『はんぺんさんとかまぼこさんと……』

やましん(テンパー)

『はんぺんさんとかまぼこさんと……』


 あるひ、はんぺんさんとかまぼこさんが、お皿の上で、言い争いになりました。


 自分の方が、美味しいと、双方が主張して譲りません。


 『ぼくには、やまいもくんと、卵白さんが入ってるんだ。君には、入ってない。だから、ぼくが美味しいにちがいない。』


 『いやいや、なにかが、入っているから、美味いという理由にはならないだあ。より、こりこり感、噛みごたえがあるから、自分が美味しいに決まっているだ。』


 すると、それを聞いていた、ちくわさんが、参戦してきたのです。


 『まてまて、ふわふわ、ソフト感、焼き具合の香ばしさ、食感の優しさ、味。全てにおいて、わたしに勝るものはない。』


 『へぇー。だって、ちくわさんは、かまぼこくんの、変形バージョンだろ。出てくる資格がない。』


 はんぺんさんが、言いました。


 『なにおー、あんただって、やまいもとか以外は、かまぼこくんの、変形だろ。』


 ちくわさんが、応酬しました。


 『はんぺんさんは、長い間、関東地方限定だったんだ。ぼくは、はるか以前から、全国区だからなあ。んだ。んだ。』


 かまぼこさんが皮肉りました。


 そこに、かにかまぼこさんが、わって入りました。


 『問題の本質は、より美味しいかどうかである。ならば、わがはいにかなうものがいるわけがない。』


 『あんたは、かにさんの、偽物だろ。』


 はんぺんさんが、言い返しました。


 『まさに、そうだべ。』


 かまぼこさんが、そこに、同意したのです。


 はんぺん=かまぼこ連合の成立です。



 そこに、こんどは、じゃこてんさんや、すまき、さんが、乱入してきました。


 さらに、なるとちゃん、が加わり、ついに、言い争いから、乱闘に発展したのです。


 見かねた、お醤油さんが、仲裁に入りましたが、まさに、火に油を注ぐ、という感じで、どうにもなりません。


 『これは、困ったな。仕方がない。マヨネーズくんに、仲裁に加わってもらおう。』


 急遽、マヨネースさんが、調停に入りました。


 『なんで、外国が干渉しいて、くるだあ。内政干渉だあべ。』


 かまぼこさんが、怒りました。


 『まあまあ、かまぼこさん、マヨネースくんは、悪くはない、さそった醤油さんが良くない。』


 はんぺんさんが、なだめるように言いました。


 両者に、再び、亀裂が走ったのです。


 『あんたは、西洋かぶれのきらいがあるもんね。』


 かまぼこさんです。


 『なに、西洋かぶれ? あんただって、盛んに輸出してたろ。リーマンでちょっと落ちたらしいがな。嫌なら、出るな。』


 『なにお~~~~。ローカルなくせに。』


 『言ったなあ~~~~~もう、ゆるさない。』


 『きみたち、要は、美味いかどうかなのであろう、本質を見失いませぬな。』


 と、かにかまさん。


 『「足」=『歯ごたえ』、なら、じゃこ天もまけないぞなもし。あの、異物感は、最高ぞな。』


 『カニは、食の王者。その大衆化に努めたことに、悔いはないのである。』


 『まてまて。しょせん、きみたちは、同じ穴のなんとかだろう。』


 なんと、生ハムさんがこの乱闘騒ぎに、入ってきたのです。


 

       ***************




   今夜は、おいしく頂く気が、なくなりました。


   せっかく、無いお金を出して揃えたのに。



   お皿ごと、全員、冷蔵庫で、頭を冷やすこととなりました。 

 

   


          🐡  🐡  🐡

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『はんぺんさんとかまぼこさんと……』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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