第10話 神☆降臨

「あの………良ければなんですけど…」


腕のプルプルが左に移ってすぐに俺はそう声をかけた。


「はい?」


何なんだろうと頭を疑問符を浮かべた水葉さんが首を傾げて僕を見る。


うわっ!! なにそれかわいい!!


本当に可愛くて優しい神様みたいな水葉さんにこんなことを頼むのは何なのだろうけど。


けど、けれど!! けれども!!

私、こればかりはお願いしたくなってしまうのです!!!


俺は覚悟を決めえ、嫌われたのならばこれを思い浮かんだ頃の俺を殺そうと決心し、大きく息を吸うと、


「彼女風ボイスやってくれません?」


そう、なるべく平常を装って聞いた。


「…………はい?」


水葉さんはやはり意味がわからないと、首の角度をさらに急にして頭に特大の疑問符浮かべる。


うわぁ、そんな角度でもかわいいなんて反則じゃん。たれてきた横の髪をかきあげるとかそんなの美女にしか許されないやつじゃん……。


とまぁ美人に恐れ慄くのはあとにしておいて、俺は首を傾げながらもちゃんとマッサージを続ける真面目な彼女の目をしっかりと見つめた。


こういうのは戸惑ったって仕方ない。

今の俺のできる限りの言葉で説得するのみ!!!


「いや、そのほんと悪い意味はなくてその、俺その水葉さんの声が好きで、その、いっつも寝れないから、こういうときだけは、そのそういう声を聞いて和みたいというか? なんというか癒やしを求めてる的な感じて、あのその……………はい…………。」



俺はそこで今までGTR波の加速度で回してきた舌を止める。


ダメだっ!! このままだとただのキモオタになってしまう!!

好きなものを話すときだけ早口になるタイプのキモオタになってしまう!!!!


フィギュアは買うし、アニメも見るし、何なら推しの声優の握手会に並ぶけど俺はキモオタではない!!!!!!!!


キモオタではなく、かつ誠実にお願いの意志が伝わることとは………。


俺は大学受験の時よりも何倍も頭を回し、休日のマ○クの回転率ぐらい回してとある答えに行き着いた。


スッとベッドの上に正座をした俺は、右手と左手を順に前に出し、両手のひらで三角形を作り、そこに向けて頭を思いっきり下げた。


そう!!!

これは日本に伝わる最大限の謝礼方法!!!

世界の誰でもこの前では穏やかな心になるとかならないとかまことしやかに囁かれていたりいなかったりするこれはっ!!!!


「お願いします!!」


DO・GE・ZA☆


俺はベッドに頭をこすりつける、清々しいほどの土下座を披露した。


こんなに心からの土下座は多分人生で初めて、かつ最後…………であってほしい。


「…………。」


黙る水葉さん。


俺はやっぱ引かれたかと、嫌われてしまったかと怖くなりながら頭を上げた。


するとそこには…………


「…………少しですよ?」


女神もひれ伏すような天上の笑みを浮かべた水葉さん…………いや、水葉神がいた。

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