第8射 3人の美少女、そのさん
「よっ、よ〜し、こ、これにしよ〜っと」
選んだ武器を手に取る俺。その際、恥ずかしさを誤魔化すためにわざと声を上げ、更には平静なフリをして美少女達に話を振る。
「ど、どうだ? にっ、似合うだろっ?」
「「う、うーん……」」
どうやら3人ともイマイチの様子。選んだ武器の中じゃ1番ボロくなくて強そうなやつなのにさ、この
まぁ確かに、大剣って1発はデカいけどその分重くて隙ができるし、何より連撃できないんだよなぁ。俺もゲームじゃDPS重視の武器を選ぶからどうしても強くて連撃できるやつにしちゃうし。
んで「やっぱ
「あのぉ、何かお探しですかぁ?」
「えっ? い、いや、特にこれっつうのは……」
この時「あ、この感じ……服を見てたらショップの店員さんに話し掛けられたときっぽいな……」って思った。あ〜ナツいなぁ……
「うふふぅ、そうなんですねぇ? ん〜、それならぁ、コレが似合うと思いますよぉ? ほらぁ、持ってみてくださぁい、この
「んー? どれどれ……って、はいぃぃぃっ!? 何これこんなんあった!? ってかちょっ、こっち向けないで! 黒いトゲトゲがマジ怖いから!」
「は〜い、気をつけますねぇ……チッ……」
……あれ? 今さ、キュピィちゃん舌打ちしてなかった? あ、いや、すぐに顔を見たけどいつも通りニコニコしてるし、俺の勘違いか……?
その後、キュピィちゃんの顔色を窺いつつ武器を選び直した結果、どうにか3人からOKを貰えたよ。
因みに、俺が選んだ武器は
「ガン見すると変態扱いされそうだし、コッソリ見るか……」
先ずはペコラちゃん……うん、変わらずの魔女っコスチュームで黒がよく似合ってる。靴も黒ブーツなのがグッド。しかも、小柄な彼女が長杖を持ってるこのアンバランスさも良き。てかめっちゃ可愛い!
次はアーネちゃんだ……ほう、薬師だからもっとお堅い服装かと思いきや、寧ろ探索しやすいように軽装なんだな。フォレストグリーンのタイトなタートルニットに、カーキ色のショートパンツとトレッキングシューズ、そして美脚には黒ストッキングっていう、肌を露出せず自然に擬態しやすい色にしてるのもいいね!
最後はキュピィちゃんだけど……そう、暗殺者っつうからてっきり黒装束に黒頭巾と黒マフラーみたいな格好をイメージしてたんだけど、全然そんなことないんだよね。水色のカーディガンとスニーカーに、白のブラウスとフレアスカート……って、ゴリッゴリの清楚系コーデじゃん! 暗殺者の「あ」の字もないよ!? そんなんで仕事やれんの!? ……ま、まぁ、見てると癒されるから俺的には嬉しいけど……ってかさ、みんな服装が前世っぽくね? しかも似合いすぎじゃね?
なんて、いつの間にかただのファッションチェックと化してた時、神様が横から口を挟んできやがった。
「……はじめから……たわけめ……それより……はよいけ……」
「……!? わっ、分かってらい! ちょ、丁度これから助けに行こうとしてたんだい!」
その直後、神様に口頭で反論しちまった事実にハッと気づく。だが時既に遅し。美少女3人の表情は明らかに俺を訝しんでいた。
こ、これ絶対にヤバい奴認定されてんじゃん……うぅ、俺もうムリぃ……ってマジ凹みしてたんだけど、どうやらそうじゃなかったみたいで……
「そうね! 早くあいつらを助けに行きましょう!」
急に乗り気なペコラちゃん。アーネちゃんとキュピィちゃんも無言で頷いてるし。
……あり? さっきの訝しむ表情はどこへ行ったの? って感じで呆気に取られたよ。すると、そんな俺の顔を見たペコラちゃんが続けて話す。
「ほらっ、そんなアホ面してないで早く行くわよ! さっきの痛い独り言は忘れてあげるから!」
そう言って歩き出すペコラちゃんに「お、おう……」って返事しかできなかった俺、マジでダサかったと思う。しかも慌てて追いかけちゃったし。
とまぁ、なんやかんやあったけど、これから本格的にペコラちゃんの仲間を助けに行くこととなった……が、1つだけ気になることがある。それは、あれだけゴブリン共やペコラちゃんが大声を上げても、他のゴブリンや魔物に一切襲われなかったことだ。普通ならいつ襲われてもおかしくない状況だったと思うんだけど……
「まっ、襲われない方がいいに決まってるし、ラッキーってことで!」
とりま、運が良かったと思うことにしたよ。だって、考えたって分からないもんは分からないんだからさ。
そんな前向きに考えながら洞窟の奥へと進んでいると、いきなり神様から嬉しい報告を受ける。
「……うれしい……ほうこく……ろぐいん……ぼおなす……たからばこ……」
……ん? 嬉しい報告? つーか今、ログインボーナスって言った? それに、宝箱って単語が聞こえたような……? えっ、マジで!? ログボなんて用意されてんの転生者って!? よっしゃー! 神様サイコ……んん? でも、なんで宝箱? 別に直接でもよくね? 何故に神様はそんな手間掛かることしたんだ……?
