第20話 僕のラブコメ道は……

 僕はきっと、バカなんだと思う。


「にこにこっ」


「ニコニコッ」


 目の前で、2人の美少女が笑っている。


 けど、その仮面が一枚げればすぐに、般若はんにゃの顔になっていることは容易に想像が出来た。


「すりすり……」


 そして、もう1人の美少女は、僕に寄り添っていた。


「まーくん、やっちゃったね~」


「真尋、やらかしたわね」


「いや、その……傷心の身の和沙ちゃんを、放って置けなかったというか」


「とか言って、ただ自分の欲望に走っただけっしょ?」


「処女、だったんだもんね~?」


 笑顔のまま、ズズイと迫られる。


 ゆかりちゃんも麗美ちゃんも、激おこなのは明白だ。


「や、やめて下さい」


 すると、僕に寄り添っていた和沙ちゃんが声を発した。


「わ、わたしが真尋くんに求めたんです。彼に処女を捧げたのも、わたしの意志です」


「むぅ~、まさか和沙たんがこんな風に物申すなんて」


「予想外だったわ……ただでさえ、邪魔臭いデカ乳がいるのに」


「黙れよ、裸の女王様」


「誰が裸よ!……ま、まあ、真尋の前ではいつも裸になるつもりだけど♡」


「うわ~、この女。隙あらばデレてきっも」


「誰がキモいですって~?」


 2人がポカポカと殴り合う。


「あ、あの、ゆかりさん、麗美さん」


「「んっ?」」


 和沙ちゃんの呼び声に振り向く。


「お2人は、その……真尋くんとエッチする前に、すでに彼氏さんと経験済みだったんですよね?」


「「ま、まあ……」」


「非処女だったんですよね?」


「「うっ……」」


「一方、わたしは処女でした。真尋くんに処女を捧げました。この意味が分かりますか?」


 ダラダラ、と2人が汗をかく。


「わたしこそが、真尋くんの彼女としてふさわしいということです。つまりは正妻です」


「だから、それは私よ! 私が1番に真尋と関係を持ったんだから!」


「順番なんて関係ないし! 1番おっぱい大きいのはあたしだから!」


「それ関係ないでしょうが!」


「あるもん!」


 また2人はケンカをする。


「ふっ、そうやって精々、ザコ同士で争っていて下さい」


「「ザコッ!?」」


「ねえ、真尋くんはどう思いますか?」


「へっ?」


「処女を捧げたわたしこそが、本当の彼女にふさわしいですよね?」


 和沙ちゃんは、メガネの奥でとろんとした目を僕に向けて来る。


 正直、可愛いけど……


「……せ、責任を取った方が良いのかな?」


「そんな言い方をしないで下さい……わたしたちは、純粋な愛で結ばれたいんです」


「なーにが純粋な愛だよ。自分だって結局は、まーくんとエッチしまくりなくせに」


「そうよ、そうよ」


「ち、違います。わたしはゆかりさんみたいに下品な乳を持っていませんし、麗美さんみたいに最低な女王様でもありません」


「何だと~!?」


「何ですって~!?」


「わたしは真面目で地味な優等生なんです。そう、だからこそ、真尋くんと相性がぴったりなんです」


「確かに2人は似ているけど……お◯この相性は、あたしの方がぴったりだ~い!」


「何を言っているのよ! 私の方が、真尋とお◯この相性が良いわよ!」


「いいえ、わたしです。わたしこそ、真尋くんとお◯この相性が良いんです!」


「や、やめてくれ! 女子が3人そろってお◯ことか言わないでくれ!」


 僕が叫ぶと、3人が一斉にこちらを見た。


「こうなったら、まーくんに決めてもらおう」


「ええ、そうね」


「お願いします」


「いや、いきなり言われても……」


 僕は3人に視線をめぐらせて、思い悩む。


「……ごめん、すぐには決められないよ。3人とも、すごく魅力的だから」


「まーくん……」


「真尋……」


「真尋くん……」


「だったらいっそのこと、誰も選ばない方が……」


「そんなチキンな選択は許さんぞ!」


「ちゃんと選びなさい、このチキン野郎!」


「チキンは駄目ですよ」


「チキン……」


 そんなこと言われたって、少し前までは女子とロクに縁がない冴えない童貞野郎だったのに。


 三大美女と言われる女子たちにいきなり迫られて、スマートに対応なんて出来ないよ。


 自信なく僕が顔をうつむけていると……


「まーくん」


「まひろ」


 むぎゅっ。


 両側からほっぺをつねられた。


「ふぇっ?」


 僕は目を白黒させる。


「優柔不断なまーくんだね~、ラブコメ主人公かよ」


「ということは、私たちは真尋ハーレムのヒロインってことね」


「そうなりますね」


 3人の美少女たちは顔を見合わせると、頷き合った。


「だったら、決めさせてあげようか」


「この中で、誰を選びたいか」


「つまり、戦いですね?」


 むぎゅっ。


 鼻をつままれた。


 い、息が……


「ちょっと、和沙たん。真尋が苦しそうだよ」


「あら、良いじゃない。ちょっと罰を与えてあげましょう」


「そうです。私たちを、こんな風にたぶらかした罰です」


 そ、そんな……


「……ぷはっ!」


 ようやく解放された僕は吐息を乱す。


「まーくん」


「真尋」


「真尋くん」


 3人娘が僕を呼ぶ。


「「「ちゃんと選んでね?」」」


 とびきり可愛いオーラをまといながら、そうおっしゃられた。


「あはは……」


 どうやら僕のラブコメ道は、まだまだ続きそうだ。






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