第1射 ちうとりある、そのいち


「……」


 台詞途中での突然の転移、そして急な地面への降り立ちに対し、ただただ茫然とする俺。

 だがその数秒後には、沸き立つ怒りと共に叫び出すことに……


「……あっ、あんのジジイィィィーッ!! よくも俺のキメ台詞をぉぉぉぉぉーっ!!」


 ……はぁはぁ、叫んだことでなんだか落ち着いたよ……まぁ、テンションも落ちたけどな。

 で、天界から転送された場所ってのが、森の中なのに何故か俺がいる辺りだけ円形の平地になってるっつう、なんだか不思議な場所なんだ。

 しかもその中心にはさ、折れた翼を生やしたガニ股のまんま頭の後ろに手を組んでる全裸女の石像がポツンと1体だけあるし。


「……ん? この石像ってよく見ると、めっちゃ美人がエロい格好でアヘ顔してんじゃん! これ見てるだけで3回はヌけそうだなぁ……うへへ……」


 おっと、ヨダレが出ちまった……でも、マジですげぇエロいな、この石像。

 もし実在してたらかなりのビチビチビ○チに違いないし、是非ともお相手してほしい!

 そんなヤラシイことを考えていたら、頭ん中からあのジジイの声が響いてきた。


「たわけぇぇぇぇぇーっ!! 誰がじじいじゃ! このっ、えろ猿が!!」


「うぉぉぉっ!? ビックリしたぁ!?」


 てか、また心を読んだのかよ……しかもエロ猿て……

 それよりなんの用だ? まさか、一人寂しいから話し相手になれとか言わないよな? もしそうならマジ勘弁だ。


「違うわ! このたわけめ! 今のお主じゃ魔法が使えんじゃろが! だって、魔法の使い方が分からんはずじゃもん!」


 うぇっ! キモッ! なんだよじゃもん! って! ジジイが可愛いフリしたって、ただキモいだけだっての!

 でも、確かに魔法の使い方なんて微塵も分からないし、もし使えても効果を知らないんじゃ意味ないよなぁ。


「ふぉっ、漸く理解したか! そんなわけじゃから、これより『ちうとりある』を始めるぞい!」


「……は? なんて? ちうとりある? なんだそれ……? あっ、チュートリアルか!」


 やっぱジジイだな、カタカナが言えねぇんだw『チュートリアル』を『ちうとりある』とか言っちゃってさぁ、マジウケるww


「たっ、たわけ! そそそ、それはわざとじゃ! そっ、それより! 早くちうと……げふんっ、はっ、始めるぞい! そ、それで先ずはーー」


 あーあ、まだやるなんて言ってねぇのに説明し始めちゃったよ……




 ……ほほう、どうやらこの全裸女の石像は生きてるうえに天使らしく、天界で悪さしたからジジイが天罰で石化させてから下界へ堕としたんだってさ。

 んで、その堕天使ちゃんを相手に魔法の訓練をするってわけ。


「じゃがその前に、そやつに触れてみるのじゃ! きっと驚くぞい!」


「驚く? なんで? まぁいいや、どうせ石化でゴツゴツして……おっ? やけに柔らかいぞ? てか、触り心地が人肌っぽい!?」


 その柔らかくも張りのある肌は、あまりにも触り心地が良すぎてずっと触ってたいくらいだ。

 とりま、適当にふくらはぎを触ってみたんだけど、なんか興奮してきちゃったからさ、なぞるように膝裏を通って太ももで一旦止めて、そこから一気にお尻を鷲掴みしちゃったよ。すると……



「あんっ♡」


「おぉ! 喋ったぞ!? しかも超可愛い喘ぎ声!」


 もっと声を聞きたいから更に揉んじゃおーっと! 今度は優しく撫でたり指の間から尻肉がはみ出るくらい強く揉んで……おっ? なんか、太ももの付け根から雫が伝ってきたぞ?