神様の意図が読めずに悩んでたら、あっさりと答えてしまうKYな神様。
「……おぬし……すき……こういうの……なんせ……きんぱつ……おさななじみ……じゃのうて……せいはつ……せれぶ……えらぶ……じゃからな……」
……んなっ!? そりゃゲームの話じゃねぇか! 確かにタダでアイテムが貰えるから選んでたけど、別に宝箱探しがしてぇわけじゃねぇんだよ! 勘違いすんな!
はぁ……ったく、変な捉え方しやがってあのジジイ……んん? そういや、なんでゲームのプレイ内容を知ってんだ? あのゲームをやってたのはもう10年以上前だってのに……って、あれ? もしかして神様って、俺の前世の記憶を視れたりするのか? ……マ、マズい、もしそうなら死ぬほど恥ずいしマズいぞ……
「……もちろん……みれるぞ……おぬしの……あれこれ……」
……ぎゃ、ぎゃぁぁぁーっ!! やめてぇぇぇーっ!! 俺のアレコレを覗き視るのは勘弁してぇぇぇーっ!! ってか、超おかしくない!? 神様って前世の神様じゃないよね!? 全然前世を司ってないよね!? なのになんで前世のこと視れんのさ!? おかしい! おかしいよそんなの! おかしいって絶対っ!!
こんな具合に、前世でのアレコレを視られたくない一心で見苦しくも反抗してると、俺の耳にある一言が入ってくる。
「確かにおかしい……」
そう呟いたのはアーネちゃんだった。
そして、その一言は俺の全てを肯定してくれてるように感じ、あまりの嬉しさについ反応してしまう。
「だよね! やっぱおかしいよね!」
「キャッ!? いっ、いきなり大声出さないで! ……はぁ、けどそうですね……おかしいのは明白です」
「ですねぇ。耳を澄ませても特に何も聞こえませんしぃ、気配を読もうにも肝心の気配がないですからぁ」
「まぁね! これだけ静かなんだし、確実に何かあるわよ! あっ、そうなると……あいつら無事かしら?」
……おや? なんだか話がおかしな方向に向かってないか? まるで、魔物が1匹も現れないなんておかしいって言ってるように聞こえたんだけど……まっ、まさか、アーネちゃんは俺のためにおかしいって言ったわけじゃない……!?
完全に勘違いと分かった途端、死んだ魚のような目をしてフラつく俺。だが、それでも止まることなく先へと進む。
……それから少し進んだとこで何かを発見する俺達。その何かとは、なんの変哲もない通路に置かれたなんかヘンテコな箱だった。
「なんでこんなとこに光る箱が……?」
なんかヘンテコな箱は通路脇にこそ置いてはあるが、気づかないなどあり得ないほどに存在感が半端ない。それは、ボンヤリとだが金色に発光することで自らの存在を示してるからだ。
「これだけの存在感ってことは……あ、もしかして、これが神様の言ってた宝箱という名のログボか?」
「「えぇっ!? 神様っ!? 宝箱っ!? ん? ログボ?」」
3人の美少女は示し合わせたかのように驚いた。
しかし、その一方で俺だけは別のことで驚く羽目になる。
「……あれ? この宝箱って……ダっ、ダンボール!?」
そう、ダンボールだったのだ。大きさはみかん箱と同じく見慣れたサイズで、上からしっかりとガムテープで封されて……ない!? はっ、剥がされてる!?
急いで中身を確認するとあら不思議、そこには何も入ってなかった。それによく見るとあちこちにへこみがある。これはダンボールの存在を知らない奴がやったに違いない。ズ、ズバリ、犯人はこの3人の中に……ゴクリッ……
「……まじめにやれ……ぬすまれた……わしくやしい……」
……けっ、なんだよ「儂悔しい……」って、ブリっ子してんじゃねぇよキメェから。
だけどその気持ちは分かる。俺だって悔しいし許せない。もし全ユーザーに配布されるはずのアイテムが自分だけ貰えなかったら? もし自分が欲しかったアイテムを他プレイヤーに横取りされたら? はぁ、そりゃ発狂しちまうくらい地獄なことなんよ。つまり、今回奪った奴にも相応の……いや、それ以上の地獄を見てもらわねぇと割に合わんってことだ!
この異世界に来て嘗てないくらい燃えてる俺。そんな俺に当てられたのか、美少女達もやる気に満ち溢れてるみたい。
「……!! そうだ! この中にあったアイテムを取り戻しましょ!」
「そうね。本来なら私達が神様から頂けるはずのモノですし」
「ですねぇ。盗られたら盗り返さないとですからぁ……倍返しでぇ」
「よっしゃ! ミッション追加も三ツ星クリアでコンプリートしてやろうぜ!」
「「お、おぉ〜?」」
てな感じで、最後はイマイチ締まらなかったけどさ、この調子なら本当にミッションコンプリートも楽勝だぜ! って、そう思ってた時期もあったんだけど……ーー
「ーー……くそっ、どうしてこんなことに……」
現在、俺達4人は広い空間のなか、四方を向いて背中を預け合っている。
何故なら、数十匹ものゴブリンに囲まれ、その奥には1匹の強キャラ感漂う魔物が目を光らせてるからだ。
それにより、美少女3人の不安と緊張が背中越しに伝わってきていた。
「……いや違う、そうじゃねぇ。これからどうすりゃいいのかを考えるんだ……」
急変の事態にも拘らず、どうすればこの窮地を乗り切れるのかと、冷静に思索を試みるのであった……
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