Act.04:惑星を知るTSロリ少女
「ふふふ」
「全く……」
何とか落ち着いてくれたアストラルを横目に、ため息をつく。
当の本人は僕にピッタリくっついてとてもご機嫌なようで……目から鱗なシチュエーションなのは間違いないが、あまり女の子と話した事のない僕にはちょいときついものがある。
取り敢えず、この子が僕の宇宙船アストラルのコアっていうのは理解した。まさか僕の宇宙船が、こんな女の子だとは思わなかったが……でもまあ、アストラルか。
「マスター、もっと撫でて下さい!」
「んえ? ……はいはい」
いつの間にか僕は彼女の頭を撫でていたようだ。
嫌がる素振りは見せず、むしろおねだりしてくるくらいだったので続けて撫でてやる。まだAIとかの方が現実味はあったけど……そうか、宇宙船の擬人化かあ……。
今までありそうでないやつだなこれ。
「それで、アストラル。ここは何処になるんだ? 自分でもマップは見たけど」
「はい。ここは書いてある通りアルス銀河のエネス星系です。恒星エネスを基準に、三つの惑星が公転している惑星系ですね」
恒星エネス、か。
まあ多分、向こうに見える一際明るい星が恐らく恒星エネスなのは間違いなさそう。
「この星系にある惑星は、惑星ノア、惑星エリル、惑星グレスの三つですね」
「ふむ。それぞれの特性は?」
「まず、惑星ノアは恒星に一番近い位置にあるので高温な惑星です。表面温度は昼間なら約600℃、夜は約-200℃まで低下します。大気が薄いので、昼と夜の温度差が激しいですね」
なるほど。
太陽系の水星みたいな感じかな? 温度の桁が違うな……。
「次に惑星エリルですが、丁度三つの内中間くらいに位置してます。大気もありますし、温度差はそこまで激しくないです。この気候に適応した植物が幾つかありますね。後、水も存在してます」
「ほうほう……」
丁度良い感じの惑星って事かな? 表面温度は約30℃で、夜もそこまで変化はない。ちょっと蒸し暑い感じの環境かな? 水も存在しているが生命体の確認はなし、と。
「最後の惑星グレスですが、恒星より一番離れている位置にある惑星で、大気もそれなりに厚く、環がありますね。表面温度は-100℃から-150℃くらいの氷の惑星です」
まあ、基本恒星から離れるほど、温度は低くなるからそれはそうか。
「惑星についてはこんな感じですね。他に何かありますか?」
「衛星はどんな感じ?」
「衛星を持っている惑星は、エリルとグレスの二つですね」
「ノアはないって事?」
「はい、確認されてません」
恒星に近いって言うのもあるのかな?
まあ、取り合えず惑星ノアには衛星はないという事は分かった。エリルとグレスにはあるらしいが……。
「まず惑星エリルです」
そう言ってアストラルは目の前に惑星エリルのホログラム? みたいなのを映す。凄いSF感……いやSFゲームだったから当たり前だけど。えっと、中央にあるのは惑星エリルかな?
「エリルの周辺にある衛星は、全部で三つ。衛星アスト、イスト、エストですね」
そんなホログラムに次々と衛星が追加されていく。三つとも惑星エリルを中心に、周りを公転しているみたいだね。
「三つもあるんだ……」
一応環境としても、人が住める惑星らしきエリル。月が三つある地球みたいな? いや、地球よりかなり暑いけどね! 確か地球の表面温度って16℃かそこら辺だったよね。
「ですね。それでこっちのグレスには衛星フェグ、衛星グルフの二つがあります」
「了解、ありがとう、アストラル」
「いえいえ、マスターのお役に立てて良かったです!」
僕が現在いるのはアルス銀河のエネス星系という惑星系。中央にあるのが恒星エネスでその周りを公転するのがさっきアストラルが教えてくれた三つの惑星、ノア、エリル、グレスだ。
太陽系で言うならノアが水星、エリルが暑いけど地球でグレスは木星か土星と言った所かな? そこまで詳しくないから何とも言えないけど。
さて。
これで僕らが居る現在位置は分かった。SFA内では聞いた事ない名前だけど……いや、でもあのゲーム10年も歴史があって、今でもそこそこ頻繁にアプデされてるし、かなりの数の星系とか惑星があった気がするので、僕が単に覚えてないだけかもしれない。
「うーん、これからどうするか……」
やるべきことは何だろうか? 食糧の確保かな?
「マスター、考えている所申し訳ないんですが、食料については問題ないですよ」
「え?」
「この宇宙船内には栽培、養殖等のエリアが存在しています。ほぼ自給自足が可能となってます」
「えぇ……」
僕の宇宙船、そんなエリアあったの? でも、アストラルを見れば噓をついている様子もない。それに嘘をつく必要もないし。
「回収等の作業は私の指揮のもと、AIたちが行っているのでマスターは安心して宇宙船の中で寛げますよ」
「お、おう……凄いな」
「えへへ! どうですか、マスター。私凄いでしょう!」
「ああ、本当に凄いよ……自給自足が可能な宇宙船って何だそれ……でも、一応人が暮らすところとかもあるんだよね?」
僕だけしか居ない宇宙とか、それちょっと怖いよ。
「ありますね。一部の惑星や、スペースコロニー、宇宙ステーションには様々な人が暮らしていますよ。もちろん、自分の宇宙船を持って星々等を転々としながら過ごす人も居ます」
良かった。ボッチという訳ではないようだ。
「そうなると、何をすれば……」
「何言ってるんですか。マスターは自由に宇宙を飛び回りたいと言っていたじゃないですか。このまま色んな星系を転々とするのが良いんじゃないでしょうか!」
「そ、そうだね」
確かに僕は宇宙というのが好きだ。そこまで勉強している訳ではないけど、宇宙に心惹かれるのは事実。様々な天体、惑星、星系……恒星、銀河など。
何せ宇宙はロマンの宝庫だ。地球の今の技術ではまだ宇宙旅行なんて出来ない。少しずつ分かってきてはいるけど、それでも解明されているのは全体の1%にも満たない。
宇宙は拡張しつつあるとも、誰かが言ってた気がする。
「そうだね……うん。宇宙は僕のロマンだ」
何で宇宙船の中でSFA内で使っていたロリアバターになっているかは謎だけど、今は何よりこの宇宙に好奇心が向いている。どんな星があるのか……どんな人がいるのか?
――なあ、わくわくしないか?
「じゃあ、この広がる宇宙に飛び出そうか」
「もう既に飛び出してますけどね。ふふ、マスター、目的地をどうぞ」
「そうだな……手始めにこの星系にあるノアだっけ? そこに向かおう」
「了解です! 進路変更、座標指定……目標惑星ノア。距離計算中……」
そう言えばここからどれだけの距離があるか分からないな。
「計算完了、現在位置より惑星ノアまでの距離は約1600光年です」
「わお」
まあ、そりゃあ、宇宙だもん普通に光年が出るよねえ。というか、1600光年……光の速度で1600年かかるっていう距離かぁ。近いように見えて結構遠いな。
これが宇宙単位っていうやつか……。
「座標固定完了。マスター、いつでもワープが可能です!」
あ、ワープがあるのね……いやそれもそうか。
「それじゃ行こうか、アストラル」
「はい!」
そんなこんなで、惑星ノアに向けてワープに入るのだった。
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