Act.05:依頼を見てみよう


「これで登録出来ましたが、何か受けて行きますか?」

「うーん、どうするかな……」


 実際、僕は今お金を持っていないのは事実だが、今すぐに必要と言われればそれも違う。魔改造されたアストラル号(僕の宇宙船)で、ほとんど過ごせるから。

 でもまあ、何か買いたい時とか買えなかったらそれもそれで、あれだし、ある程度は稼いでおくべきか。


「依頼だけまずは見てみる」

「了解です!」


 再び端末に近付き、今度は先ほど発行された宇宙探検者証明書……長いので探検者カードを挿入口に差し込む。すると、ATMでキャッシュカードを入れた時のように自動で中は入っていく。


『読み込んでいます...。本人確認のため、現在表示されている画面に手を翳してください』

「ん? 翳せばいいの?」

「毎回全体スキャンと言うのは手間になってしまうので、こういう仕組みになってます。全体スキャンで全データは取得できているので、一回全体スキャンを終えていると、身体の一部で認証できる感じですね」

「なるほど」

「ただ、不定期に全体スキャンを求められる場合がありますので、その時はあっちの機械に行く必要がありますね」


 あー……スマホの認証みたいな感じか。

 あれ、指紋登録しても不定期? にパスワード若しくは、PINの入力求められるもんね。セキュリティ関係はそんな風になっているのか。取り敢えず、案内通り、手を翳す。


『認証が完了しました。操作を続けてください』


 それだけ再生された所で、聞こえなくなる。

 そして、端末の液晶パネルにはさっきと同じように4つの項目が表示されていた。ただ、新規登録の所が消え、名称が登録情報確認になっていた。


「えっと、依頼の受注・報告、だよね」

「それで合ってますよ、マスター!」


 アストラルに確認した所で、その項目をタッチする。読み込み中の文字が少しの間、表示されると画面が切り替わり、ずらりと文字が並んでいる画面となる。


「多いな」

「基本的には、宇宙ステーションの場合、ステーションがある星系と隣の星系までの範囲が表示されますね」

「なるほど」


 3ページくらいあって、1ページ50件の数で表示されているようだ。あ、でもこれ、弄れるっぽい。1ページに表示させる数を最大で1000までに出来るようだ。この辺は別にこのままで良いかな。

 さらっと見た感じでは、納品系とか、調査系とかが多いかな。あ、宇宙盗賊の殲滅って言うのもある。殲滅って結構過激だなと思ったけど、でもまあ、そういうやつらと言う事なんだろう。


 宇宙盗賊はSFAでもエネミーとして出て来る。

 何処の星系でも、一定の確率で遭遇し、こちらを攻撃してくるのだ。あいつらに遭遇したら、殲滅するか逃げるかのどちらかである。

 ただ、星系によって確率みたいなものが設定されているのか、出やすい星系や全然出てこない星系がある。どういう基準かは、開発者にしか分からないけど。


 因みに、エネミーを倒せば資材とかを落としてくれたり、時々レアな物が手に入ったりするから、余裕で戦える人は倒した方が効率が良かったりする。


 ランダムで一定の確率での出現ではあるものの、頻度は低めになってるので、しょっちゅう遭遇するって事はあまりない。ただ運が悪いと本当に連続で遭遇する事があるけど。

 急いでいる時とか、こうなると結構イライラする人は多いと思う。他のエンカウント制のゲームにも言える事なんだけどね。


 シンボルエンカウントなら良いけど、ランダムエンカウントは正直僕は嫌いと言うか苦手だなあ。前者の方は急いでいる時とかは避けて行けるけど、後者は面倒くさかったりするし。


「マスター、迷ってますか?」

「うん。どれにしようかと思って」 


 あまり面倒な物は受けたくないな。


「後、この探検者レベルって何?」


 そうなのだ。依頼を見ていると気になる箇所があって、それが僕の名前とIDのようなものが表示されている場所のすぐ下にあるこの探検者レベル。

 今はレベル1となっていて、そのレベルの下には何かのゲージみたいなものがある。ゲージの色は、今は空っぽなので分からない。


「あーそれは、探検者の信頼度と言うかそんな感じのものです。依頼を受けてから成功させる毎に蓄積されて行きます。一定の数値が貯まるとレベルが上がる仕組みです」

「なるほど?」


 成功させるとゲージが増えて行って、一定の数値に到達するとレベルが上がるっていうのは理解できた。何かゲームみたいなシステムだな……。

 ただ、その一定の数値と言うのは分からない。ゲージだけしか表示されていないので、どれくらい必要なのかは不明だ。


「まあ、簡単に言ってしまえば探検者としての実力みたいなものです。今表示されている依頼は誰でも受けられると言う条件なっているので、マスターも受注が出来ます。中にはレベル制限をしている依頼もあり、大体そういう依頼は難しかったりとかですね」

「へぇ……」


 うん。何となくは分かった。


「取り敢えず、手始めにこれとかどうですか。すぐに終わらせられますよ」

「ん?」


 そう言ってアストラルが勧めてきた依頼を見る。

 依頼の分類は納品。対象の納品物は、鉄、銅、銀、金の四種類の鉱石のようだ。数はそこまで多くないが、四種類って結構大変では?


「マスター、忘れていませんか?」

「? ……あ」


 そうだよ。ゲームとは違う事が多すぎてすっかり頭から抜けていた。

 僕にはインベントリーメニューがある。宇宙船の倉庫にはかなりの種類や数の資材等が保管してあるし、鉱石は真面目に色んな所で使うのでかなりストックしている。


 鉄も銅も、銀も金もSFAにも存在している資源である。他にもチタンとかもあるし、プラチナもあるけど、まあ、それは置いとくとして。


「宇宙船に戻るか」

「ちっちっち!」

「アストラル?」

「戻る必要なんてありませんよ!」

「どういう事?」


 何かテンション高いな……でも、宇宙船に戻る必要がないって言うのはどういう事だろうか。


「マスター。今目の前に居る私はマスターの宇宙船のコアですよ」

「……まさか」

「お察しの通りです! ふっふっふっ! 私が居れば何処でもアクセス出来ますし、宇宙船自体を呼び出す事も不可能ではないのですよっ!」

「お、おう」


 自信満々、自慢気にそう言うアストラル。いやだからなんで、そんなテンション高いのさ!?


「と言う事で、マスター。どうぞ」

「もう準備してたの!?」


 いつの間にかそこそこ大きめな袋が4つ置いてあったので少し驚いた。それぞれ鉄、銅、銀、金と書かれている。


「数も合ってるはずですよ。まあ、数が足りなかったら端末が教えてくれるので問題無いですね」


 ……。

 まあ、良いや。僕はアストラルが出してくれた納品物たちを見て、再び端末の操作を行うのだった。



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