第7話 右足の恐怖と、その先に待つもの……

「イダイイイィイイイイイイ!!!!!」


俺は人生最大の声量で叫んだ。


「もう少しですからねー」


優しい声色でもう何度目になるその言葉をかける水葉さん。


いや、少しじゃないのよ!!

それあなたが俺の足に触れた2秒後ぐらいからずっと言ってるから!!!


やめてやめて!!!!!


死ぬから!!! 痛いから!! めっちゃ気持ちいいから!!!!!

脳が気持ちいいと痛いの信号の二つでパンクしちゃうからぁ!!!!!!!!!


拝啓、足揉み前の俺。

足揉みは、肩と比べ物にならないくらい痛いです。

それでいてとても気持ちいです。

正直毎秒意識がいきそうになります。

覚悟しておいてください。

敬具。


「イックゥゥウウウウツウツウウウゥゥ!!!」


過去の自分へ手紙を書き終くという人生の一区切りがついたところで、俺はそう叫んだ。

上がれ気分、叶え夢、爆ぜろ世界、舞い上がれ俺の魂ィィ!!!!!!!!!!!!!!!!


俺はもう今世に深夜アニメの7話以降を見ていないこと以外未練を無くして、安らかに逝く……………


「逝かないで下さーい。」


…………かと思われた瞬間に、水葉さんのその一言で戻ってきた。


いやぁ、危なかった。

後一秒遅かったら、逝っちゃってたね。


「はーい行きまーす。」


俺が絶命のピンチを逃れたと一息ついたところで、水葉さんがそうつぶやき………足のツボをこれでもかと押した。


「ウゥゥウウウウギャアアアあゝ唖々嗚呼!!!!!! ヤバいマジででヤバい!! しぬしぬしぬしぬ逝っくうううううゥゥ!!!!」


もう俺は声帯を犠牲に痛みから逃れようと、死ぬ気で叫んだ。


恥も外聞きも世間体もなんにもない。

ただただ叫び続けた。


こっ、こんだけ叫んだのならさすがの水葉さんでも少しぐらい止めてくれる………。

俺のそんな希望的観測は、


「まだもう少しありますからねー。生きて下さーい。」


彼女ののんびりとした優しい声で見事に打ち砕かれた。


………………マジっすか?

今でも前世と今世と来世の三本線で反復横とびしてるのに、コレ以上行っちゃうの?

良いの? おれ逝っちゃうよ!??


「オニィイイイイイイイイイ!!!!アァァアアァアアアアアア!!!」


俺は水葉さんへの恨みを叫びながら、逝った。


◇ ◇ ◇


「はーい、終わりでーす。」


俺が逝った数分後、水葉さんから蘇生の一言が放たれた。

ふぅ危ないところだった…。

逝った後に神様に異世界転生告げられてチートを選ぶところだったぜ……。

もうあとは聖剣エクスカリバーを選んで、神様に挨拶するだけで異世界に飛べる所まで来てしまっていた。


異世界ねぇ。

今人気だけど、俺みたいなのが転生したところでいくら聖剣持ってようが、初手でゴブリンかなんかに殺されて終わりよ。


俺を召喚するために多大な犠牲を払った国家はご愁傷さま。

勇者はゴブリンにやられて死んで、蘇生も不可能さ。


なぜなら俺の体はゴブリンのお腹の中だからさ!!!!


「終わったぁ……。俺の、俺の大事な何かが壊れたような……。」


未だにじんじんする右足ちゃんをさすって言う。

めっちゃ気持ちよかったけど、めっちゃ痛かった…。


でももう終わりだぜ!!!

この後は腕とかだから痛くないはずさ!!!!!


この強烈な心地よさもクセになって離れるには少し名残惜しいけど、痛いからね。

どれだけ気持ちよかったって、痛さもそれに比例していたら、人間耐えられないのよ。


「じゃあ左足行きますねー。」


……………What did you say?

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