「こっ、これは、もしかして……!」


 急いで地面に膝を突き、堕天使ちゃんの太ももを伝う雫の元を見上げるように辿っていくと……


「ふぉぉぉぉぉーっ!! 毛が無いだとぉぉぉぉぉーっ!!」


 石化しててもガニ股のお陰なのか、花ビラの枚数までもがハッキリクッキリよく見える。まぁ、灰色だけどね。


「では早速、味見をしてみようではありませんか、デュフフフフ……」


 舌を伸ばし、ゆっくりと太ももの間へと顔を近づけていくと……なーんて、調子に乗ってたのも束の間、太ももの間からラブシャワーが大噴出。


「おぼろっ!? おぶっ! げはっ! しょっぱっ! ちょっ! ちょっと! 止めっ! 止めて! 止めてってば!! がぼっ!?」


 まるで、スコールのようなラブシャワーは止まることなく俺の顔面に降り注ぎ、息継ぎもままならず、危うく溺れ死ぬところだった。


「げほっ、げほっ……はぁはぁ……ったく、なんて水量だよ……げほっ……」


 おい、マジで出し過ぎだろ……こんなに吹く女、前世じゃ存在しねぇぞ?

 だけど、味は同じようにしょっぱかったな……てか、まだ触ってもいないのに吹くとは……しかもさ、でっかい水たまりまでできちゃってるし……



「……ってそれより、元気になったこの愛棒をどう鎮めるかが先決だよな……」


 ボソッと呟いた後に堕天使ちゃんの顔を覗くと、何かを期待する目で俺を見てくる。

 石化してるから表情はアヘ顔のままだけど、喉と眼球だけはどうにか動かせるようだ。


「入れちゃおっかな……」


「♡♡♡」


 ……ん? 今、ピクンって動かなかったか? この堕天使ちゃん。

 もしや、入れられることを期待してんのか? もしそうなら女性からの期待を裏切るわけにはいかんな。


「では遠慮なく、いただきまーー」


「ーーたわけぇぇぇぇぇーっ!! 誰もそこまでしろとは言っとらん! さっさと魔法の訓練を始めるのじゃ!」


 ちっ! これからがいいとこだったのによ!

 でもまぁ、楽しみを後にとっとくのも悪くないか……


「それで? 俺は一体何すればいいわけ?」


「うーむ、そうじゃのぉ……先ずは窃視魔法から教えるかの」


「おっ、いいねぇ!」


「うむ、それではそやつを見ながら『しよるだあはっく』と唱えるのじゃ!」


「……は? なんて? しよるだあはっく? それはどういう……んん? もしかして、ショルダーハックか……?」


 そういや、前世にも同じ単語があったな……確か、相手の情報を肩越しから盗み見るって意味だったよな? 取り分けインターネット関連の単語だが……


「ま、いっか。取り敢えず唱えてみるか……ショルダーファ○ク!」




 ……何も起こらない。それはそうだ。だって、言い間違えたんだもん!


「このっ、たわけめ!! なぁにがふ○っくじゃ! それにだもん! じゃとぉ? 可愛いふりなんぞしおってからに! 毛の先ほども可愛くないわ! ぺぺっ、気色悪い奴め!」


 酷い言いようだな、ここぞとばかりに責め立てやがって……くそぉ、絶対に仕返ししてやる!

 けど、今は魔法を使えるようになりたいし、取り敢えず仕返しは後回しにしといてやるか。


「ふぅ、次は絶対に間違えないように……ショルダーハック!」


 魔法を唱えた直後、堕天使ちゃんの情報が頭ん中に流れ込んできた……



【ルシフェラ・大天使アークエンジェル〔天使族〕・メス・1020歳・守護者・性欲値6000セクロス・経験回数567440回・妊娠回数0回・称号『????級』『ヤリ○ン』『ビ○チ』『十万人斬り』『尺八名人』『名器・ワーム千匹を持つ者』『元・熾天使セラフィム』『翼の折れたエンジェル』】



 ……な、なんだこのしょうもない情報は……色々と情報量が多すぎてとても処理しきれん……

 特に性交回数と称号はヤバすぎだろ……なんだよ、567440回って……宇宙の帝王の戦闘力より多いし、何よりゴロが「ゴム無しよぉ♡」になってんじゃねぇか……

 あと、堕天使じゃなくて『翼の折れたエンジェル』って、なんか聞き覚えがあるんだけど……あれ? 歌だっけ?

