第7射 3人の美少女、そのに
「……な、なーんてね? あはは……じゃ、じゃあみんな、元気でね!」
魔女っ娘は不自然な笑顔のまま別れを告げ、そして再度振り返る。
きっと、俺達がその不自然な笑顔に気づいたことに彼女も気づいたのだろう。だから、わざと冗談っぽくして最期の別れを有耶無耶にしようとしたんだ。俺達に気を遣わせないようにって……でも……
「待て!!」
そう叫んだのは誰でもない、この俺だ。
だって、自らを「穢れた女」と卑下し、仲間のために生命を賭そうとする優しく健気な少女を黙って見過ごせるわけねぇだろ!?
まぁ本音言うとさ、俺だって今すぐにでもこんなとこ脱出してぇよ……けど、けどな! 女のコを見捨ててまで脱出したいなんて微塵も思わねぇ! 寧ろ、微塵でも思うような男はクズだ! 屑野郎だ! 塵だけにな! ……はぁはぁ、つい熱くなっちまった……でも、これで覚悟はできた!!
「……な、なによ……私、早く助けにーー」
「ーー俺も行く! 覚悟だってもうできてる!」
「……え? えぇっ!?」
こちらを振り返ることなく突き放そうとする魔女っ娘に対し、そんなん知るかと言葉を遮って同行を志願する俺。そんな俺の言動に驚いた魔女っ娘は思わず振り返る。
「な、なんで……? 私達は知り合ったばかりなのに……どうして……?」
「どうして、か……まぁ、それが俺の使命だからかな……あっ、神様に頼まれたやつとは別モンだかんね?」
「ぷっ、あははっ! 何それ使命って! それに神様とか冗談下手すぎっ!」
うーん、本当のことを言ったつもりなんだけど……まいっか! この優しく健気でちょっぴり強がりな少女が心から笑ってくれたんだからさ!
「……ねぇ、本当にいいの?」
「もちっ! 俺に任せとけ!」
てな感じで魔女っ娘から承諾を得られ、俺も一緒に行けることになったんだけど、問題は他の2人が付いてきてくれるかなんだよね……ここに置いてくわけにもいかないし……
「……私はいいですよ? というか、それしか選択肢はないですけどね?」
えっ!? まだ聞いてもないのに……はっ! もしやエスパー!?
「うふふぅ、もちぃ、私もご一緒しますよぉ」
あ、俺の台詞パクった……じゃなくて、このコもエスパーなの!?
「み、みんな……本当にありがとね! それと、よろしくお願いします!!」
うわっ!? ま、眩しい! 魔女っ娘の不自然じゃなくなった笑顔がこんなに輝いて見えるなんて……! ん? あれ? なんか、胸が苦しい……? えっ、えっと、もしかしてこれって……
「……こい……」
「こっ、恋っ!?」
「……これから……どこいく……きめよ……」
あぁなんだ「どこ行く」って言ったのか……一瞬ドキッとしちゃったよ……ったく、紛らわしい言い方すんなクソジジイ!
「ねぇ、これからどこ行くの?」
「だっ! かっ! らっ! 紛らわしいっての!」
「……え?」
「……え? あれ…….?」
しっ、しまったぁぁぁーっ!! てっきりまた神様かと思ったのに、まさか魔女っ娘だったなんてぇぇぇーっ!! おおお落ち着け! 落ち着くんだ俺っ! はっ、早く、早く誤解を解かなければ!
