第9話守るべき者
黒き機体ノージャスティス。
白き機体ブルージョー・スワン。
その戦いはまるで白鳥の湖の様に美しく、それでいて激しい物だ。
次元の裂け目から放たれる光線を丈はバリアを展開し防ぎ切る。
シールドからミサイルを連射するが、光の刃ですべて撃ち落とされた。
互角に見えるが、ノージャスティスには焦りがあった。
それはブルージョー・スワンから放出されている粒子だ。
微細のため肉眼では特定できないが、ロボットのメインカメラならば捉えられる。
(あれはおそらくストロングマンの加護が俺を倒すために性能を底上げしている状態。あの大量の粒子はすべて加護。これ以上ステータスを増幅させれば確実に倒される。ならばコピーはコピーらしく、同じ能力を使わせて頂こう)
そもそもストロングマンはなぜブルージョーに加護を与えたのか。
今となっては不明なことだが、それが今ここで悪に利用されようとしていた。
ストロングマンの加護を放出させ、こちらも能力をアップする。
『お前の正義の圧力。そんな物、いつでも超えてやろう!』
それは想像以上の性能差をつけ一気に加速、光の刃でシールドを両断する。
「僕はお前なんかに負けない」
上空へ飛び立ち丈はビームライフルの銃口を敵に向ける。
すると加護がバックパックに白き翼を授け、悪魔を葬る天使の如く美しき姿を見せる。
『見掛け倒しが! 消し飛べ!』
高速で移動し、ノージャスティスはブルージョー・スワンの背後を取る。
そして巨大で邪悪なエネルギー弾を形成、上から流星の様に落とさんとする。
次の瞬間。
なんと翼の羽が一斉に飛び散り、鋭く彼に襲いかかった。
装甲が貫かれ傷から火花が散る中、後ろを振り返る丈に対し次元の裂け目を大量に開く。
「ブルージョー、力を貸してくれ」
『死人に口などない! 聞きたければあの世に落ちろぉ!』
そんな理論的なことではない。
彼にとって大親友だったロボット、ブルージョーは心の中に確かに存在する。
ビームライフルの銃口をノージャスティスに向ける。
するとストロングマンの加護が悪魔を滅殺するべく力を与えた。
「ターゲット、ロックオン」
トリガーを離し、放たれる太い光線。
翼がブルージョー・スワンを支えるが、あまりの威力でパーツにヒビが入る。
(クッ、避けきれない)
性能が底上げされているとは言え次元の裂け目を開くことに集中していため、すぐに回避することができない。
ならばと光線を何発も撃ち放つが、圧倒的な力の前に打ち消されていく。
(撃ち切った。今だ)
伊達にブルージョーのコピーはやっていない。
光線に当たる直前、なんとテレポートを使用し回避した。
ピンチをチャンスに変えるとはこの事だ。
下を取ったノージャスティスはすぐ様次元の裂け目を開き、勝利を確信した。
(これで最後だ)
勝った。
そう思ったその時。
「はぁー!!」
そこに現れたのはストロングマンであるダゲキだった。
こちらもボウソウと同じく黒いボディに黄色きラインが入っており、鋭い牙と長い尻尾が生えている。
さらに筋肉操作が可能で、戦闘能力を向上することができるのだ。
強化された肉体から繰り出されるタックルをくらいバックパックが大破、地面に叩きつけられるがすぐ様立ち上がる。
「丈君大丈夫?」
「僕は大丈夫。でもブルージョーが………」
機体が加護に耐えられず悲鳴を上げているかの如くギシギシと金属音を鳴らす。
「あとは私がやる。丈君これだけは言っておくけど、先に死なないで」
足全体の筋肉を強化し、ノージャスティスに向かって走り出す。
「死なないさ。陣さんと付き合えるその日まで!」
聞こえるようにカッコつけながら叫び〈ジライヤ〉本部へ戻ると、高美はなんだか気持ちにウソをついているようで虚しくなった。
決して子どもとして見ているわけではない。
彼と付き合った場合、先に亡くなるのは自分なのだと。
丈の悲しむ姿が目に浮かぶ。
それを理解しているからこそ、付き合うことはできない。
『この程度でぇ、引き下がれる物かぁ!』
両手から光の刃を展開し、ノージャスティスはダゲキに向かって走り出す。
攻撃を迎え撃つべく口を大きく開け、エネルギーを溜め込む。
「パワードキャノン………7連打!」
次々と放たれる光弾。
だが死神と呼ばれた黒き機体は最後の足掻きと言わんばかりに瞬間移動を使用する。
そして上から刃で両断するべく急降下していく。
「往生際が……」
上に顔を向け、最後に残していたエネルギー弾を撃ち放つ。
「悪い!」
放った光弾はノージャスティスの両足に命中、吹き飛ばされる彼は次元の裂け目を開きその場から逃走した。
「陣さん、援護感謝します」
敬礼する真に「いえいえ」高美と首を横に振る。
「私はただ隊長の指示を聞いて行動しただけよ。それより黒いロボットに逃げられたわ。また現れたら倒せる自信がない」
有利に戦えたのは丈がダメージを与えてくれたおかげだ。
まだ相手は倒せていない、必ず復活してくるだろう。
「だとしてもやるしかない。イゲルド人が生きているかぎり真獣は必ず現れる。戦うんだ。ストロングマンとして」
柴の言葉に納得する2人は首を縦に振り、共に高く飛び上がる。
そして〈ジライヤ〉本部に帰還するのだった。
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