 しかもこのルシフェラちゃん、性欲値が6000セクロスだと? ゴブリンの2倍もあるぞ? とんだセッ○スモンスターだな……超ヤベェじゃん……

 てな感じでドン引きしてたら、それが吹き飛ぶほどの朗報を神様が齎す。


「うむ、成功したようじゃな。それでは次に時間魔法を使ってみるかの」


「おっ! きたきた! そいつを待ってたんだ!」


 次は本命の時間魔法だけど、一体どんな魔法を教えてもらえるんだろ? 今思いつく限りじゃ、時間停止・時間遡行・時間経過ら辺だとは思うけど……


「ふぉふぉっ、惜しいがちと違うのぉ。お主に教える魔法は『くいくいっく』じゃ!」


「はぁ? くいくいっくぅ? ふざけた名前の魔法だなぁ……ってか、それって便利なん?」


「まぁの。一度試せば分かることじゃから、やってみればええじゃろ?」


「まぁ、そうだけど……」


 なんか腑に落ちないけど、物は試しだと思って魔法を唱えてみた。


「頼むぞ〜、使える魔法であってくれよ〜、クイクイック!」


 時間魔法を唱えると、いきなり時間が巻き戻って……はおらず、特に何も起きてない。

 なんだ? また魔法の言い間違えか? そう思ったけど、どうやら違うようだ。

 森の木々をたまたま見て気づいたんだけど、そよ風で揺れる木の葉の動きがめっちゃ遅くなってるわ。

 それに、空を飛んでる鳥の動きもあり得ないくらい遅くなってるし……あ、元に戻った。

 んー? なーんか違和感。なんとなくだけど、俺とこの世界とじゃ「時間の流れ」に差みたいなやつを感じんだよね。まっ、アニメの知識だけどさ。


「ほぅ、中々に勘が良いのぉ。まぁ正確には、お主の時間だけが変化しておるのじゃがな」


「なるほどねぇ……じゃあ、この世界の動きが遅く感じんのは、俺の時間だけが早まってるからか……」


「うむ、その通りじゃ! それよりお主、意外と頭が良いんじゃのぉ」


「まぁな……って、おいジジイ! 一言多いんだよ!」


「ふぉっ!? 折角、褒めてやったのにのぉ……」


 あらら、ヘコんじゃった。ちょっとだけ言いすぎたかも……ごめん。

 口は悪いかもしんないけどさ、本当は神様に感謝してるんだぜ? だから、許してよ。


「ふむ、仕方ないのぉ……そこまで反省してるならば許してやらんこともない!」


「はは、どーも……」

(はぁ、面倒くさい神様だなぁ……)


「……ん? 何か言ったかの?」


「い、いや、なんも……そっ、それよりさ! 早く次の魔法を教えてよ! 神様っ!」


「ほほっ、そう急かすでない。魔法は逃げたりせんからの。因みに、次は便利な治癒魔法を教えてやろうぞ」


「えっ、マジ!? やっりぃーっ! で、なんて魔法……あっ、分かった! ヒール! ヒールっしょ!」


「残念ながら違うのぉ。今から教える魔法は『かいふっく』じゃ!」


「うっわ、ダサッ! なんだよ、かいふっくって……」


「ふぉぉぉっ!?」


 あ、ヤバい……またヘコませちゃったよ。

 ごめん、神様。言いすぎました。反省してます。申し訳ありません、テヘペロ☆

 よし、このくらい謝っとけば許してくれんだろ。

 てなわけで、その『カイフック』とやらを使わせてもらおうかな!


「神様の傷ついた心を癒せ! カイフック!」


「いや、そりゃ無理じゃ……」


 神様からのツッコミを受けながらも、カイフックを掛けた俺の頭は、魔法のエフェクトによってキラキラと光り輝いていた……

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