子宮を孕む 創作春冬

※創作の話


※恒例の春冬兄弟


※姉妹創作の話。

冬→→→→春に見えるけど春→←冬


※兄弟だし、姉弟だけど「兄弟」「姉弟」ではないので近親相姦でもホモでもない。


※もう好き勝手ss書いてるから燃やそうね。
















「はぁ…」


吐き出した息が途端に白く、凍てついた。

毎日毎日飽きずに降り続ける雪によって年中冷凍保管されているようなこの国では見慣れた光景だ。でも、今日は珍しく朝焼けが綺麗に見えたから、だから、外に出た。

そう、今、雪は降っていない。

だから、あいつは多分まだ眠っているはずだから。だから、だから外に出てきた。


護衛だ番人だ、失敗作だとなんだかんだ文句をつけながらもついてくるあいつの姿が目に浮かぶ。あいつはあんな感じでも根は優しいから、起きていたら、起きてきたらきっとついてくる。だから、その前に「一人」で来たかった。ギシギシと踏み締めた白い土が冷たい。俺は基本的に靴を履くことがないから、素足でこの世界を歩くことになる。靴がないのは必要がないからだ。御飾りの人形は部屋の中で飼い殺される。だから、必要がない。

そもそも、基本的にあいつが送迎はするから、余り自分で歩き回ることも出来ないのだ。

呼吸が、肺が、冷たくて痛い。

歩み続けた足は爪先が少し赤らんできた。

吐いた酸素が凍てついて、白く、形を残す。

朝焼けが、徐々に登り出している。早く、早く、しなければ…。


「……はぁ…」


歩くたびに軋み鳴く地面と同じぐらいに溜め息しか出ない。俺は本当に俺が嫌になる。

歌でしか操作も調整も出来ないこの力との付き合い方は分かっても、“これ”とはどうもうまくいかないのだ。それは、今日みたいに雪が降らない日だったり、それは、あいつが寝坊をする日だったり、それは、少し検査が長引いた日だったり、それは、隣国の王族に見つかってしまった日だったり、といつも不安定に来るのだ。

あぁ、痛い。

ぐらり、ぐらり、と視界が揺れる。

だから、“これ”はいやなんだ。


「そろそろ、起きてくるかな…」


そう呟いた時には目的の場所についた。この国限定の氷柱のカーテンに隠されたようにある、湖のステージ。 ここが、一番落ち着いて歌うことができる場所だから。

深く息を吸い込んで、ゆっくりと吐き出すと、少しは痛みが和らいだ気がする。


たん、たたん、たん。

ゆっくりと、氷の上で足を鳴らす。ステップを踏んでるわけではない。歌う準備をしているわけでもない。なら、何のためだと思われるだろう。

あぁ、痛い。

数回、足を鳴らす。この度に間抜けな音が響くだけだったが暫くすればピシリと歪な声をあげる。それが火種となり、俺の周りの氷は軋み、次には崩れ落ちた。勿論、上にいた俺もめでたく水の中へ落ちる。こんな世界で水の中に落ちれば普通なら生命装置である心臓が停止してしまうだろうけど、そこは、まぁ

俺だから大丈夫。ぽかりと口を開いたままの間抜けな氷面を見上げて口を開く。酸素が上へと逃げていく。けれど、それでいい。

酸素の泡が空に逃げ切れば、それらは音となって辺りに反響していく。周りの氷柱はそれに習って輪唱し、さらに周りに響いていく。

次第に痛みがなくなっていく。

次第に視界が霞んでいく。

俺は別に人魚ではないから、水中では間抜けな音しか奏でられないし、息も出来ない。だから、このままなら…

と、思ったのも束の間。口を開いたままの氷面から何かが飛び込んで真っ直ぐに俺の前までくる。それは俺の腕を掴むと、吊り上げるかのように水面に向かって勢いよく引っ張りあげた。勢いが強すぎる程の早さと力だったから、体は勿論水面からも切り離される。そうしてそれは都合よく地面に落ちるわけもなく、体は浮遊感を覚え、次には落下をするしかない。運動神経は悪いわけではないから、きっと受け身はとれる。けれど、それよりも先に、何かが体を受け止めた。

痛みはないから地面ではないし、温かさがあるから物でもない。なら、上から聞こえた息の詰まるような声の持ち主だろう。


「やぁ、お早いお迎えご苦労様。インベル」


あいつ…インベルにへらりと笑った。

この氷付けの世界でびしょ濡れの姿で笑う俺にインベルは嫌悪感を隠すことなく眉を寄せて睨む。その顔に俺は笑う。

声もいつも通りだ。痛みだってもうない。

視界だってクリアだ。


「そんな顔するくらいなら助けなければいいだろう?あのままなら俺は死んでいたさ。」

「“おひいさん”が天に向かわれたら俺まで死ぬはめになるんだよ。ほんっとにめんどくさい奴だな」

「なら、今殺すかい?」

「お前さっきの話聞いてねーな。」


言って、インベルは深くため息をつくと雑に俺を自身の扱う人形へと放り投げる。人形は器用に俺を受け止め、幼子を抱くかのように片腕で俺を抱き上げた。さすがだね、なんて笑えどインベルは舌打ちをするだけだ。

あぁ、これは帰ったらさらに機嫌が悪くなるだろう。きっと今日は外にさえだしてもらえないに違いない。苦笑半分、諦め半分で歩き出す人形の頭を撫でていれば、前をさくさくと進みながら、インベルが俺の方へと向いた。


「なぁ」

「なんだい?」

「お前、怪我でもしたか?血のにおいがする」

「まさか!お前のおかげで残念ながらどこも怪我なんかしてないさ」


へらりと笑って、人形の首を抱き締める。人形は冷たくて硬い。インベルはその態度に更に舌打ちをして、今度こそ振り替えることなく来た道を戻り、進み続ける。ぽたりと髪から滑り落ちた水が白い道に跡を残す。混じって、白い道に赤い斑が咲いていた。

あぁ、本当に最悪だ。痛い、痛い。


ずくりと、無いはずの胎が軋んだ。

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