第10話別次元の世界

今回の任務は時空が歪んだと思われる現場の調査だ。


向かったのはストロングマンイフリートこと大牙、〈新・ガンマ3号〉のパイロットである元斗、ブルージョーの操縦者丈の3人。

イゲルド人の仕業なのかそれとも別宇宙人なのかは不明、警戒して進む。


「時空が歪むと言うのは一体どういう現象なんですか?」


大牙の質問に元斗が説明に入る。


「パラレルワールドと言う言葉を聞いたことはあるでしょう。もしもの世界、それが今繋がろうとしているんです」


パラレルワールド。

選択によって分岐する世界。

そもそも内容が違う世界。

別次元と言えば分かりやすいだろうか。

それを閉じなければ怪獣や宇宙人が侵入し他の世界に多大な影響を与えてしまう。


「じゃあ早く閉じないと」


丈の焦る気持ちとは対象的になんとワームホールが出現、彼らを吸い込んで行く。


「操縦が効かない!?」


「僕もだ!?」


メーターが狂い始め、コントロールが効かず完全に飲み込まれる。


「「「うわぁーーー!?」」」


別世界に飛ばされようとしている恐怖を感じながら、3人は為す術もなくワームホールに誘導されるのだった。



夜。

ここはとある一戸家にある子ども部屋。

そこには小学生ほどの少年がベッドで寝そべりタブレットでウキウキしながらヘッドホンを付け動画を観ていた。


その動画は過去に放映されていたロボットバトルアニメ、〈マシンギルド〉の1週間限定動画だ。


父親の影響でロボットアニメを観ることが当たり前になった彼は寝る前に観る動画を楽しみにしていた。


すると何やら激突音の後地震の様な強い揺れが発生、慌ててタブレットをスリープモードにしテーブルで身を守る。

棚の物が落ちて行き、恐怖を呼び起こした。


明日あす大丈夫!?」


母が駆けつけ安心した明日と呼ばれた彼は息を荒くし、ダラダラと汗をかき始める。


「良かった。お母さん生きてる」


「それよりあなたとお兄ちゃんが無事で良かった。お父さーん明日は無事よー」


夫に息子の無事を報告すると「分かったー」と低い声で返事が返ってきた。


(なんだったんだろう。あれって地震だったのかな?)


怖がりながらも興味本意でカーテンを開けてみると、そこには戦闘機と巨大なロボットが公園に不時着している。

とんでもない物を見てしまった明日は急いで部屋を飛び出し、階段を下りて行く。


「明日どうしたの!?」


母の静止を振り切り家を出ると、パジャマ姿で靴を履き玄関を出る。


アスファルトの道を駆け公園に向かうと、そこには確かに2機の姿があった。


「本物だ。本物のブルージョーと新・ガンマ3号だ」


興奮が収まらず近づいていく。

すると両方共ハッチが開きパイロットであろう3人が出てきた。


「偉い目にあいましたね。これからどうします?」


「とにかくこの世界から脱出して時空を閉じないといけません」


戦闘機から出てきた大牙と元斗が会話をしている時、丈が明日を視界に捉える。


「そこの君ー」


少年は彼に気づかれたことに驚きながらも「はい!」とビクつきながら応える。


「ここの出身なら教えてくれ。僕達は別の世界からやって来た。怪獣とか宇宙人がこの国を襲ってはいないかい」


これは賭けだった。


もし警察に呼ばれた場合捕まることも余儀なくされる。

だが自分達の戦いがこの世界でアニメや特撮作品として放映されていれば、そう心の中で祈りつつ返答を待つ。


「丈………だよね。ストロングマンに出て来る丈、それに大牙に元斗、本物に会えるなんて」


やはり、この世界は自分達が何らかの作品に登場した世界。

イゲルド人などの宇宙人が地球侵略をしていない世界。


「頼む。質問に答えてくれないかな?」


丈の真剣な表情に少年は動揺で「ご、ごめん」と返事を返す。


「ここには怪獣なんていないよ。それより人に見つかったら大変なことになる! 早くここから離れて!」


「教えてくれてありがとう。向井さん、鈍木さん、とりあえずここから離れよう。警察に見つかったら大変だ」


明日の助言に彼は2人に呼びかけ、この場を離れるべくコックピットに乗り込む。


「少年! ブースターを起動する! この場から撤退してくれ!」


「分かった!」


3人が上昇していき、空へ飛び立つ。

その時だった。


「未確認兵器を視界に入れた。攻撃を開始する」


『了解、確実に仕留めろ』


上層部から報告を受け自衛隊の戦闘機が4機到着、ミサイルを一斉に発射する。


いち早く気づいた丈はバリアを展開、攻撃を防ぐ。


「未確認兵器はバリアを展開。攻撃を続行しますか?」


『攻撃を続けろ。繰り返す、攻撃を続けろ』


戦闘機のパイロットは司令室の指示に従い、ミサイルの発射準備に入る。


次の瞬間、ピンクに輝く光の刃がすべての戦闘機を両断し、爆散させた。


「なんだ? 何が起きた?」


司令室がどよめく中、モニターに映ったのは黒き死神ノージャスティスだった。


『会いたかったぞ。俺のコピー元!!』


さらに強化された黒き機体はメインカメラにブルージョー・スワンを捉え、次元の裂け目を開く。


「こいつぅ。次元まで越えられるのか」


『丈君、私は戦います。別世界を支配されるなんてことがあってはいけませんからね』


デバイスから大牙の勇気ある決断を聞き、丈も戦う決心をする。


「うん! 行こう向井さん!」


ブルージョー・スワンのバックパックからビームライフルを取り出し、シールドで攻撃を防ぎながら照準をノージャスティスに向ける。

そして大牙は正義の巨人、イフリートに変身した。


「ハァーアー」


両拳に炎を宿し、戦闘態勢に入る。

その姿を見た明日は「頑張れ! ストロングマン! 丈!」と手を振りながら応援する。


「ストロングマン、そんなに好きですか?」


女性の声に右を振り返ると、そこにはビフォーグⅡがブランコに座り冷たい目で視認していた。


「ビフォーグⅡ!? どうして!?」


「フフ、私の事もお見通しですか。まあいいでしょう。どうせあなたもご主人様の部下を作り出すための素材になっていただくんですから」


ブランコから立ち上がり彼にゆっくりと近づいて行く。


「いやだー!! 助けてー!!」


「あなたに救いなどありません。あったとしても排除します」


逃げようとした明日に次元の裂け目を使用しようとする。


「待てぇ!」


掛け声と共に放てる光弾。

攻撃をバリアで防ぎ、電灯の光に照らされる少女を確認する。


「君は、ストロングマンキズナ!」


「うん。私の事をなんで知ってるか分からないけど、あなたは必ず守ってみせる」


ストロングマンキズナ。

彼女はかつて7人のストロングマンを支えた正義の巨人。

次元を越え、この世界に来た理由。

それはイゲルド人の件とは別の物だった。




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