天から降ってきたものと地上で判断したもの
また自作の話。カクヨムでアンドロイド話の次に書いたのがミリタリーものでネタはバトル・オブ・ブリテン。3冊ほど戦記ものの本を読んで、1940年の夏のイギリスの戦いは書いてみたいなあと漠然と思った。
そこに突然アイデアが降ってきた。
† † †
英国人少女:「パイロットの皆さん、ぜひ命を大切にしてください」
パイロットA:「お手紙ありがとう。全員が感謝しています」
返事を読んだ少女が気づく。なぜもう1通あるのか?
パイロットB:「パイロットAが大怪我です。どうか彼のために祈ってください」
はたしてパイロットAはどうなるのか。
† † †
出先でノートPCのエディタにパカパカプロットを打ち込み、コードネーム「RAFレター」として細部の創作に入った。
元ネタの本を読み返して何月何日に誰が何をして、というのをGoogleスプレッドシートに書き込み、それを眺めつつ展開を考え、やがて本編の執筆開始。
20歳前後の若者が戦闘機に乗る。それが叶えば輝かしい青春の1ページになる。しかし、同時に空は、銃弾が飛び交う危険な世界。空を飛ぶという心の高まりと、しかし、その任務は敵兵を殺傷することであり、一歩間違えると自分も死ぬ。
というようなことを一番書きたいことに据えつつ。
シリーズ全体のストーリーを動かすエネルギー源になったのが、亡命ポーランド人将校のカミル。英国空軍を描くならドイツの支配地域から亡命してきた人物を描かなければ、と配置してみたが、そのまま主人公トーマスらの小隊長にスコッとおさまった。
教会に行ってアリスちゃんと会話するシーンも欲しい。祖国から持ってきた妻子の写真を見せたら絵になるだろう。
しかし、ここでのやり取りが、彼の運命を決めてしまった。
「このほうが盛り上がる!」と、妻子はナチスの侵攻で死んだ設定にした。結果、彼は苛烈なジャーマン・スレイヤーになった。この思いつきがなければ、英語がおぼつかないおじさん、ぐらいのキャラのはずだった。
あとは、教会のシーンの前にドイツ機を撃墜しておくべきだし、不時着必須の爆撃機を、怒りのままに火だるまにして墜落させるに違いない、となった。
このシーンはそのままカミルの死亡フラグになった。というか意図的に死亡フラグにした。
そして話後半で実際に戦死。
小隊長を失ったトーマスたちはこれからどう戦うのか、というぐあいに物語は最終幕へ移行。
物語というのは型があり、前もってその型に合わせて出来事を配置しておくのがいい。これが「プロッター」と呼ばれる物語の作り方。
とはいえ、執筆前に前もって型どおりのストーリーなんて作れるわけじゃない。
ある程度は、進展してきた話の流れで柔軟に変えた方がいい。
「型がある」といったって、生きたキャラクターが動き回ってる執筆中の物語にとって、最適な「型」が何であるか、前もって分かる人などいない。上級者は可能かもしれないが、自分自身を「上級者」に分類すべきではない。
要するに創作というのは、トップダウン(こういうふうに作りなさい)とボトムアップ(こんなふうにできました/こんなふうにしか作れません)のすり合わせでできあがる。自分が知る限り、イラストも小説も同じようなもの。
というわけで、すり合わせた結果、「戦争」にまつわる憎しみや死という不幸要素は、カミルがほとんど背負ってしまった。そうなるとノーマン(パイロットB)は、生還する方が「よりよい」結末ではないか、という判断になった。
プロットに書いてあったラストシーンと、違うラストになった。
こんな具合で、自分にとって「天から降ってくる」ものは物語的にはどうでもいいような部分で、しかし、それによって自分が、「これを書きたい!」と思えるもの。それががっちりと掴めたら、あとはおおむね自分で考えながら進めている。
なお、「どうせオリジナルだし誰も読まないだろう」と始めたら1桁多いPVをいただいた。トータルでは1000PV超え。とてもありがたい。
反省点は、自分の知識が及ばない世界をうっかり舞台にしてしまったこと。リアリティは大事にしたが、リアルに関する知識がどうしても追いつかなかった。
あと褒められた話じゃないけれど、英国人少女を「アリス」というベタな名前にしたのは、『きんいろモザイク』のアニメを見て、あの見た目を、見た目年齢そのままで登場させよう、と考えたため。厳密には『きんいろモザイク』の二次創作かもしれない。
書いてみたら性格がかなり違ってきたので、今からビジュアルイメージ起こすとするとだいぶ違った顔になるのではとは思う。
それから、マジで苦労したのはタイトル。えい、やー! でベタなタイトルにした。
最近はVRを導入してマイクロソフトフライトシミュレーターで飛んでいるので、FSで身に着けたリアリティで飛行機ものをまた書きたいと思っている。
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