あなたと電話 2020年8月25日

第22話 他のご家庭

「えっとだからそういうさ、んー、まぁ、だから奥さんが病にかかって倒れちゃってさ、言ったときにはもう行けなくなっちゃうわけじゃん、旅行とかに。かと言ってその段階で気づいても遅いしさ。んー」

「なんなんだってとこだよね」

「そう、例えばだけどさ、シーンでだけどさ「オヤジが仕事ばっかりでこうなたんだから」ってなっちゃってさ」

「まぁ、なるだろうな」

「だから、そうそうそう。そういう時に結果誰も悪くないんだけど、誰も悪くないんだけど、まぁそういう終わり方というかそうなっちゃったんだなっていうなんの話だっけ？なんかで見たんだよね」

「淋しい話だよね」

「淋しい話だよね、でもさそれってさ、たしかにさあるあるじゃん」

「それは普通にどこの世界でもあると思うよ。オレは」

「でしょでしょでしょ。とくに頑張ってる人に限ってそうなっちゃうってのはどうなのかなーって思ってさ」

「でもまぁ、そんなもんなんだろうね、実際ね、望む望まずに関わらないで」

「そうね、そうね。かと言ってそれは私だったらね」

「うん、私だったらどうなんの？」

「私の立場だったらね、例えばさ、うーん」

「何？」

「奥さんばっかってなっちゃうしさ、例えばね」

「何奥さんばっか？」

「奥さんばっかとまた出掛けてってなっちゃうしさ」

「あーあ、そうだよね」

「そうでしょ？」

「普通はどうなんだろうね」

「ん？」

「普通のご家庭はどうなんだろうね」

「普通のご家庭は出掛けてないよ」

「あ、そうなの？出掛けてないの？」

「普通のご家庭ってどういうこと？」

「ごく一般的なご家庭。出掛けるもんなの？」

「私たちの年代？」

「そうそう」

「私の年代は出掛けてるよ」

「出掛けてるの？」

「うん」

「難しいとこだね」