第15話 雰囲気が違う

 僕は女王様にかしずく家来、いや下僕だ。


「真尋、一体全体、どういうことかしら?」


 いつも通りに僕の家で溜まった後、3人で帰る途中、抜け出して来た麗美ちゃん。


 そして……


「はぁ~! この前に味わったまーくんのデカち◯ぽ、すっごく気持ち良かったよ~!」


 笑顔で言うゆかりちゃん。


 ピキリ、ピシリ。


 麗美ちゃんの笑顔に亀裂が生じるようだった。


「ねえ、あたし達もうセ◯レだし、早速シようよ~!」


「いや、だからそんな関係には……」


「あたしのおっぱい、いっぱい揺らして揉みまくったくせに」


「うぐッ……そ、それは……男の本能に抗えなかったというか……」


 ギギギ。


 ニコリ。


「真尋」


「あ、はい」


「私の足を舐めなさい」


 麗美ちゃんが靴下を履いた状態で差し出す。


「マ、マジですか?」


「当然でしょ? 彼女を裏切って、その親友とハメるだなんて……やってくれるじゃない。最高の裏切りだわ」


「あ、てことは、麗美はもうまーくんに愛想を尽かしたよね? だったら、あたしにちょうだいよ~!」


「誰が手放すなんて言ったかしら? むしろ、これは良い調教の機会だわ」


「ちょっと、麗美。あんた、自分が元カレに調教って言われて嫌だったとか言ったくせに、何を言ってんのさ」


「うっ……じゃ、じゃあ……教育?」


「どんな教育をするんですか~?」


「え、えっと……も、もう、私のことしか考えられなくなるような……」


「はい、おっぱい♡」


 むぎゅっ。


 僕の顔面は一瞬にして至極の柔らかみに包まれた。


 一瞬にして、僕の思考が全ておっぱいに染まる。


「本当に、ズルいわね……」


「ひひひ。こーんなこと、麗美のちっぱいじゃ出来ないもんね~!」


「だから、私は小さくないわよ!」


「あたしに比べたら、ちっぱいでしょ?」


「本当に腹の立つ女ね……あなたが私に勝っているのは、おっぱいだけよ」


「でも、それが何よりも大きいのです。おっぱいは、女性の象徴シンボルなのだから。男を惹きつけて止まないのです。ねえ、まーくん?」


「ま、まあ、それは……否定できない」


「真尋、素足を舐めなさい」


 麗美ちゃんが靴下を脱いで足を向けて来た。


「うわっ、くさそ~」


「何を言っているのよ!」


「いや……すごく良い匂いがする。可愛い子って、どこもかしこも良い匂いがするんだね」


「や、やだもう、真尋ってば。すっかり、おませさんになっちゃって」


 麗美ちゃんが両手で頬を押さえて身をくねらせる。


「この女、意外とチョロくね(笑)」


「黙りなさい、この泥棒猫」


「違うよ、泥棒乳だよ、あるいは泥棒おっぱい」


「もう、胸の話は良いでしょ!」


「ま、まあまあ、落ち着いて」


「じゃあ、まーくん。エッチしよっ♡」


「いや、でも……」


「良いじゃない。この際どっちが気持ち良いか、真尋に決めてもらいましょう」


「えっ」


「あ、それめいあ~ん!」


「ちょっ」


「それじゃあ……」


「行くよ~!」


「ま、待って、2人とも……」


 今度は2人にたっぷり、搾り取られた。




      ◇




 帰り道を歩いていた。


 今日もまた、彼の家で勉強が捗った。


 けど……


「……何だか、少し様子が変でしたね」


 和沙は呟く。


 ゆかりも、麗美も、いつもと変わらないようでいて、どこか雰囲気が違った。


 何やら、ゆかりも麗美も、彼氏と別れたみたいだけど。


 それと関係があるのだろうか。


 というか、何だか真尋も少し違って見えて来て……


 ピロン。


「あっ」


 スマホにメッセが届く。


『やあ、和沙かずさ。今度の休日だけど、空いているかな? もし良ければ、デートしない?』


 それを見て、ずっと冷めていた和沙の口元が、ニコッと微笑む。


『……ぜひ、喜んで、おさむさん』


『そうか、良かった。じゃあ、また後で連絡するね』


『はい』


 やり取りを終えると、スマホを胸にぎゅっと抱く。


 西野修にしのおさむは、彼女にとって自慢の彼氏だ。


 有名大学に通う、知的なイケメンさん。


「またお勉強、がんばらないと」


 緩んだ口元を引き締めつつ、和沙はそう決意した。







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る