第14話9人の巨人

その悪魔はストロングマンの全滅を目的に開発された。


ストロングマン達に敗れた後地球を分析し、生物や機械に寄生することでさらなる力を得た。


名をデッドストロング、6体のダークストロングマンを融合することで生み出された最凶最悪の巨人だ。


「子絵ちゃん。今の私達ならこいつに勝てる………よね?」


「勝てるとかじゃない。勝たなきゃならないんだ」


咆哮を上げながら〈ジライヤ〉の2人を視認すると、猫座になった状態で桜に向かって襲いかかる。

大は〈新・バルウル〉で光線を撃ち放つが、簡単に腕で弾かれ、さらに生えた4本の腕がチョウカイを捕らえられた。


「皆国を離せぇー!!」


仲間のピンチに叫びを上げながらハサミ部分をスクリュー回転させ、敵に突っ込んで行く。

左腹に命中するが、あまりの弾力感に大きく吹き飛ばされる。


「グワー!?」


「ストロングマンを倒すのは………私だ!」


口を大きく開き光線を放とうとしたその時、後ろから光弾をくらい後ろを振り返る。

そこにはブルージョー・スワンとドリームオブブレイカーだったストロングマンが降りたっていた。


その姿はぐちゃぐちゃとした真獣態とは違い加護によって統一感のある姿でストロングマンへと進化を遂げた。


違う点としては眼が青く、ブルージョーを彷彿とさせた。


「ドリームオブブレイカー、お前は正義の巨人になった。私を裏切った以上ここで死んでもらう。このストロングマンを仕留めてからなぁ!!」


興奮気味なイゲルド人は力強く桜の両腕と両足を引っ張り、引きちぎろうとする。


「ウ、ウァァァ!?」


あまりの強靭な力に悲痛な悲鳴を上げ、抵抗できず眼が点滅し始める。


この危機に3人は駆け出すがデッドストロングから生み出された真獣が現れ、ミサイルやバルカン、火炎放射で妨げられる。


「邪魔するなぁー!」


それでも仲間のために大はバックパックで一気に加速し、分身を形成すると同時に真獣達へミサイルを連射する。

その時だった。


「ボルケーノエンド!」


「ミサイル、発射!」


「バースト光線」


大牙、元斗、キズナが到着し、それぞれ遠距離攻撃をデッドストロングに向けて仕掛ける。

蓄積するダメージから思わず手を離されると、チョウカイは痛みに耐えながら自分の油断を悔やみつつ上空へ移動し距離を取る。

3人の戦力が追加され、さらに真獣を生み出すイゲルド人。


「倒せ! 私の前からストロングマンを消すのだ!」


黒く染まった姿の真獣達は主人の命令に咆哮を上げ、正義の巨人達に襲いかかる。

白い翼を羽ばたかせ上空へ移動するブルージョーはビームライフルを構え直し、デッドストロングに向かって光線を放つ。

それに対して真獣達はバリアを展開し、主人を守った。


その隙を着いたイフリートとキズナが高く飛び上がり、自身のエネルギーを拳に流し込みデッドストロングに唸らせる。

だが弾力性の高さから大きく吹き飛ばされ、追撃に悪の巨人から光線をくらう。

ビルに激突し倒壊させる2人の姿に、避難所の市民は真獣の脅威に絶句した。


一方その頃〈ジライヤ〉では隊員全員が出撃準備を行っていた。


弾薬、ミサイル、光線用のエネルギーなどの武器、戦闘機やロボット達のバッテリーが補給される。


『現在デッドストロングはストロングマン4人、機体3機と交戦中です。真獣達を完全消滅するべく開発された特攻性のミサイルと同じく光線エネルギーを搭載してもらいました。数に限りがあるので必ず命中させること。良いですね』


隊長の命令に全員『はい!』と大声で返事を返し、敬礼する。

そしてそれぞれの機体に乗り込み、Aブロックに向かった。


数分後現場に到着した彼らは6人のストロングマンに変身、パートナー達も攻撃態勢に入る。


「ようやく全員揃ったな。ストロングマン達よ」


「イゲルド人。お前は過去に霧神さんを人質にした。その借りはキッチリと返させてもらう」


英二はかつてイゲルド人にパートナーである十気を人質にされ、大苦戦を強いられた。


「お前達を全滅させ、私は革命エボリューションを起こす。悪に染まった宇宙ギャラクシーを創造するために!」


「そんなことは絶対にさせない! 行くぞみんな!」


欲望に満ちたデッドストロングの発言を否定するキズナに、ストロングマン達は一斉に賛成の言葉を放った。


「キズナ、また一緒に戦えることを誇らしく思うよ」


戦友に声を掛けるクロス。

10年以上前、彼女はこの星から旅立った。


嬉しさを爆発させたかった。


だが戦いに集中しなければならない現状、自分の想いを押さえ込んだ。


「クロス、君も成長したな」


うじゃうじゃと生み出される真獣達に対し、戦闘を開始する正義の巨人の9人。

一方でブルージョーは彼らを支援するべく、真獣達をビームサーベルで両断していく。

すると電話が掛かり、鼻血を垂らしフラフラとしながら丈がデバイスを手にする。


「もしもし………」


『岩歯だ。真獣を無闇に攻撃するな。デッドストロングの肉片が飛び散っちまう。でも安心しろ。俺達には特攻性の武器がある。数に限りはあるが当たればあの悪魔も死滅する。だからお前も〈ジライヤ〉に戻って武器を調達して来い』


「分かった………岩歯さん………すぐに戻って来るよ」


歯切れの悪い彼の声に違和感を感じ、雷は『おい、大丈夫か?』と声を掛ける。

しかし通話が突然切れ、ブルージョーが〈ジライヤ〉本部に向かうのが〈アンナイ〉の窓越しに見えた。


『雷さんの言う通りに武器を取りに行くぞ。丈、ここまで良く頑張っ………』


「ブルージョー、呪いなのかな? 僕のために犠牲になった人達の怨念なのかな? 聞こえるんだ。頭が割れるぐらいの激痛と一緒に。死んでしまえとか、お前せいだとか、アハ、アハハ」


ノージャスティスとの戦いの時点で疲労がピークを迎えた丈はあまりの頭痛に表情を歪ませながら幻聴に苛まれ、狂った様に笑い始める。


(これ以上俺に乗っていたら丈が危ない。何とかして降ろさないといけないな)


そう思ったブルージョーは〈ジライヤ〉本部に到着後、膝を着きながらコックピットを開く。


『丈を医療室に頼むー!』


声を聞いてメカニック担当3人が駆けつけ、精神的に追い詰められた彼に肩を貸し、医務室まで歩き出すのだった。

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