第11話 てか、パコッてるっしょ?

 またソファーにもたれて、2人して汗だくになっていた。


「はぁ、はぁ……真尋、今日もすごかった♡」


「れ、麗美ちゃんこそ……腰の振りが激しくて……」


「だって、真尋のすっごいんだもん♡」


 汗が浮かんだ笑顔で言われて、何だか無性に照れ臭い。


「ねえ、もう1回……」


「いや、もう遅いし。親が心配するんじゃない?」


「あん、もういけずぅ~……じゃあ、せめて……一緒にシャワー浴びよ?」


「う、うん」


 とか言いつつ、結局は……


「――ああああああああああああぁん! 真尋おおおおおおおおおおおおおおぉ!」


 お風呂場でも思い切りしてしまった。




      ◇




 いつも通り、ガヤガヤと賑わう教室にて。


「あれ、麗美さん。今日はいつにも増して肌ツヤが良いのは、気のせいでしょうか?」


「あら、和沙。分かっちゃう?」


「はい。もしかして、もう新しい彼氏さんでも出来たんですか? ほら、昨日もそそくさと帰って行きましたし」


「うふふ、内緒よ♡」


 そんな風に話す麗美のことを、ジッと見ていた。


「ゆかり、どうしたの?」


 ふと振り向いた麗美が言う。


「う、ううん、何でもないよ」


 少し焦って誤魔化す。


「あ、そうだ。わたしは今日、用事があるので真尋くんのお家には行きません」


「あら、彼氏さんとデート?」


「まあ、そんな所です」


「そっか。私も今日、仕事なの。はぁ~、ちょっと残念」


「どうしてですか?」


「ううん、何でもないわ。ゆかりはどうするの?」


「へっ? あ、あたしは……」


 少し考えてから、


「1人で行ってもつまらないし、あたしもやめておこうかな」


「じゃあ、今日は真尋を1人でノビノビとさせてあげましょう」


 笑顔で言う麗美のことを、ゆかりはまたジッと見ていた。




      ◇




『愛しのダーリン、真尋へ♡


 ごめんね、麗美は今日、モデルのお仕事なの。


 だから、真尋のお家に行けないの。


 でも、もし早く終わったらお邪魔しちゃうから。


 その時は、また……ねっ♡』




 ……まさか、つい先日まで童貞だった僕に、こんな熱烈な彼女が出来るだなんて。


 というか、麗美ちゃんは付き合う以前はどこまでも余裕で大人びた女子だったのに。


 これはもう、若干アホの子……いや、何でもない。


 ちなみに、今日は3人とも用事があるらしく、僕に家には来ないようだ。


 だから、今日は久しぶりに平日に1人でのんびりできる。


 この快感がたまらんな~。



 ピンポーン♪



 すぐに嫌な予感がした。


 一瞬だけ硬直した僕は、ぎこちない足取りで玄関へと向かう。


 恐る恐る、ドアを開けた。


「……よっ」


 前島さんがいた。


「あ、あれ? 今日は来ないはずじゃ……」


「予定へんこ~う。ということで、上がらせて?」


 僕の返事を待たない内に、前島さんは家の中に上がって来る。


「ちょ、ちょっと……」


 そして、結局はいつも通りにリビングのソファーに座ると、


「ジュース」


「……はい」


 僕はガックリとうなだれながら、2人分のジュースを持って行く。


「どうぞ……」


「ありがと」


 前島さんはちゅ~、とストローで一口飲んだ。


「実は今日さ、来たのには理由があるんだ」


「えっ? 理由って?」


「麗美の新しい彼氏って……まーくんでしょ?」


 ドクン!


「……い、いや、何のことかな~? ぼ、僕みたいな冴えない男が、れ……市野沢さんみたいな美女と付き合える訳ないし……」


「いや、メッチャ動揺しているし。ていうか、あたしもう知っているから」


「な、何を?」


「2人がパコッてんの。実はこの前、こっそり麗美の後を付けて、この家でエッチしてる声を聞いちゃったから」


「マ、マジっすか……」


「それはこっちのセリフだよ」


 前島さんはため息をこぼす。


「……でも、いくら彼氏にフラれて傷心の身とはいえ、それだけで体を許すほど麗美は甘い女じゃないからなぁ。それだけ、まーくんとのエッチが気持ち良いってことだよね?」


「ど、どうなんだろうね?」


「とか言って、本当は自信があるんでしょ? だってあの麗美が、めっちゃデカい声で叫んでいたもん」


「あ、あの、前島さん」


「ん?」


「こ、このことはどうか、内密に……」


「あー、そうだね。まーくんの性格上、面倒ごとは避けて無事平穏に生きたいもんね」


「おっしゃるとおりです」


 僕は深く頭を下げて言う。


「うむ、分かった。おもてをあげい」


 言われて、僕は顔を上げた。


「分かった、黙っていてあげる」


「本当に?」


「その代わり……あたしのおっぱい揉んで?」


「はっ?」


「ほら、前にも言ったじゃん」


「いやいや、でも……」


「大丈夫、これは浮気じゃないよ。あたしはマッサージ上手なまーくんに施術せじゅつをしてもらうだけ」


「そ、そんなこと言われても……」


「あっそ。じゃあ、今すぐクラスのグループラインで暴露しちゃお」


「ちょ、ちょっと待って!」


 というか、そのグループライン、僕は知らないぞ。


 ハブられてんなぁ~……


「ん?」


「わ、分かったよ……も、揉むから、前島さんの……おっぱいを」


「にひッ♪」


 これまで、いつもと様子が少し違う彼女だったけど。


 またいつも通りに、いやそれ以上の小悪魔スマイルを見せてくれる。


「ていうか、むしろこれ役得すぎっしょ~。だって、ゆかりのおっぱい、全男子がモミモミしたいだろうし~♡」


 ゆっさ、ゆっさ♡


 た、確かに、すごく大きくて、ハリがあって、柔らかそうだけど……


「じゃあ、まーくん……秘密のマッサージ、始めようか?」


 不覚にも僕は、その極上のおっぱいを前に、息を呑んでしまった。


「……ゴクリ」







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