Act.02:把握するTSロリ少女
「なるほどな」
鏡に映っていたのは銀髪碧眼の黒ロリ少女だった。
頭には黒白のヘッドドレスに黒色のボレロに大き目な赤いリボン。そして黒を基調としたワンピースは、ラッパ状の姫袖。袖の部分には両方に小さめのリボンが付いている。ワンピースは何より、フリルが結構多い。
で、足を隠すように黒いタイツを履いていて、靴は黒いぺたんこ靴。
「つまり僕は自分の最高傑作のつもりであるアバターになっていると」
SFA内で自分が使っていた銀髪碧眼の黒ロリ少女……エリス(Elise)に酷似している。つまりはそういう事なのだろう。
「となるとここはSFAなのか?」
いや、SFAは普通のPCゲームだ。決して近未来的な作品に良く出てくるVRゲームなんかではない。では何が起きたのか? これはあれかな? ゲームの世界に入っちゃった的な。
「……分からないな」
でもまあ、エリスになっているのは分かった。
仮にSFA内ってなると、今僕が居るここはもしかして宇宙船かな? 取り合えず、操縦席がある場所まで行こうかな。でも、ここは何処だろうか。
ハウジングも自分なりに楽しんでいたので、宇宙船内も結構広くしてるんだよね。亜空間的技術で、中を限界まで広くしても外観は変わらないっていうね。
「ここは……倉庫か」
そう言えば、最後の記憶では倉庫に集めた資材とかを収納していた気がする。そうなると、操縦席があっちになるかな。
目線が低いのは気になるが、特に問題なく歩けそうだ。それに結構明るいし……これらの状態を見るに、宇宙船自体は稼働してるかな。
そんな明るい通路を歩いて行き、操縦席へと向かう。ゲーム内と配置が変わってなければこのルートで良いはず。
「ビンゴ」
目的の場所へたどり着き、僕は足を止める。
「うわぁぁぁ……凄い! 凄い!」
操縦席なんかよりも、ガラス越しで見える星たちに僕は感動を覚えた。辺り一面、星だらけ……まるで幻想世界のような光景だった。
「地球で見るよりも凄い!」
これには僕もテンションが上がってしまってるのが分かる。でも仕方ない。僕はこう言って宇宙とか星とかが好きなのだ。そんな僕がこんな光景見せられたらこうなるのも無理はない。
「ふふ、これは夢でも嬉しいかも」
夢なのかもしれないけど、それでもこんな光景を見せてくれて感謝しかない。と言っても、夢のような感じはしないんだけどね……。
「そだ。現在位置は何処だろう」
星に感動を覚えたところで、モニターを起動させる。
すると、目の前に半透明なスクリーンが現れ、現在位置と周辺の惑星、スペースコロニーや宇宙ステーションの場所が分かるマップが浮かび上がる。
あれ? 僕今、何の違和感もなく普通にモニターを起動させた? ……まあ良いか。
「えっと……アルス銀河のエネス星系か」
中央に光っているのがこの星系の恒星だよね。そうなると、一番近い惑星は……これかな、惑星ノア。恒星に一番近い惑星っぽい?
「……うーん? 見た事ない名前だな」
忘れてしまっている可能性も否定できないけど……聞いた事ないのは事実。宇宙船のエネルギーは問題無し、システムもオールグリーン。
「武装は……パルスレーザーとガトリング、誘導ミサイルと無誘導ミサイル……それから、スターブレイクキャノンか。後は宇宙機雷がいくつかと、煙幕展開システム、フレア、か」
他にもいくつか搭載されているが、僕が使ってた宇宙船に搭載している物と同じみたいだ。基本的にはパルスレーザーかガトリングを使ってる。
僕はどっちかというとエンジョイ勢だし、バリバリやる人じゃないと思う。宇宙を気ままに旅して、資材集めたりするのが楽しいから。アバターには結構課金してるけど。
レーザー系を打つのに必要なレーザーエネルギーに、ガトリングの弾薬、ミサイルの残弾等は特に問題なく、目一杯あるっぽい。
「ロマン溢れるなあ、ふふふ……」
傍から見たら気持ち悪い笑みを見せているロリだろうけど、別にここには僕しか居ないし問題ない。この肌触りとかも全て本物かぁ。
「僕の宇宙船がそのまま反映されてるなら……」
何度も改修を重ね、上限いっぱいまで鍛えた船体に、武装のレベルも最高まで上げ切っている。宇宙船を保護するシールドも最大まで強化されているはず。
確認する術はないかな? モニターで武装情報とかの詳細は見れるけど、特にレベルとか装備の強化値とかの表記はないんだよね。
ゲームではない……って事だろうか? うーむ。
「さて、これからどうするべきか……」
僕はエリスになってしまってるのはもう間違いないので、認めよう。え? そんなあっさりだって? 自分がこのアバターになっているのは確かに予想外だが、もうどうしようもないじゃん? なっちゃったものは。
むしろ僕はこの宇宙が凄く気になる! ゲームにない名前……ワクワクするじゃないか。
「あーでも問題はトイレとかか」
確認したけど、相棒は消え去っていたので完全に幼女というかロリになってます。性別が変わるとか、普通は考えられないけど、まあこれもなってしまったものはどうしようもない訳で。
だって元の自分に戻れる方法なんて分からないし、そんな希望のない事考えるより今この状況を楽しむべきじゃない?
いやね? 確かにちょっと複雑な気分だけど。
「まあ、可愛いから良いよね」
流石は自分では最高傑作なアバターだな思う。それが本物になるって夢のような話だよね。まあ、中身は僕なんですけどね!
「んーなるようになれ、としか言えないかなあ」
そのうちに、何か分かるでしょ。トイレとかはもうそこは気合いで頑張るしかない。
「あ、そういえばクラフト機能はあるのかな?」
あーでも、クラフトメニューなんて出なさそう。というかそもそもどう出すの? ゲームならキーボード叩けば良かったんだけど。そうなると、インベントリーメニューも開けないじゃん。
「ふむ」
最初から詰まったぞ。
「アームさんいる?」
ガシャンガシャン!
何処から出てきたのか分からないけど、居たようだ。アームのもとを見ると、上から伸びて来てるように見えるけど……まあいいや。
「おーいた。ねぇ、インベントリーメニューって開けない?」
ガシャガシャ
駄目もとで聞いてみると、アームさんが伸びてきて操縦席にある一つのボタンを指す。
「このボタンを押せと?」
ガシャン!
その通り! と言わんばかりの動作をする。
「ぽちっと」
ブワーンっと何か良く分からない音と共に、新たなウィンドウが出現する。そこには名前のようなものがずらりと羅列されていた。
「これは……全部は流石に覚えてないけど、資材かな?」
資材以外にも道具類とか武器類もある。インベントリーメニュー……なのかな? 指で触って選択することもできるし、操縦席にあるキーボードのようなものでも操作出来るっぽい。
「うぉっと!?」
タップで選択すると、さっき選んだ物? が僕の手の上に出現し、ちょっと焦った。いきなり登場しないでくれ。
「おーこの重量感……本物だ」
AK-47に似た形をしているライフル。ただし、AK-47とは違い実弾ではなくエネルギー弾を放つライフルだ。弾丸がビームになってると言えばわかりやすいかな。
惑星にも敵対生命体は居るので、探索するにしても準備をするのが鉄則である。そんな惑星探索の際に使う武器はこういったもので、宇宙船の武装とは別に操作キャラが使う武器が存在しているのだ。
何だかよく分からない感動を覚えながら、インベントリーメニュー? の操作方法を調べるのだった。
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