我慢できなくなって来たよ~」


 ゆかりちゃんが、ギラつく目で僕を見た。


 ギクリとする。


「こら、これから夕飯の支度をするのよ?」


「夕飯も良いけどさ~……もっと美味しい、特大のフランクフルトが欲しいの~!」


「平気でド下ネタ言ってんじゃないわよ……」


 額に手を置いた麗美ちゃんは、ため息を漏らす。


「……仕方ないわね」


「おっ?」


「良いわ。夕飯の支度は私と和沙でしておくから。ゆかりは、その間に真尋に抜いてもらいなさい」


「えっ」


「まじぃ~?」


「その代わり……夜は私たちの番よ? ゆかりは大人しく寝るの」


「寝ます、寝ますぅ~! まーくんを独占できるなんて、久々だしぃ~!」


「いや、あの、僕の了解は……」


「……ねえ、真尋」


 麗美ちゃんが呼ぶ。


「美味しい夕ごはん、たくさん作っておくから……思い切りシて良いわよ」


「えぇ~……」


「じゃあ、まーくん。早くベッドインしよ♪」


 困惑する僕を、にっこにこのゆかりちゃんが腕組みして引っ張って行く。


 逃げようとするけど、巨乳の谷間に掴まれて不可能だった。


「麗美ぃ、ベッドルームはぁ?」


「あっちよ」


「イエ~イ! まーくん、行くぜぇ~!」


「たっ……助けてええええええええええええぇ!」


 僕の叫び声も虚しく、ベッドルームへと引き込まれた。




      ◇




 乳もデカければ、アレの声も大きい。


「ああああああああぁん! まーくううううううぅん!」


 一応、防音仕様のドアなんだけど。


 それさえも突き破る、ご立派だこと。


 麗美は内心で皮肉を呟きながら、調理を進めていた。


「麗美さん、サラダの下ごしらえが済みました」


「あら、ありがとう。和沙、上手に切ったわね」


「ええ。数学的思考を使えば、容易いことです」


「頼りになるわね。どこかのホルスタイン女と違って」


「まあ、ゆかりさんは、わたし達の太陽みたいな存在ですから」


「だとしたら……月は私かしら?」


「どうでしょうね? 麗美さんも、どちらかと言えば陽属性ですから。陰属性はわたしと真尋くん……ということは、わたし達の相性はピッタリですかね」


「こら、ドサクサに紛れて何を言っているのよ」


「ごめんなさい」


 麗美は軽く鼻を鳴らしながら、おたまで鍋をかき混ぜる。


 今日はカレーだから、焦げ付かないように。


 しっかりと、かき混ぜる、かき混ぜる、かき混ぜる……


「……んっ」


 胸の内で繰り返していると、何だかおかしな気持ちになって来た。


 BGMとして、さっきからずっとバカな乳デカ女の卑猥ひわいな声が響き渡っているせいだろうか?


(わ、私も……)


 かき混ぜて欲しい。


 早く、真尋のあの繊細でいて、ちゃんとゴツゴツ男らしいあの指先で。


 いっぱい、いっぱい、かき混ぜて……


「……んくッ」


 ビクビクと震えた時、束の間の恍惚こうこつ


 けど、すぐに現実へと立ち返る。


 脇に目をやると、和沙がメガネ越しにジーッと見つめていた。


「あ、こ、これは……」


「……お手洗い、どうぞ。鍋はわたしが見ておきます」


「……ありがとう」


 麗美は頬を熱くしながら、トイレへと向かう。


 その途中、ベッドルームの前を通りかかると、


「うひょおおおおおおおおおぉ~!」


 何か、また凄い声が響いて……


「……はぁ、もう完全に計算外」


 これはもう、夜まで待てないかも。







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