第5話 肩は痛気持ちいいのさ
「肩どうですか、気持ちいいですかね?」
お疲れ様が嬉しすぎて泣きそうになってたから忘れてたけど、今マッサージ中だったわ。
「はい…。痛気持ちいくて、最高です。」
俺は心の底からそう答えた。
マジでさ、プロってすごいんだ。
ずっと凝っててどんなに肩を回しても、マエケンもびっくりなくらい回しても取れなかったコリをちょっと揉んだだけで取っちゃうんだわ。
これは通う人の気持ちもわかるわ。真面目に依存しそう。
「いや本当に気持ちいいですよ。ありがとうございます。」
感謝感激雨あられ。
これで明日からの俺の社畜ライフが捗りそうだぜ!!
「いえいえ、そう言っていただければ嬉しいです。」
ヤッダン、この子本当に天使なのかしら!?
おじさんそんなこと言われたら喜びのあまり月まで飛んでっちゃう!!
俺が謎のおじさんムーブをかましたとき、
「ちょっと強めになりますねー。」
水葉さんの掛け声とともに肩に電流が走った。
ヤバイヤバイヤバイ!!
痛い痛い痛い痛い!!!
でも気持ちいィィイイイイ!!!!
何これ!?
なんか肩の骨と骨の間をグイッて持ち上げられるような感覚で、とてつもなく痛くてとてつもなく気持ちいいんだけど!!
痛いヤバい!! けど、気持ちいい!!
止めてほしいのに、辞めてほしくないこのジレンマ。
やべぇ、俺の新たな扉が開きそう!!!
「痛くないですかー?」
水葉さんの声が聞こえるが正直それに対応しているような余裕は俺にはなかった。
痛い痛い痛い!! けど気持ちいいイイイ!!
水葉さんが俺の肩に力を入れるたびに、ビギィンというか激痛とともにそれの倍くらいの心地よさが走る。
一回で腰が浮きそうになるのに、それが何十回も連続で来るんだから…………もう、死んじゃう。
「もう少しギア上げますねー。」
俺の肩から手を離して、追加のオイルを手に馴染ませていた水葉さんがさらっとそんな事を言った。
「えっ!?」
俺は思わず声を上げてしまう。
今でもギリのラインで耐えてるのに、これ以上上げられたら…………。
「大丈夫です。ちょっと痛いですけど、その分気持ちいいですから。」
なんだろう、今まで天使のように思えていたその声と笑みが、今の俺には悪魔のように聞こえる。
あっ、ちなみに俺は下向きなので顔は見えていない。
……これ言うの何回目だろう。
「えっ、あの、ちょっ…!!!」
俺のそんな最後の抵抗も虚しく、水葉さんは俺の肩に……
「はい、息を吸ってーーー!」
……10万○ルトを放った。
「ピカヂュウウウウウウウウウ!!!!」
俺はその後数分間に渡って、某電気ネズミの名前を叫び続けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます