Act.06:イージスデバイス②


「うわー真面目に大丈夫だ」

「だから言ったじゃないですか!」

「うん、ごめん。でも、怖いものは怖いから仕方ない」


 イージスデバイスと呼ばれる、摩訶不思議な超科学アイテムを使って昼間は数百度、夜は氷点下数百度という過酷な環境な惑星であるノアに降り立つ。

 いやあ……外に出される時は死を覚悟したくらいだよ。


「凄いねこれ」

「はい、凄いんです。ですが、問題点というか注意点がありまして」

「注意点? エネルギー残量とか?」

「マスター、察しが良いですね。そうです、T-エネルギーで動いている以上、エネルギーが切れますと効果もなくなります。そうなると……」

「うん、簡単に想像できるからそれ以上はストップ」


 T-エネルギーによって動作しているこの道具。

 エネルギーが切れればどうなるか……今こうやって展開されている保護プロテクションフィールドが維持できなくなり……うん、後はお察しの通りだ。


「エネルギーの残量はここで確認できます」

「ふむ……残り95%か」

「この保護フィールドは環境の過酷さにもよって、消費する量も変わってきます。それも注意点の一つですね」

「なるほど……」

「このノアは今は、昼間になり始めたようなので、そのうち600℃程に到達すると思います。まあ、600℃なら普通より少しだけ減りが早い程度ですかね」

「桁が違うなあ」

「宇宙にある惑星なんてそんな物ですよ、マスター。むしろ、今回の星系の惑星エリルという人が住めそうな惑星があるのは結構運が良いですよ」


 やっぱりそういう環境の惑星は少ないのかな。いやまあ、そもそも今僕が居るここは何なのかなんだけど。宇宙なのは間違いない……SFAに似たような物もある。

 良く分からないな……。


 もしかして、太陽系という星系も何処かにあるのでは?

 もしあるのであれば、地球に戻れる? いや、この姿で戻っても誰も僕だとは分からないだろうけど……そもそも見た目が完全にロリっ子である。絶対子供だと思われるに違いない。


 ……この身体成長するのだろうか?


「マスター、考え事ですか?」

「うん、ちょっとね」


 うーん。アストラルにちょっと聞いてみようかな。


「ねえ、アストラル」

「どうしましたか、マスター?」

「太陽系っていう星系ある?」 

「太陽系……ですか。ちょっと待ってくださいね」


 そう言うと、アストラルの周りを宇宙船の中でも見た半透明なウィンドウが囲い始める。それをそれぞれ、操作しているアストラルを見ると、やっぱり人間ではないって言うのが分かる。


 まあ、本人もこの宇宙船のコアって言ってるし、実際僕が操縦しなくてもアストラルが動かせているという事は、本当なのは間違いない。


「この星系より半径1万光年の範囲内は該当する星系はありませんね」

「そっか……」

「探索範囲を広げてみます」


 再び操作に戻るアストラル。というか、宇宙船の中じゃなくてもそんな事出来るのか……。


「駄目ですね。範囲を半径10万光年まで広げましたが、該当する星系は見当たりません。これ以上範囲を広げると、かなり精度が落ちてしまいますが……やってみますか?」

「うん、やってみて。それでなかったら良いや」

「了解しました、マスター」


 1万光年先、10万光年先にも該当する星系はなし、か。やっぱり存在しないのかな? というかそもそも、何処まで範囲を調べられるんだ、アストラルは……。


「マスター」

「どうだった?」

「おおよそ100万光年以上先にて、該当する星系を確認しました。太陽系……天の川銀河に属する、太陽と呼ばれる恒星を基準に水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星、冥王星が公転していますね。そして地球と呼ばれる、既に文明が築かれた惑星が存在してます」

「!!」

「ですが、この範囲になると精度が相当落ちます。100万光年と言ってますが、上下にぶれるかと。数十万光年程度のずれは誤差になりますね」

「お、おう……でも、あるんだね」

「はい」


 そっか、あるのか。

 でも、冥王星が入ってる? でも待て。太陽系から外したのはあくまで地球の人間だ。地球感覚では居られないか。


「アストラル」

「了解です。太陽系ですね?」

「分かる?」

「ふふ、とても行きたそうな顔してましたよマスター」

「そっか……」

「ですが、マスター。目標地点の太陽系まではおおよそ100万光年、誤差数十万光年です。かなりの長旅になりますよ」

「分かってるさ」


 地球の感覚で見たらそんな数十万光年とか数百万光年とかとんでもない距離だが……この宇宙船なら行けるかな?


「取り合えず、中に戻りましょうか。外で話す内容でもないですしね」

「だね」


 無駄にエネルギーを消費してしまうし、取り合えず宇宙船の中に戻る。


「この宇宙船の最大ワープ距離は?」

「この宇宙船の場合は一気に飛べる距離は最大でも5万光年ほどです。これはワープドライブの最大出力で行ける距離なので、当然エネルギーが一気になくなります。補充自体はソーラーエネルギーや、鉱石から抽出していますが限りがありますし、最大出力の連続運転はワープドライブの故障に繋がりますので危険ですね」

「ふむ……無理ない範囲だとどんな感じになる?」

「そうですね……出力を半分にして休ませてからまた飛ぶ、ならば安定して飛べるかと」

「半分か……つまり、大体25000光年?」

「そうなりますね、状況によっては前後するかと」


 太陽系までの距離は100万光年(誤差数十万光年)。

 この宇宙船の最大ワープ距離は5万光年だが、最大出力によるもののため、連続で5万光年を飛ぶのは危ないとアストラルは言ってる。

 安定して行けるのは出力半分での連続ワープ。もちろん、ワープドライブを休ませる事も必要。

 一回の移動可能距離は約25000光年。100万光年先まで行くには……うーんと?


「100万光年先に到達するには、ワープ距離が全て25000光年の場合で計算すると、おおよそ40回のワープが必要になりますね」

「40回か……」

「はい」


 40回のワープ……結構多いな。

 でもまあ、100万光年だもんね……むしろ、その距離を40回で行けるのは結構良い方なのではないだろうか。分からないが……最早地球の知識は役に立たないし。


「分かった、了解。それじゃあ、早速一回目のワープに入れる?」

「了解です、マスター! でもその前にノアから離陸しないとですね」

「あ、そう言えば着陸してたね」

「はい。離陸しますね」

「おっけ」


 ギュイーンと、宇宙船のエンジンが動き出す音が聞こえ、少しするとガタンっと揺れる。恐らく、離陸したのだと思う。その証拠に、段々と岩で出来た地面から遠ざかっているのが見える。


 ノアに着陸したのは良いものの、特に何もなく……イージスデバイスが有効なのか確認はしたけど、そのまま惑星ノアから離れるのだった。

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