「い、いや〜、実は今、クソジ……神様と交信しててさ〜……って、あれっ!? 泣いてる!?」
「うぅ……だって、急に怒るんだもん……」
「いやっ、あれは違っーー」
「ーーこの最低男っ!」
「ごはっ!」
「うふふぅ、最低なクソ野郎ですねぇ!」
「ごふっ! って、えっ? クソ野郎っ!?」
心に大ダメージを負って四つん這いになった俺。
も、もう勘弁してください……俺のHPは残り1です……これ以上何か言われたら立ち直れません……ってか、神様のせいなんだから、この状況どうにかして……
「……しかた……ないのぅ……それぃ……」
神様の掛け声が聞こえた瞬間、美少女達は時が止まったかのように動かなくなった。3人とも視線はどこか遠くを見つめており、それは神様に何かを見せられているからだろう。あとは、これで誤解が解けてくれれば……
「……そっか、そうだったんだ……」
魔女っ娘はそう呟いた。まるで真実を知ったかのようなその口振りから、誤解は解けたとみて間違いない。
「……これで分かってくれた? あれは誤解ーー」
「ーーえぇ、よく分かりました! あなたが女の敵であることがね!」
「……えっ?」
「うふふぅ、本当に最低なクソ野郎だったんですねぇ!」
「えっ? えっ?」
どっ、どどどどういうこと!? なんで眼鏡っ娘とおっとり系美少女はキレてるわけ!? 俺今何かした!? してないよね!? もう、わけわかめだよ!?
「……おぬし……ぜんせ……さいご……みせた……」
……おい、何してくれとんじゃこのクソボケジジイ! あんな最低最悪の死に方を見せたらそりゃこうなるわ! 一体どう収拾つければいんだよこれ!?
「……こころ……いやす……まほう……」
……はぁ? そんなん覚えてねぇし……つーか、もし覚えてたら速攻で使ってるっての!
「……こころ……つよく……ねんじる……」
……あぁ、またこれか……まっ、これで覚えられんならやらねぇ手はねぇよな!
取り敢えず、気分が落ち着けるようにイメージして……癒えろ、癒えろ、癒えろ、癒えろ、癒えろ、癒えろ、癒えろ、癒えろ、癒えろ、イ・エ・ロ!!
【……リラック……ミャー♡ ……】
「……!! キタっ! って、おっ! 今のクールビューティーの声じゃん! しかもミャー♡ っつった! 超カワイイ!」
クールビューティーらしからぬカワイイ声を聞けて燥いでると、3人の美少女から冷たい視線を浴びることに。しかし、これはこれでアリかも……って思う今日この頃。
「ゴホンッ、そんじゃあ唱えますか! 治癒魔法! リラックミャー♡」
「……きもっ……」
ジジイはスルー。
「……またか……」
美少女達に放った魔法は光の粒となり、彼女達の全身を優しく包み込んだ。そして、その光の粒は軽度の傷痕や汚れ、それに状態異常を綺麗に消し去り、更には険しい表情すらも穏やかにさせた。
もしこれでダメなら潔く土下座しよう、そう考えていたら……
「……まぁ、しょうがないか」
「そうですね、男は所詮こんなものですよ」
「うふふぅ、殿方はみんなクソ野郎ですからねぇ」
これは、助かった……のか? こ、怖いけど、ここは確かめないといけないとこだよな?
「……つ、つまり、どういうこと……?」
「「つまり! 許すってこと!」」
美少女達は同時に声を上げた。とても許してるとは思えない態度だけど許してくれたみたい。まぁなんにせよ、許してくれたんならそれだけで満足だ……ふぅ……
「でさ、これからどこ行くのよ?」
うーん、どこ行くと言われてもなぁ……とりま、手当たり次第としか答えられないし……
「あっ、通路の反対側にも小部屋があるけど、そこに行ってみる?」
こらこら、勝手に話を進めるでないよ魔女っ娘ちゃん。それよりも先にすべきことがあるでしょ? ってなわけで……
「んー、取り敢えずは自己紹介が先かなぁ?」
「ねぇ、それって戦力の把握もってこと?」
「イエース! オフコース!」
「いえ? おふ? よく分からないけど、確かにそれは事前にしなきゃマズいわね」
俺と魔女っ娘のやり取りによって、先ずは自己紹介をすることになった……が、その直前に眼鏡っ娘が口を開く。
「あっ、その前にこの部屋から出ませんか? 生臭いやら血生臭いやらで気分が悪くなりそうで……」
「「それな!!」」
満場一致で移動が決定。魔女っ娘の言ってた例の小部屋へ行くことに。
んで、早速このヤリ部屋から出て十字路をそのまま突っ切る。勿論、足音を立てないようにゆっくり歩いて。
少し進むと噂の小部屋を発見。物音や話し声はしないから普通にお邪魔した。
この小部屋はヤリ部屋に比べて少し狭いけど、生臭さは薄いし、置いてある武器も悪くない。要は、ここの方が大分マシだから移動して正解ってこと。眼鏡っ娘グッジョブ!
