Act.07:遭遇
「大気圏より脱出、無事宇宙空間に戻りました」
「お疲れ」
惑星ノアから離脱し、再び宇宙空間に戻ってくる。目標は太陽系……ここから約100万光年先に存在している星系。正直、太陽系があるのは驚いたけど……。
確かに宇宙船はSFAで使ってたものにそっくりだが、何だか色々と変わってるみたいだ。栽培とか養殖エリアとか、そんなのSFAでは無かったはずだし。
ゲームの世界に入ったという可能性は低くなったか? でも、どの道分からないのは変わってない。
「T-エネルギーの残量はバッチリです。なので、何時でもワープできますよ」
「了解っと。早速お願いできる?」
「マスターの仰せのままに。ワープドライブ異常なし、エネルギー異常なし……」
僕が到着した頃、地球はどうなってるんだろうか。
ちょっと気になるかも。距離はおおよそ100万光年……途方も無い距離ではあるが、この宇宙船のワープ可能距離が最大で5万光年。今回は、半分の出力で行くので25000光年だが、それで約40回繰り返すことでたどり着ける予定だ。
でもまあ、アストラルの言うには、誤差が数十万光年あるらしいので、ピッタリとは行かないかもしれない。10万光年先だったら更に4回のワープが必要になるしね。
「演算完了しました。これよりワープに入ります……! マスター、距離約10万キロ先、こちらに急接近中の反応を感知しました。解析を行います」
「! 敵か?」
「わかりませんが、おおよそ数分で視認範囲に入ります」
急接近中の何か……宇宙船だろうか。それとも彗星? もしくは、小惑星が軌道を急に変えて飛んできた可能性もあるな。だけど、アストラルの反応からして、それっぽくはない。
「解析完了しました。武装宇宙船ES-23Xです」
「武装!?」
「こちらから無線通信を送った所、返答ありません。目標は依然とこちらに向けて接近中です。迎撃しますか?」
「いやまだ様子見……とも言ってられないし、武装展開、何時でも撃てるようにして」
「了解です。システムを戦闘準備体制に移行します」
武装宇宙船か……考えられるのは、SFA内でも時々出現するアクティブエネミーである宇宙盗賊だ。迎撃すれば、素材が一部手に入ったり、貨物船とかだったらその中身を頂けたりするのだが……。
「目標、視認可能範囲に入ります。3、2、1、0!」
「あれは……」
うん、何か見覚えがあるな。やっぱりあれ、宇宙盗賊エネミーかもしれん。
「目標、攻撃を確認しました。被弾を確認……シールド消費1%未満、問題ありませんね。どうしますか?」
うん、明らかに敵なのは分かった。こちらを攻撃してきたのだから、恨まないでくれよ。
「攻撃準備。やっちゃっていいよ、攻撃してきた方が悪いし」
「了解です!」
すると、急に宇宙船内が揺れ始める。視界が変わり、攻撃をしてきた宇宙船の背後に移動する。僕が操作している訳ではなく、アストラルが動かしてるんだけども。
敵の宇宙船に合わせて速度を変え、予測射撃も含めてパルスレーザーを放つ。流石に揺れるので、操縦してないけど操縦席に座ってベルトを付ける。
アストラルは普通に立っているけど……どうなってるんだあれ。まあ、コアって言ってたし、宇宙船そのものだから影響は受けてないということか? でも、実体持ってるよね……ホログラムとかならまだしも。
うーん、色々謎が多いけど……今考える事ではないかな。
「これで終わりです」
そう言ってミサイルを放つアストラル。
ミサイルには誘導と無誘導があるが、アストラルが放ったのは誘導の方のようで、煙が出ている敵の宇宙船に向かって飛んでいく。何とか避けようとしたみたいだが、それは叶わず着弾。
爆発を起こし、文字通り宇宙の塵となった。
「迎撃完了しました。どうしますか? 回収を行いますか?」
「うーん」
回収といっても、既にあの宇宙船は木っ端微塵なので残っているのは、残骸くらいだ。確かに残骸でも資材になるけど、今回は良いかな。
それに一隻しか居なかったのが気になる。普通、宇宙盗賊たちは集団で出現するはずだ。とは言え、それはゲームでの話なんだけどね。それは置いとくとしても、一隻だけしか居ないのはやっぱり気になる。離れた方が良さそうだ。
「大丈夫。他の反応とかはある?」
「今の所はありません」
「そっか。それじゃあ、回収は良いよ。ワープに入っちゃって」
「了解しました。先程の位置より動いてしまったので、再演算します」
もしかすると、あの宇宙船は偵察とか斥候の可能性がある。もしその場合だと、通信が途絶えた事に気付いた、本隊がこっちにやってくる可能性は否定できない。
もちろん、そんな事はなくただ本当に一隻だけで行動していたという場合もある。とは言え、僕の方を攻撃してきたのだからこれは正当防衛である。
まあ、宇宙に正当防衛とかあるのか分からんけど。
話を戻すが、あの船が本当に斥候とか偵察であれば……何処か別の場所に本隊が居るだろう。この星系なのか、別の星系なのか……どっちにしろ、そうだった場合はきっと不審がってこっちに向かってくる。
とっとと逃げたほうが良さそうだ。
その本隊が、どれくらいの強さかは分からないが、こちらは一隻。どれくらいのスペックかは分からないが、一隻で集団相手に戦うのは無謀な気がする。
まあ、SFAの宇宙船の性能がそのまま引き継がれているなら敵のレベルにもよるけど、集団でも一方的に制圧できるが……。
何か、僕の知ってるアストラルじゃないので、何とも言えない。だけど、一隻の宇宙船とは言え、攻撃を何度か受けてるのにシールド消費が1%未満というのは、少し気になるな。
敵の方がかなり弱いのか……それとも、こっちの宇宙船のシールドが強いのか判断しにくい。
「マスター、終了しました。何時でもワープに入れます!」
「お疲れ。それじゃ、早速行こうか」
「はい! 座標固定完了、ワープドライブ始動……出力、10、20、30、40、50%完了。これより、ワープ空間に入ります、3、2、1、0!」
刹那。
ガタンと宇宙船が揺れる。そして、だんだん大きくなっていくエンジン音……そして視界が真っ白になる。しばらく、真っ白になった後、何とも言えない不思議な空間へと突入する。
「無事ワープ空間に入りました。出口まで約四分です」
「了解。ありがとう」
「いえいえ!」
「よしよし」
「えへへ!」
この子の謎は多いけど、とにかくこの宇宙船そのものというのは信じようと思う。そうれでなければ、さっきの戦闘もワープとかの操縦とかも出来ないはずだしね。
アストラル……自分で付けた名前ではあるけど、こうして人? になるのは何処か感慨深いものがある。僕の目的地は、太陽系だ。こんな宇宙を見ながら旅ができるのは、我ながら凄いなあって。
これから先、何が待ってるのか分からないけど不安と同時にワクワクもある。ちょっと楽しみかもしれない。
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