名前が決まるとはかどる

 カクヨムに新作を書きたい。

 2018年の夏にそんなことを考えていた。

 書きたい物語を抱えていたわけではなく、「とにかく何か書く」が先にあった。

 気に入ったアニメを思い出して「なんかそんな感じの」作品を書けばどうか、というあたりから具体的に動き出した。


 2015年放送の『プラスティック・メモリーズ』。略称『プラメモ』。

 アンドロイドのメーカーSAI社が所有するアンドロイドと、新入社員が恋に落ちる話。原作・脚本林直孝。制作は動画工房。クライアントはアニプレックスで担当は鳥羽洋典。そして監督は藤原佳幸。

 この作品のアンドロイドは精巧にできていて、人間と見分けがつかない。なぜなら人工の心「アルマ」を持っている。しかし、その心が繊細すぎるのか、稼働時間が81920時間を超えると壊れてしまう。9年4ヶ月という製品寿命が近づいたリース品を回収する、というのがこの作品の内容。主人公水柿ツカサは、アンドロイドのアイラとペアを組んでこの職務に当たる。


 という作品が頭に浮かんだので、アンドロイドものがいいかなと思った。

 ちょうどその頃、『BEATLESS』というアニメも放送された。


 既存の作品にインスパイアされて創作することは、何も恥じることはない。

 立派な動機だ。

 重要なのはオリジナリティで、安易に元作品をトレスしないことが求められる。

 作品としてしっかり作るのであれば、参考にした作品のネタを拝借することはむしろ推奨される。『プラスティック・メモリーズ』で設定されたアンドロイドの寿命は、映画『ブレードランナー』がアンドロイドに4年という寿命を設定したことが元になっている。そして、「限られた寿命」という課題への取り組み方はそれぞれの作品で全く違う。


 『BEATLESS』が示した、ネットに常時接続されているアンドロイドというアイデアはいいと思った。一方、この作品ではたびたび、「私に心はありません」とアンドロイドが言う。しかし、そう言う彼女たちの言動がやはりどうにも人間臭い。


――待っていてください。本物の「心がない」アンドロイドというのを、お見せしましょう――


 これがスタート。最初はそう思った。

 出来上がったもが『ドールと旅しよう』という一連の作品。

 正直、無理でした。完全なる人工的な言動、は実現できなかった。

 だからといって誰が文句を言うわけでもないのだが。なにしろ、全12話で最小のPVは「2」。通して読んだ人は最大で2人。常識的に考えると、通して読んだ人は誰もいない公算が高い。


 といっても、PVは結果にすぎない。書くほうが「書く」と決めなければ作品はできない。そのきっかけが「名前」だった。


 「アンドロイドの名前は酒の名前にしよう」。これがスタート。『プラスティック・メモリーズ』にはアイラとシェリーという名前があって、これらは酒の名前だ。シェリーはともかく、「アイラ」というのは猛烈に癖のある酒で、臭いが正露丸だのディーゼルオイルだのいろいろ言われる。

 沖縄の蒸留酒「泡盛」が頭に浮かんで、「アワモリ」はねーよな、といいつつ「ア」をとってみたら「ワモリ」。おっと、これは行けそうだ。

 そしてあまり置かずに、第1話の執筆が進んだ。

 名前が決まればあとは簡単。アンドロイドの美少女ワモリと、とりあえずどこかに出かければいい。常時ネット接続なら、主人公がどんな話題を彼女に振ってもしらけたりしない。もういっそ、場所はデートコースらしからぬ自然博物館にしよう。


 1話を公開してから、「この話をどう展開させ、どう終わらせるか」を考え始めた。

 これもすぐにアイデアが出てきた。『プラスティック・メモリーズ』に速攻で入ったコメント、「バックアップ取れよ」。これだ!


 かくして、全12話で1話完結で進みつつ、9話から12話までは連続した話にして、「壊されたアンドロイドが、バックアップから記憶を復元して蘇ったらどうなるか」を書いた。


 結果がPV「4」だとかはもうどうでもいい。

 アンドロイドの話を作ったはずが、気がついたら、死者が蘇る話だった。

 日本神話のイザナギ・イザナミの話は結構好きなので、それに似た話を作れたので、自分としては満足している。


 反省点は、キャラクターの魅力がないことに尽きる。知ってることをべらべら説明してもしょうがない。そんなことからはキャラクターの魅力は出てこない。

 以後の作品は「魅力的なキャラクター」を少しは意識したし、PVも改善している。

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