Act.04:宇宙探検者協会

「ここが宇宙探検者協会?」


 フードコートのようにお店が並んでいるエリアに入り、少し歩いた所でそれらしき場所にたどり着く。電光掲示板……いや、空中に直接文字が浮いているように見えるから違うか。


 なるほど、流石はSF……まあ、それはさておき。

 そんな空中に浮いている文字を見ると、『宇宙探検者協会-アリオス星系宇宙ステーション出張所』と書かれているように見える。

 今更だけど、文字は日本語なのね……それとも、何か謎技術で翻訳機能が自分についているのか? はたまた、無意識のうちに言語を習得しているのか……それを考えると、本当に日本語かどうかは怪しいが、でも何となく日本語な気はする。


「そのはずですよ。ちゃんと看板にも書いてありますし」

「あれ看板なのか……」


 僕の知っている看板ではない。僕の知っている看板は空中に文字を浮かべるものではない……やっぱりその辺は地球とは全然違うんだなあ、流石はSF(二度目)。


「あーなるほど、ここは無人ですね。なので、誰も居ません。この端末を操作するだけみたいです」

「無人なのかよ……」


 確かに他のお店と言うかカウンター? に比べると結構小さく見えてたけどさ。そしてそんな協会内にある謎の存在感を出す、数台の端末。


「見た感じではどの端末も一緒で、選択できるメニューは新規登録、情報更新、依頼受注・報告、情報抹消の4項目のようですね」

「新規登録で良いのかな?」

「それで合ってますよ。新規登録を押すと恐らく、宇宙船の情報やマスターの名前等の入力を求められるはずです」


 どの端末も同じと言う事で、適当に選んだあと、一番上の新規登録の項目名をタッチすると、アストラルの言う通り色々入力するような場所が出て来る。ただ必須項目は結構少ない?


「名前、か……」


 この見た目で地球での名前を使っても可笑しいよなあ。

 ここは無難に”Elise”と入力しておくか。と言うかこの端末、何語入力だろうか? 名前の入力欄をタッチするとキーボードのようなものが出て来る。


「あ。これも日本語と言うかカタカナのなのね。あれ、英語でも行けるのか……」


 そこはSFAの仕様と一緒なのか……微妙に笑ってしまう。

 開発会社は海外だけど、日本語にも対応していたので名前には普通に日本語を付けられる。まあ、一応これオンラインゲームなのでチャット機能もあった訳だ。

 チャットタブは宇宙、銀河、星系、個人、システムの5つで、宇宙で発信すると、全てのサーバーに対してメッセージを送れる。ただし、送信間隔が30秒と長めになっている。


 銀河で発信すると、同じサーバー内の全員に送信される。こちらの送信間隔は10秒と大分短め。星系は今同じ星系に居る人にだけ見える。送信間隔は5秒。

 個人は言わずもがな、いわゆる個チャというものだ。やり取りしている人にしか見れない。まあ、主にフレンドと連絡を取る時とかに使うやつだな。


 システムは、まあ、システムだよ。誰かが何か大きなことを達成すると通知されたり、アイテムを入手した時に何という名前のアイテムをいくつ手に入れたとかね。

 因みに大きな事とかレアな事とかを達成すると表示される通知は、全サーバーが対象だ。


「まあ、エリスで良いか」


 大分話が逸れたが、ここは普通にエリスとカタカナで打っておくとする。後は宇宙船の名前と、宇宙船の無線端末の周波数を入力……周波数?


「あ、マスター。その辺りは私がやりますよ!」

「え? あ、うん。よろしく」


 ここは宇宙船自身にやらせた方が確実か。

 と言うか、この宇宙船自身にやらせるとか、何か凄い事言ってるよなあ……宇宙船は宇宙を飛べる船であって人ではないのだからそう思うのは無理ない。


「マスター、入力全部終わりましたよ~! 念の為、マスターも確認お願いしますね!」

「早くね!?」


 ……もう突っ込まないぞ。

 取り敢えず、確認を求めているようなので僕はその入力内容を見る事にする。アストラルの隣に立ち、端末をチェックする。


「必須項目くらいしか書いてないんだね」

「こういうのは最低限の部分だけ書けば問題無いのですよ。マスターも、色々と自分の事書くのは嫌ですよね」

「ん……まあね」


 不特定多数の人に知られるのは確かに嫌かもしれない。

 しかし、こんな簡単な入力だけで良いのか……でも良いんだろうね、こういう仕様になっているんだから。


「問題無ければOKボタンですよ」

「ほい」


 特に気になる所はなかったので、言われるままOKのボタンをタッチする。


『登録を完了します。登録者は奥のスキャンマシンの中に立ってください』


 OKを押すと、女性のような機械音声が聞こえる。

 スキャンマシン? と思ったが、アストラルがすぐ目の前にあるちょっと変わった機械の事を指していたので、あれがスキャンマシンなのだろう。


「一応説明すると本人確認とかのために、スキャンして、その情報をこれから発行する宇宙探検者エクスプロラシオン証明書に登録する感じですね。そうする事で、本人であるかどうかの確認ができるようになりますから」

「なるほど」


 アストラルの説明に納得。

 スキャンした僕のデータをその証明書とやらに登録すると言う事か。そうする事で、悪用を防いだりとかすると……悪用する事ってあるのかな? いや、アストラルがこう言っているからあるのかもしれない。


 取り敢えず、スキャンマシンとやらの中に立つと、自動認識機能でもあるのかスキャンが勝手に始まる。


『スキャンが終了しました。宇宙探検者エクスプロラシオン証明書を発行いたします』


 思ったより早い。

 数分はかかるのかと思ったけど、数分もいらなかったようだ。まあ正確な時間は分からないけど、1分もかかっていない気がする。


 少しすると、スキャンマシンのすぐ横にある機械が音を出し始め、動き出す。数秒程音が聞こえると、何かこう、自動販売機のお札入れのようなスペース? から一枚のカードが出て来る。


『発行が完了致しました。新たな宇宙探検者エクスプロラシオンの健闘を祈ります』


 と、機械音声が聞こえ、それ以降は何も聞こえなくなる。これで終わりと言う事かな? 発行されたカードを見てみるが、大きさは地球のクレジットカードくらいかな? 厚さも同じくらいだと思う。曲げようと思えば曲げられるけど、簡単には曲がらないくらいかな。


「マスター、お疲れ様です!」

「ありがと、アストラル」


 そこまで疲れるような事はしていないけどね。取り敢えず、アストラルの頭を撫でてあげる。毎回思うけど、そんな撫でられるのが嬉しいのだろうか。


 ……まあ良いか。本人が嫌がらないのであれば。


 そんなこんなで僕は、宇宙探検者エクスプロラシオンとやらの登録を終えたのだった。

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