【更新停止】TSロリ少女の宇宙紀行
月夜るな
Planet.01『漂流TSロリ少女』
Act.01:目覚めのTSロリ少女
「んぅ……」
ひんやりした感覚を覚えながらふと、目を覚ます。空調のような音、コンピュータのような音が僕の耳へと届く。
まだ少し頭がぼんやりして、はっきりしない。だけど、床に寝ていたという事は理解できた。理解できたんだけど……なんで床で寝てるの?
「ここ、何処?」
床に寝ている事も不思議だったが、今自分の居る場所も良く分からない所だった。若干ふらつきながらも、ゆっくりと起き上がる。
「……」
ようやく意識がはっきりしてきた。
改めて自分の居る場所を再確認する。しかし、やっぱり何処だか分からない。冷房が付いているのか、少し肌寒い。
「え?」
そこで何かがおかしい事に気づく。
ちらっと見えた自分の手……僕の手はこんなに小さかっただろうか? 後なんか凄く白い。手のひらを開いたり閉じたり出来る事から間違いなく自分の手だ。
そこに追い打ちをかけるように、するりと視界の中に垂れてきた長い銀糸。
「へ? 痛っ」
糸? 何でこんなものが……と思い取ろうとしたら、頭に鋭い痛みが走る。この痛み、知ってるぞ……髪の毛を引っ張った時の痛みだ。
「って、これ僕の髪!?」
ちょっと待って欲しい。
僕は生粋の日本人のはずだ。黒髪黒目のその辺に居るような一般人A的な存在のはず。断じてこんな銀色ではない。……銀髪は好きだけど。
「ふむふむ……大体腰に届くくらい長いな僕の髪」
……いや待っておかしいでしょ。
僕そんな髪長くないよ! そこまで伸ばす必要がどこにあるの! 男だよ!
「早急に鏡が必要である」
いや、鏡以前に声だって何かおかしい。こんな高くて可愛らしい声を僕が出せる訳ないぞ。
取り合えず、どこかに鏡とか落ちてない? そんな都合良く落ちてる訳ないだろと、誰かに突っ込まれた気がする。困ったな……今の僕に何が起きているんだ?
えっと、気を失う前は何してたっけ?
「んー。いつも通り仕事が終わったからSFAで遊んでいたはずなんだけど」
……SpaceFreeAdventure、通称SFA。
広大な宇宙を舞台にした大規模なSFのオンラインゲームだ。自分で宇宙船を作って操縦して色んな星に行ったり、そこで資材を集めたり、基地を作れたりなど自由度の高いゲームだ。名前の中にもFreeと入っている。
このゲームがまたかなり長い間稼働しているんだ。
今年で10周年って言ってた気がする。オンラインゲームが10年も続く事なんて、ぶっちゃけあまりない。あるのはあるが、本当に数える程度だ。
それで、このSFAは資材を集めたり宇宙を飛び回るのも楽しみ方の一つだが、ただ彷徨っているだけだと時々敵と遭遇する事もある。ノンアクティブが基本だが、アクティブな敵も居るのでそこそこ戦えるようにしておいた方が良い。
このゲームはオンラインとは言え、ソロ要素が強めって言うのも中々特殊だ。PvPは存在せず、オンラインのメインはPvEにある。他のプレイヤーと共にエネミーを倒し、豪華報酬を獲得する。ありがちなゲームだ。
プレイヤーが自由に装飾したり、弄れたり出来るハウジング要素まである。しかもそれは、宇宙船はもちろん他にも、惑星に作った基地の中も同じように自分好みに出来る。
当然、基地を建設するには資材が必要だけどね。
そして何より一番凄いのがアバターだ。
SFゲームにしては珍しく、アバターが存在する。MMORPGでは定番のアバター作成……それがSFゲームにあるのだ。しかも、その種類も豊富だ。
このゲーム、視点変更キーを押すだけで簡単に三人称と一人称を切り替えられる。お好きな視点で楽しめるというのも良いよね。
まあそれで、宇宙船に乗ってる時に三人称視点に切り替えると、三人称のシューティングゲームのような感じになる。見えるのは自分の宇宙船なのだが、ここにも一つ機能がある。
船内モードと呼ばれる機能だ。割り当てられているキーを押す事によって自分の宇宙船の中に視点が変わり、操作対象が宇宙船からアバターになる。
もちろん、そのアバター操作の時も一人称と三人称を切り替えられる。三人称にすれば、自身が作ったアバターを見ながら船内を動き回れるという訳だ。
で、このアバターの役割なんだけど一つがこの船内モードの時。他には惑星や宇宙ステーション、スペースコロニーに入った際、宇宙船から降りるとアバター操作に切り替わる。
ゲームの設定上、何も設定しないと宇宙服を着ている状態になるがこれは非表示にできるし、別の衣装に変える事も出来る。
アバター衣装もガチャが殆どだが、その豊富さが凄い。
性別の男女選択できるが、やはりSFとはいえMMORPGと同じで女性の方のアバター衣装の方が種類が非常に豊富である。男アバター……不憫である。
ま、僕は女性アバターを使ってたんだけどね。ネカマじゃないよ。というか普通に女性アバター選ぶ人多いしね。操作するならやっぱり可愛い子というのは共通認識のようだ。
「……」
それで、アバター作成はちょっと本気でやったんだよね。どのくらいかかったか覚えてないが、自分でも満足の行く銀髪碧眼の黒ロリ衣装を纏ったロリキャラが完成した。
正確には銀髪碧眼のロリキャラだ。黒ロリの衣装は、課金してガチャ回して揃えてやったぞ。あ、ゴスロリとは違うからそこは間違いないように。
ゴスロリも良いけどね。
「うーん。資材集めつつ宇宙を満喫していたよね。時々自分のアバターを眺めたりしていた」
そこ、変な目で見ない。
自分で作った最高傑作のアバターを眺めて何が悪いのだ。
「それからの事は覚えてないな……」
でも待てよ。
銀髪碧眼ロリ? そこではっとなり、自分の髪の毛を再び確認する。うん、銀髪だね……瞳の色は分からないけど、目線が何かいつもより結構低いような気もする。
「……まさかね?」
流石にこれはあり得ない気がするのだが……何だか妙に引っかかる。
「だぁぁ! 鏡だ、鏡プリーズ!!」
そんなの叫んだ所で、鏡が出るはずもなく……ん?
「へ?」
何処から出てきたか分からない、金属製? のアームが数本現れ、僕の目の前に縦長の何かが置かれる。
「……鏡じゃん」
それは、全身を見る事が出来る、服屋さんとかに置かれている姿見だった。
「僕の言葉に反応した?」
ガシャンガシャン。
僕が呟くと、アームたちがその通りと言ってるかのように音を立てながら腕を動かす。割とおかしな光景ではあるけど、そこまで驚く事はなかった。
「アームさんありがとう」
ガシャン!
気にするなと言ってるように見える。取り合えず、折角アームさんが持ってきてくれたので、その姿見の前に僕は立つ。
「Oh...」
そこに映るのは、銀色の髪を腰まで伸ばした碧眼の……何処かで見覚えのあるロリ少女だった。
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