夜宵街 純荼
※夜宵街(やよいがい)へようこそ!(仮)という和風×妖怪の群像劇イメージの創作
※荼毘が人狼(特殊)、純恋君が吸血鬼っていうcp
※こいつらめんどくせぇんだよなぁ
(鏡にも写真にも映らない自分に生きてる価値も意味も分からずになすがままに妖怪に襲われてたのをだっちゃんに救われて、その目に映ったアホ面してる自分にも、かえり血を浴びて鬱陶しそうにしてるだっちゃんにも目が離せなくて、気がついたら一目惚れだった純恋君vscoc同じく友人を食い殺してしまって誰もすきにならないと誓っただっちゃん)
※書きたいとこだけ書いたのでやっと純恋が捕まえたとこ
誰もすきになれない。誰もすきにならない。
友人を、好きになってしまった彼女を自分が守りたかった女の子を食べてしまったから。
好きだから、離れたくないから、だから、食べてしまった。
気が高ぶった満月がいつもいつも怖くて、何で私だけがこんなに制御が上手くいかないんだろうって嘆いて、忘れたくて、許されたくて必死に仕事をこなしてきた。でも、こなせばこなすほど手が赤黒く染まって、死の臭いが取れない気持ちになる。結局、悪循環だった。あの子が忘れられなくて、未練がましくあの時のままの髪型をキープして、髪を触られるのも切られるのも嫌で、この赤い目も、何もかも嫌なのに髪だけは好きだった。あのこがほめてくれたから
**********
「…で、感想は?」
未練などもうないとばかりにざっくりと綺麗な髪を切ってしまった先輩が落ち着かなそうに目を背けながら腕を組む。昨日、咎さんがおろおろしていたのはこれだったのか…何て現実から目を背けて顔を覆った。いや、これは覆うしかないでしょ…?あんなに髪を切るのも触れられるのが嫌だった彼女が、髪を切って、更には自分に感想を聞いてくるんだ。昨日、やっと捕まえたこの人は酷く臆病な人で…情けないぐらいボロボロになってまで追いかけた俺に、血で汚れた顔で泣きながら助けを求めてきた。やっと、やっと本音を言ってくれたんだと笑って、その小さな手を引いて捕まえた。それだけで、満足なのに、だ。
「はー………」
深く息を吐いて、そのままベッドに倒れる。自室に訪れた時点で察すればよかった、なんなら倒れた衝撃が傷に響いて痛い。夢じゃないのかぁ…。いや、ありがたいですけど…。
「…そんなに似合わないか」
「いや、滅茶苦茶似合ってます。可愛いんですけどちょっと心の準備をさせてください。理性が死ぬ」
「…お前、そんなキャラだったか?」
そんなキャラでしたよ貴方に対しては…こっちは4年は片想いしてたんだ。それくらいは許して欲しい…。ただでさえ2歳も歳が違うし、何ならあの顔だけはいい先輩がパートナーなんだ…。いつもいつも落ち着かなかったんだから…いや、本当に毎回顔会わす度に「まーたお前フラれたの?ウケるな!」と言われたり「4年も片想い、へぇ~」なんて言われてみろ?殺意しかわかない。…とまぁ、そんなことは置いておいて現実に目を向け直すことにしよう。
「まって何で先輩俺の隣に座ってるんですか」
「お前眼鏡なんだな」
「いや、だから話…って、何してんです…?」
いつの間にか隣に腰かけた先輩が着ていたカーディガンをおもむろに肩辺りまで脱ぎ出す。寝間着であろうキャミソールから、真っ白くて細い腕や髪を切ったことで晒されるうなじが惜しげもなく露になった。が、当の本人は特に何も気にしていないかの様に、寝そべる俺の隣に同じように寝転がるとじっと見つめてきた。余りにも目に毒なその光景に喉の乾きと共に眩暈がする。
「純恋」
「はい」
「お前、本当に私が好きなの?」
「…は?」
「好きなのかって聞いてる」
ここまで来てそれか!と叫びたくなったけれど、不安げに揺れる赤い目を見るとそれが疑りから来てるものではないと感じられる。きっと、確かめているだけなんだろう。
「…昨日も言いましたけど、俺はずっとあんたが好きですよ。あんたに食われるなら本望だし、死んでも来世であんたを見つけてまた好きになる自信しかないぐらいには惚れてます。」
「…」
「許されるなら、縁を結んであんたを縛り付けたいぐらいには好きなんですよ。」
じゃなきゃ、こんなボロボロになるまで追いかけないでしょ?なんて眉を下げて笑えば、先輩は目を丸くしてから、ゆったりと少し上半身を起こした。中途半端に脱げていたカーディガンが更に下がって、それがやっぱり目に毒だと思う。先輩は、肩肘を布団についてから微笑んだ。
「なら、結んで」
手がガーゼに覆われた頬に触れる。少し震えている気がしたのはきっと気のせいじゃ無い。昨日の助けを求めた時と同じ様にか細くて、寂しげな声色だった。ぎゅっと胸が締め付けられる。あぁ、好きだな、とか守りたいとか、そんな感情が胸をきしませるようだ。すがる様に寝そべったままの俺の胸にぽすりと顔を埋ずくめて返事を待つ細い肩が愛おしい。また顔を覆いたくなった。
「…いいんですか、吸血鬼と縁結んだら…その…」
「餌と花嫁。定期的な吸血と“そういうこと”するだけだろ?」
「いや、だから、それが…」
「人狼は一生の契約、云わば一生のパートナーで番になるって意味だ。それよりは軽いだろ?」
なんだ今さら怖じ気づいたのか?
顔を上げてへらりと笑って…先ほどの儚さも弱さも感じられないいつもの調子の先輩がいた。首を傾げてしまったせいで、肩紐がずり落ちている。あぁ、本当にもうこの人は…
勢いのまま体を起こしてその肩を軽く押す。やっぱり細くて壊れてしまいそうなそれを布団に縫い付けながら、左手を取ると、同じ様に白くて綺麗な薬指に思い切り噛みついた。下から痛みから息を飲んだ音や震えた肩の感覚がしたがもう知るか、こっちは忠告したんだから。血がにじむほど強く噛んだ薬指を解放して悪戯が成功したかの様に笑う。
「俺、嫉妬深いし独占欲強いから…頻度…多いと思うし、多分意地悪いです。泣かせると思いますよ。」
「知ってる。」
「人狼の縁は今の一回ですけど、こっちは結んだ後すら求め続けるんですよ。だから、覚悟してください」
額をあわせて先輩に笑えば、先輩は少し顔を赤くしてからお前ならいいよ、なんて言う。あぁ、沢山泣かそう。我慢してきた分沢山なけばいい。その分だけ愛せばいいのだから…
噛み付いたうなじから酷く甘くて優しい香りがした。
後日、先輩の首にひし形のチョーカーの様な模様が刻まれた。これが吸血鬼の縁なんだな、何て、赤くなった目を細めて少し掠れた声で笑うその姿が眩しくて嬉しくて、また胸が苦しくなった。
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