「よしっ、それじゃあ自己紹介として、名前と年齢と特技(それからスリーサイズと下着の色)を言うように!」
「……ん? 今何か余計なのがあったような……?」
「ははは……き、気のせいだよ……」
「そうですか? ならいいですけど……」
……とまぁ、自己紹介を始める直前に眼鏡っ娘から睨まれたけど、その後は滞りなく自己紹介も進んでいき……ーー
ーー……ふむ、自己紹介で得た情報を脳内でリスト化しておこう……ってそういや、このリスト化も『神脳』があってこそなんだよなぁ……感謝感謝だ……
【魔女っ娘:ペコラ=ミルキーウェイ・18歳・魔導士・お菓子作りと火魔法と杖術が得意・虫全般が苦手・魔力量には自信アリ・童顔・ミルクキャンディーといえば母の味・顔レベル88(俺調べ)】
【眼鏡っ娘:アーネ=サンダース・16歳・薬師・鶏肉料理と植物鑑定と調合が得意・蛇と臭いものが苦手・嗅覚には自信アリ・魔女を目指している・驚かされるのが大っ嫌い・顔レベル93(同上)】
【おっとり系美少女:キュピィ=スリーミニッツ・17歳・暗殺者・掃除と投擲と短剣術が得意・蜂と蜘蛛と雷が苦手・聴力と動体視力には自信アリ・綺麗好き・生粋のマヨラー・顔レベル90(略)】
……おぉ、流石は記憶力10倍だ。もう覚えちゃったよ。
魔女っ娘がペコラちゃんで魔導士。うん、見た目通りで分かりやすい。
眼鏡っ娘がアーネちゃんで薬師。確かに薬師らしく知的な雰囲気を醸し出してるな。
おっとり系美少女がキュピィちゃんで……暗殺者なんだよなぁ。意外すぎて逆に言葉が出ねぇ……けど、心強いから問題なし!
他にも気になる情報は沢山あるけどさ、今は魔女っ娘……じゃなくて、ペコラちゃんの仲間を助けるために役割を決めないとな!
その1、俺は前衛でタンクとして魔物を引きつける。
その2、ペコラちゃんは後衛アタッカーとして後方から火魔法で倒す。
その3、キュピィちゃんは遊撃手として撹乱や不意打ちで勢いを削ぐ。
その4、アーネちゃんは仲間の援護や植物鑑定などを。
とりま、主にゲームの知識だから上手くいく保証なんてないけどさ、俺達ならなんとかなるような気がするんだ……ーー
「ーー……って感じなんだけど、どうかな?」
「うん! いいと思う!」
「いいですね。戦闘以外なら任せてください」
「は〜い、いっぱいゴミ掃除しますねぇ」
俺が決めた役割を美少女達は笑顔で快諾してくれた。3人ともありがとう!
因みに、キュピィちゃんの言うゴミ掃除とはゴブリンの暗s……いや、何も言うまい。
「よっしゃ! 役割も決まったし、助けに行きますか!」
「あのぉ、武器は持たなくていいんですかぁ?」
「あぁっ!? し、しまった……うっかりすっかり忘れてた……」
キュピィちゃんに指摘され、赤っ恥を掻きながら武器を選ぶ俺であった……
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