しんかんのふたごがなかまにくわわった!

「えへー、たのしかったぁ」

「たのしかったね!」

 こんなに遊び倒したの、久しぶりかもしれないな。

 駅からの流れで商店街を散策おさんぽ――ついでに買い物もして、家に着いたらお昼を食べて、レース勝負テレビゲームに、市民プール……昼寝を挟んで、アパートの敷地でおやつタイム、兼・スイカ割り大会。ご近所さんとお喋りしつつ、丁度いい日陰の場所で、手持ち花火を少し遊んで……。

「二人とも、嬉しそうでなによりだ」

 今日の私は、『勇者』というにはテイのいい――子守、ないしベビーシッター。

 でも、この子達の小さな平和や笑顔を守るのだって、勇者として大切な使命やくわりだ。なにより小さな子供の『夏休み』は最高であって然るべきもの。私がしっかり守らねば!

 とはいえ夏祭りはまだ先だし、水族館や動物園は混んでいて――近場の範囲でやれることしかやってあげられないが。

「まの、おなかすいちゃったー」

「ぼくも、おなかぺこぺこ……」

 スイカでお腹は膨れないからな。その上ずっとはしゃぎ回ってたし、二人の体内では必要以上のエネルギーが確実に消費されていることだろう。

 ――それこそ、私の目論見通りなのだが。


🎶


「わ、びっくりした!」

「ゆうしゃさま、スマホなってるよ!」


「時は来た。今こそ決戦の時刻とき!」

「けっせん?」

「しってる! さいしゅーけっせんとか、バトルみたいないみ!」

「幹也、よく知ってるな」

「えへへ……」

「――君たちには神官の末裔として、勇者のパーティに加わってもらう」


「「パーティー・・・・・!」」


 とても目を輝かせている。

 おそらく、捉えている意味は違うだろうが……まあ、その解釈も間違いではない。何故なら――。


「そう、焼肉パーティー・・・・・・・だ」

「「やきにく!」」


「バーベキューは、私ひとりの管轄では難しいからな。

 ということで、これから焼肉屋に行くぞ。君たちは初めてだな」

 この間の通話中、夕飯の予定を考えていた時――ふと思いついておばさんに直接連絡ラインしたのだが、実に僥倖な情報だった。

 新しい体験は、二人の楽しみに繋がる。『肉』という要望リクエストにも応えられるし、なにより美味い。選択肢としては最上に近いだろう。

「早速だが、お外に出る支度をしようか。

 それが済んだら――勇者一行パーティ、商店街へ出発だ!」


「「おーっ!」」

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