第19話 真面目な優等生ちゃんは……

「私の処女を……あなたに捧げます、真尋くん」


 天音さんは僕に抱き付きながらそう言った。


 僕はしばし、思考が停止したまま、動くことが出来ない。


「ちょ、ちょっと待って、天音さん」


 ようやく息を吹き返し、彼女の肩を掴んで引き剥がす。


「今はその、大好きだった彼氏さんにフラれて、ちょっと自暴自棄じぼうじきになっているだけだよ。そんな状態で、そんな大切なことを決断しない方が良いよ」


「……確かにおっしゃる通りです」


 天音さんは顔をうつむけたまま言う。


「今こんな状態で、真尋くんにこんなことをお願いするのは、失礼だと思います」


「いや、僕はそこまで気にしないけど……」


「でも、わたしはあなたのこと……少なからず良いなと思っています」


「えっ?」


「だって、あのゆかりさんと麗美さんが、好意を寄せるくらいですから」


「そ、それは……」


「誤魔化さなくても良いですよ、もう」


 再び、天音さんが僕に抱き付いて来る。


「あ、天音さん……」


「……和沙かずさって呼んで下さい」


「か、和沙……ちゃん」


「……はい」


 きゅっ、と力弱くも、僕のことを抱き締めて来る。


「……ほ、本当に、僕が初めての相手で良いの?」


「はい……真尋くんが、嫌でなければ。ついさっきまで、修さんのことを想ってばかりだった、このふしだらなわたしで良ければ……処女をもらって下さい」


「さ、最後の一言がパワーワードすぎる……」


 僕は額に手を置いて、顔をうつむけた。


「……僕もそこまで、経験がある訳じゃないから」


「やっぱり、あの2人としていたんですね」


「ま、まあ、成り行きと言うか、なし崩し的にというか……」


「では、私とも成り行きでしちゃいましょう」


 ようやく、天音さん……和沙ちゃんは微笑んでくれた。


「あ、あの、メガネは外した方が良いですか?」


「いや……着けたままでお願い出来ますか?」


「分かりました。真尋くんに、全てお任せします」


「う、うん」


 僕は他の2人とする時以上に、ドキドキしていたかもしれない。




      ◇




「あ、和沙ちゃん。そういえば、親に連絡は……」


「はい、してあります」


「そっか」


「お友達の家にお泊りするから、と」


「えっ?」


「だから、その……もう1回でも2回でも……何回でも、わたしを抱いて下さい」


「いや、でも和沙ちゃんは、さっき処女を卒業したばかりで……」


「はい。真尋くんの、すっごく立派で、正直はじめは痛かったです」


「め、面目ない」


「けど、すぐにすごく気持ち良くなって……何度でも、シて欲しくなりました」


「マ、マジっすか?」


「ゆかりさんと麗美さんばかり、ズルいです。ずっと、こんな気持ち良い思いをしていただなんて」


「で、でも、あまりハマりすぎると、和沙ちゃんにとって大事な学業がおろそかになっちゃうよ~……なんて」


「はい、ですからちゃんと、メリハリを付けようと思います。勉強する時はそれに集中して、エッチをする時は……もうそれだけに夢中になります」


 和沙ちゃんは頬を赤らめつつも、ハッキリと言う。


 まさか、あの真面目だった彼女まで、こんな風に……


 自分で言うのもなんだけど、僕は罪深きモノを持っているのかもしれない。


「じゃあ、今までゆかりさんと麗美さんばかり楽しんでいたみたいなので……今日はその分、わたしにたっぷり下さい」


「か、和沙ちゃん……」


 その晩、僕は処女を卒業したばかりの彼女にまで、搾り尽された。







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