第3話 お顔のマッサーーーーージ!!

「そうなんですか。でも今はASMRとかが流行ってますよね。」


今度は首筋から顎のマッサージをしながら水葉さんが言う。


「そうですねー。俺もよく聞きますけど、それでも寝れなくて…。」


本当に昔はちょっと聞くだけでコロッと寝れたんだけどな。


大人になって働き始めてからは、楽しみが睡眠だけなのに、その睡眠すらまともに取れていない。


本当に神様は俺にもう少し優しくしてほしい。

俺の前世が連続殺人鬼とかだったなら、まぁ納得するけどさ…。


「それは大変ですね。」


耳下のツボをグリグリ押して水葉さんが共感してくれる。


あぁそれちょっと痛いかも……けどめっちゃ気持ちいい。


自分でやったら絶対できないとこだわ………死にそうなほど気持ちいい…。


「あぁでも、昨日見つけた『ミズハChanel』ってやつは、すぐに寝れたんですよね。」


陰キャあるある、自分の好きなジャンルになると饒舌になる。


マッサージ屋さんのお姉さんにASMR勧めるのはどうかと思うけど、話し始めてしまったら仕方ない。


だって止まらないもん。


「………そ、そうなんですねー…。」


さっきまではすぐに相槌を打ってくれていた水葉さんが今回ばかりは少しだけ間を開けて、そう呟いた。


なんだろ、どこか棒読みのような気がする……。

まぁ気のせいかな?


マッサージもおでこに差し掛かって終盤だし、そっちに集中してるんだろう。


「ストーリーを話してくれるようなやつだったんですけど、声が本当に好きで。あぁいう優しい声俺大好きなんですよ。」


本当に俺あの子好みだわ。

イラストでしか見えなかったけど、あんな声した人が現実にいるとか思ったら、それだけで興奮するよね。


一度でいいから、直接寝かしつけてほしい。


「っ!…………。」


水葉さんが息を呑んだ。


どうしたんやろ?

俺の気持ち悪い妄想が伝わったとかそんなんかな?


「あぁそれで言うと水葉さんの声も好きですよ。優しくて本当に眠れそうです。」


俺は少し恥ずかしいけど、水葉さんの声のASMRポテンシャルが高いので、言ってしまった。


いやこれで水葉さんがASMR配信者にでもなってくれたらバンバンザイよ。


何千回もリピして死にそうになるくらい聞く自信がある。


「そ、それは良かったです。そういうことを言われたのは初めてなので嬉しいです…。」


少し戸惑いながらも、水葉さんがそうはにかむ。


ちな、俺は今マッサージをされてるので目を閉じているから、はにかむというのは俺の妄想に過ぎない。


でも、多分声色的にはにかんでた。きっと優しく微笑んでた。


異論は認める。まぁ検討も何もしないがな。


水葉さんは俺に照れながらはにかんでた。

もうこれは決定事項だから。

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